生誕100年を経て、ここまでブームが再燃した日本の作曲家はかつてない。伊福部昭(1914~2006)。音楽を手がけた映画「ゴジラ」公開から60年という節目も重なり、記念コンサートに続き、伝記やCD、ムックなどが相次いで世に出ている。伊福部の音楽がいま、人々の心を改めて強くとらえる理由とは。
「ドシラ、ドシラ」。「ゴジラ」のこのテーマは実は、伊福部音楽の土俗性を、もっとも鮮明かつシンプルに示すものだ。二つの和音を執拗(しつよう)に繰り返し、切り詰められた数個の音を反復。聴く者を徐々に原初的な感覚へと陥らせつつ、怒濤(どとう)のクライマックスと陶酔を引き寄せる。
北海道?釧路生まれ。音楽は独学。21歳の年に書いた「日本狂詩曲」が、のちの師となるロシアの大作曲家チェレプニンの名を冠したコンクールで第1席に。北海道帝大農学部を経て林務官になり、森の中で独り暮らす。「真にすぐれた芸術は常に平易なもの」。そんな悟りを、自然と共生するなかで得た。