グアルディオラの授業 その(1)

のつづき


現代サッカーでは最終ラインにディフェンダーを4人配置する4バックが主流ですが、このグアルディオラの授業では1988-96年にヨハン・クライフが監督としてFCバルセロナで採用した3-4-3システムが取り上げられました。

(実技授業をするグアルディオラ)

スペインサッカー 監督と練習法

捕捉
今回の3-4-3システムは全てのチームに適用が可能ではなく、リーグ戦で上位を狙える戦力を有するチーム、すなわち各選手が技術、身体能力で相手に劣らず1対1の局面でも抜かれないことが前提となっています。授業での対戦相手のシステムは4-4-2。


グアルディオラの解説
「3-4-3システムはピッチに選手がバランス良く配置しているので特にボールポゼッションに有利なシステムなんだ。ボールを支配することができれば守備の時間も減り、より攻撃的なサッカーを実践できる。」(下記の図はキーパーも含めた1-3-4-3)


スペインサッカー 監督と練習法

「また一般的に3バックというと守備が弱いという印象を与えるが、このシステムは攻守の切り替えに理想的で中盤の選手が状況に応じてポジションを変えることで、各状況で起こりうるシステムの穴を埋めることができる。敵のサイド攻撃でサイドバックが引き出された場合は、中盤の選手が最終ラインに加わりバランスを保つ」


スペインサッカー 監督と練習法

捕捉
4-3-3、4-4-2という大きなシステムの括りの後に状況毎の選手のポジションチェンジを事前に決めておくことがよくありますが、今回の3-4-3もその例に漏れず攻守に渡って選手のライン間の移動が多いものとなっています。

グアルディオラの解説
「一方で攻撃では当時の大半の相手は4-4-2を採用していたが、バルセロナは3-4-3をベースにサイドを大きく使った攻撃を軸としていた。ではどうやってサイドにボールを回していたかというと、大きく分けて2通りの戦法があった。」

「まず中盤の4選手の内、1選手がフォワードの位置まで上がり残りの3選手が中央で数的有利な状況を作る。相手は4-4-2のボックス(ひし形)にしろ横一線のラインにしろ中央には2選手しかいないからこちらは一人多い状況となる。前線は中央で2対2の状況になっているので、これだけで相手にとってはカバーリングがない状態で不安定だ。ここで重要なのがウイングがよく開くこと。相手の両サイドバックがセンターバックを支援するために閉じればウイングへのパスコースが開くし、」


スペインサッカー 監督と練習法

「サイドバックがウイングのマークの為に開けば相手のセンターバックとサイドバックの間のスペースにパスを通すことができる。そのパスは直接出すこともあるだろうし、一度フォワードに当ててポストプレーから展開することも可能だろう」


スペインサッカー 監督と練習法

「またこちらの中盤での数的有利を打ち消すために相手のサイドハーフが中央に寄ってくることがあるが、この場合はサイドバックが上がりパスを受け、ウイングと共に相手のサイドバックに対して2対1を作れば良いんだ。サイドバックが上がった後には中盤の1選手がカバーに入ることも忘れてはいけない。」


スペインサッカー 監督と練習法

グアルディオラの解説
「このシステムを円滑に運用するには相手の2トップとサイドハーフによるプレスを突破する必要があり、守備陣とキーパー、それをサポートする中盤の選手には的確な動きと正確なパスワークが求められる。また中盤と前線の選手へのパスコースがない場合は中盤の選手は最低限、ボール保持者から離れるなどしボールを持っているディフェンダーがドリブルで上がれるスペースを作らなければいけません。この一連のプレーができれば相手はこちらのアプローチに対して後手に回らざるおえなくなります。」


<総括>
この授業では当時のFCバルセロナの基本コンセプトが簡潔に紹介されただけなので、いろいろな状況に対してどのようにアプローチを変えるかという点までは網羅されていません。そして実戦の各プレーでは上記の行程を実践するのは困難な場面が多いわけですが、FCバルセロナの選手が高度な技術を使い、しかしシンプルにその難局を解決していくのを見るのがファンにとっての醍醐味ではないでしょうか。

今回の授業内容はクライフ監督の時代のコンセプトですが、今のバルセロナにも通じる部分は多くこのテキストが今後のFCバルセロナ観戦をより引き立てる手助けになれば幸いです。

<この項終わり>


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