後編


自分を変えることを楽しむ



では、子供の行動を望ましいものに変革するように促すにはどうすればいいのか。


1、関係性の構築

相手が自分の言うことを聞いてみようかな?と思う関係性の構築にあなたは気を配っていますか?関係性が希薄だったり、軽々しいものだったりすると、言うことを聞かせたい場面で

という反応をされてしまいます。これは当たり前の反応です。良いも悪いも結局は発信者の価値観に基づいている判断、つまり感想です。あなたの感想に対して価値を決めるのは受信者です。
子供が好ましいことをしたらきちんと毎回肯定し、嬉しい感情を伝える。子供が好ましくないことをしたら、しかるのではなく、自分はその行動は、こういう理由で好ましくないと考えているということを毎回伝える。これをサボらずにやり続けること、つまり感想を伝え続けることは関係性の構築に非常に大切だと思います。また、相手に対して、自分は相手のことを非常に大事に思っていると折に触れて伝えるということも大切です。人は自分を大切に考えている人の言うことを聞くからです。



2、尊敬される部分を見せられているか
尊敬するしないは相手が決めることです。ただ尊敬されないような振る舞いを控えるであったり、ここの部分を見習ってほしいなという部分を折に触れて相手に見せるという行動はできるはずです。これ、やってますか?後、パートナーの文句を子供に聞かせてませんか?子供はすぐに影響を受けます。父親の愚痴を子供に毎日聞かせれば、子供は父親を少なくとも尊敬はしなくなります。逆もまたしかりです。人は尊敬できる人の言うことには耳を傾けるものです。

3、普段から承認を与えているか
他人に行動の変革を促すには助言が必要なのは間違いありません。苦言を呈する必要もあるでしょう。そのためには普段から子供を誉めておくことが大切!という勘違いが蔓延しています。誉めることも大切ですが、勘違いをしてはいけない点は、「誉めることも苦言を呈することも」両方とも特別なコミュニケーションだということです。ここを忘れてはいけません。
特別というのが厄介で、普段からのコミュケーションの影響を多分に受けるコミュケーションだということです。ここに意識がない方が多いです。これは教師や講師でも同じようです。

普段ろくにコミュニケーションを取らない上司を想像してください。コミュニケーションをとってきたとしても馬鹿話か自慢話か説教かみたいな上司です。あなたが大きなミスをしてその上司が「ばか野郎!なにやってんだ!」と叱りつけてきたとき、あなたはどんな気持ちになりますか?自分が悪いことをしたという気持ちの他に「こっちも色々あるんだよ。こんな時だけ鬼の首でもとったように出てきやがって」と素直に上司の指導を受け入れる気になりますか?
旦那さん言われたのなら100%「あなたはどうなのよ」と言い返しませんか?

言ってくれてありがたいなどという感謝の気持ちを持つことができるとしたら、あなたは稀有な大人物です。歴史に名を残せるんじゃないでしょうか。

逆の場面ではどうですか?あなたが大きな業績を上げたとしましょう。その時に例の上司が「よくやった!君は日頃から努力してたからな!その成果が出たんだろう。」と誉めてきたとします。
誉めてきているので、悪い気はしないかも知れませんが「こんなに誉めてきて、何か魂胆があるんじゃないか?」とか、「こんな時だけしゃしゃり出てきやがって、普段、ろくにコミュニケーションも取らないくせに」とか思いませんか?
そうです。普段のコミュニケーションが成立していないと誉めようが叱ろうが、効果が薄くなってしまうんです。とくに叱った時はほとんど効果はありません。では普段のコミュニケーションとは何か。

あなたの存在に注目をしていますよ」というメッセージを送ることです。
「お、今日は元気が無さそうだな。」
「お、昨日は30分しか机に向かってなかったな」
といった、ありのまま、あなたが見たことを伝える。これが承認です。
ここで、これ以上のメッセージを送ってはいけません。送ったメッセージに相手が反応してきたら「そうか。わかったよ。」とだけ返事をする。
よくやってしまうのは、見た事実にあなたの感想や質問を加えてしまうことです。
「今日な元気がないな。どうしたんだ?
「昨日な30分しか机に向かってなかったな。ダメじゃないか。
これは承認ではなく、要求や助言になってしまいます。質問というのは相手には回答を要求する行為ですよね。そうではなくて、見たままを伝えるコミュニケーションに普段は徹する。
そして必要なときに誉める、苦言を呈するコミュニケーションをする。こうすることで、言われた相手は普段から自分をよく見てくれている人が誉めてくれている、自分のためを思ってアドバイスをしてくれていると感じるのです。
宿題を全然やらない生徒に対して、私はこの手法をよく使います。2~3ヶ月もすれば宿題をやってくるようになります。

あるあるなのが「あなたのためを思って」と自分で言ってしまっている人がいます。それ決めるのは言われた相手なのを忘れています。ということは当然、相手に聞く耳を持ってもらうように自分の行動を変える意識はないはずです。
「あなたのためを思って」と自分で言ってしまう人は根本的に「だから私の言うことを聞きなさい」という自分が正しいと信じる価値観に相手を合わさせようとしているにすぎません。

子供は幼く、基本的に親の期待に応えたいとか親に誉められたいと思っているのが普通なので、しばらくは言うことをきいてくれるかもしれません。ただし、いつか終わりはきます。

子供であっても他人を自分の価値観に合わさせること自体が不自然なんです。子供自身が社会的に望ましい考えを持つように保護者自身が自分の行動を変えて子供を導かなければ、いつかは手痛いフィードバックがなされると私は思います。