都並はピョンヤンのホテルで在日の人と喧嘩になりかけた(笑)

ここからは、著者 都並敏史「世界を削った男たち」に書いてある事を載せます。

「スタンドの前のほうに陣取ったカラフルなセーターやジャンバーを着た十人ほどのグループだけは、やけに賑やかだった。あとで聞いたところでは、この日のため神戸から応援にやってきた在日の一団だという。野次はちょっとキツかったが、8万人の不気味な沈黙よりは、こっちの方がずっといい。

オレたちは守り切ってついに0-0のまま試合終了。オレたちにとってこの引き分けは、勝ちにも等しい値打ちがあった。・・・ホテルに帰ってからのビールの味も格別だ。みんながグイグイやるので缶ビールがどんどんカラになっていく。

買い出し担当はオレ。木村和司さんから「都並、ビール買って来てくれ」と言われてホテル一階のバーに日本のビールを買いに走った。自分でももっと飲みたかったので、おっくではなかった。

日本のビールを注文しながら、チマチョゴリ姿のキレイなお嬢さんにチラチラ目をやっていると、いきなり背後で「おい、坊主。ちょっと座れや!」とドスのきいた声がする。
振り返ると中年の男が4人いて、その中の一人が酔っ払った顔で、ここに座れと手招きしているのでないか。口ぶりからしてオレを知っているようだ。
無視するとしつこそうなので、「何ですか?」とさり気なく言った。しかし男は座れ、座れと言って聞かない。有無を言わせぬ感じに押されてオレは男の隣に腰をおろした。

「何しとるのや?」「いま、お酒買いに来ただけですから。みなさんは応援団ですか?」
「応援団? 何ぬかす、この坊主。俺たちは在日や、在日」「在日?」「そや」

              次回へつづく・・・