西条奈加の『婿どの相逢席』です。
小さな楊枝屋の四男坊・鈴之助は、大店の仕出し屋『逢見屋』
の跡取り娘・お千瀬と恋仲になり、晴れて婿入り。
だが、祝言の翌日、大女将から思いもしない話を聞かされる。
誰もが羨む逆玉婚。・・・のはずだったが・・・。
「鈴之助、今日からお前も、立場上は逢見屋の若主人です。
ですが、それはあくまで建前のみ、何事も、最初が肝心です
からね。 婿どのにも、しかと伝えておきます。」
鈴之助の物問いたげな表情に応えてくれたのは、上座にいる
義母のお寿佐出あった。
「この逢見屋は代々、女が家を継ぎ、女将として店を差配して
きました。 つまり、ここにいる大女将と、女将の私、そして
若女将のお千瀬が、いわばこの家の主人です。」
逢見屋の歴史をたっぷりと説かれ「二代と三代は、商いの才に
恵れなかった上に道楽者でした。 そこへいくと女は、酒癖も
博打も女遊びも無縁です。男は得てして、そういうものです。」
「では、この逢見屋で婿の役目は?」
「まずは、子を生すこと。 玉のような女の子を望んでいます
よ!」
かくして、鈴之助は月に二分の小使をもらい、板場や座敷に出る
ことも禁止され、一日中部屋でブラブラしてることになる。
鈴之助は、与えられた環境を受け入れ、商いの切り盛りに思い
悩むお千瀬を、陰で支え続ける。
”婿どの”の秘めた矜持と揺るぎない家族愛は、「逢見屋」に
奇跡を呼び起こす・・・・.
なかなか肩のこらない、面白い本です。
皆さんも試しに読んでください。
おススメです。