話したいこと②

ごめん。　山ちゃん、河野さん、師匠・・・

やっぱり、話せません。

追悼式典　遺族代表　　松浦　潔さんの言葉

連休明けの１月１７日未明５時４６分、天と地をひっくり返したような大きな揺れに、長男「誠」１６歳とホームステイをしていたオーストラリア人の「スコット」２４歳が我が家で亡くなってから、１５年が経ちました。
３階建ての２階の部屋で寝ていた二人は建物の重みに押しつぶされ、スコットは即死し、
誠はうつぶせに寝ていたベットで３０分位は助けてくれと言うようにベットの横板をとんとん、とんとん、叩いていました。
何度も何度も助けだそうと、両足を引っ張りましたが、瓦礫の重さに動かすこともできず、冷たくなっていく我が子をどうする事も出来ませんでした。
「ごめんな。助けてやれなかったな。痛かったろう、苦しかったやろうな。ほんまにごめん」

これが現実なのか、夢なのか、時間が止まりました。そして身体中の涙を全部流すように、毎日涙し、どこへももって行きようのない怒りに、まるで胃液が身体を溶かしていくような、苦しい毎日が続きました。

３年位経ったある日、同じく長男を亡くした二人のお父さんと知り合い、自分だけがつらい想いで生きているのではないと、知らされました。

その日から、あの時６０００人あまりがの人が亡くなり、それぞれの家族に震災のつらさがあるのだということを、想えるようになりました。
亡くなられた皆様に会えなくなって１５年。
あの笑顔、あの声、決して忘れることはできません。
　
「会いたい、もう一度会いたい、会いたい」皆様へのこの想いは、変わることはありません。そんな想いの私たちにも、まるで皆様が引き合わせてくれているかのように、新しい出会いがたくさん生まれました。

生き残った私たちに何ができるのか、共に助け合い、語り合い、涙して、過ごしてきた１５年でした。生き残った私たちも、いずれ皆様のところへ参ります。

その時に、あの震災の日から命の限り一生懸命生きてきたよと、胸を張って言えるように、一日一日を大切に生きていくことをお誓い申し上げます。

亡くなられた皆様のご冥福を心よりお祈りいたします。