ついに最終戦。
事実上の決勝戦。
スタッフウガももちろん全戦全勝。
ここまでは予想通りだったが、成績を確認すると愕然となった。
1、2戦とも得点力の高さを如何なく発揮していたが、驚愕なのは3戦目。
2点換算の女性がハットトリックで6点をたたき出し、結果は13対0。
ワンピは意気消沈。
「引き分けだと得失点差で・・・」
「いや、うちは無失点だが相手は何失点かしてるし・・・」と
慌しく計算を立てていると、アイ総監督が一喝。
「めんどうだから勝てばいいでしょ(-з-)」
「・・・・・・」
「・・・そうだよな、俺たちも全勝だしな!」
「よっしゃ!いくべ」
決戦前に気合を取り戻すことができた。
その証拠に、入場は皆揃って「ホンユー!!ホンユー!!」コール。
意味はさっぱり分からないが一体となり、リラックスして臨めた。
そして試合開始。
前半戦、技術に上回る相手に防戦一方の展開。
だが走りこみでは負けておらず、一人抜かれてもすぐフォローに入る。
だが、一進一退の攻防戦が続くなか、相手は力を発揮しだした。
これまでゴール前まで運んでくる戦法のためなんとかギリギリで抑えていたが、
ふいに中距離からシュートを打たれた。
放たれたボールは、わずかな隙間を縫い、ユキオの手をかすめネットに突き刺さった。
「まだ大丈夫!」
得点を取りに攻撃を仕掛けにかかる。
前のめりになったところを一瞬の隙をつかれる。
ゴール前へのパスに走りこんだ女性が反応、ワンタッチでゴールへプッシュされた。
立て続けての失点。
この一戦を見守るこれまでの相手チームからはあきらめの声。
まだ試合は中盤にもかかわらず、ワンピメンバーに焦りが生じていた。
「早く取り返さないと・・」思いとプレーは連動しない。
効果的なシュートも打てないまま時間が過ぎていく。
そんな中、ただ一人、プレッシャーを感じない男がワンピにはいた。
その小柄な男は、ボールを受けると中央突破を開始。
周りもつられて上がるが、どうみてもパスをする気配がない。
そのまま一人、二人とかわし、キーパーが出てきたところをあざ笑うかのような
冷静さでシュートを放つと、あっさりとゴール。
「こんなもんかな・・」とドヤ顔の小憎たらしい男は、リオだった。
続く数分後、またリオが中央から仕掛ける。
相手も同じ手は二度通じないかのようにリオにプレスをかける。
3人がボールを取ろうとするその刹那、今度はゴール前へラストパス。
いきなり来るとは思わず、ユージは「・・・わっわっ!!!」と慌てふためきながらも、押し込んだ。
「おおーーーーー!」観客の声も沸き立った。
ワンピメンバーは皆分かっていた。
「まだ点を取りに行かなければならない」と。
ひとつになったメンバーは、圧倒的な攻勢にでる。
ついに試合は終盤、残りあとわずか。。。
ワンピはコーナーキックに望みをかける。
キッカーのユージは、後方から走りこむヒサを発見。
パスを出したが、そこは素早いチェックでシュートコースを阻まれる。
ヒサはもう一度、コーナーポジションのユージへ。
「だめか・・・」そう思ったときに、一発に賭けてみた。
角度の無い位置からの左足、、「熊殺し」に。
「いっけーーーーおんどりゃーーーー」
ゴリ押しで放たれたシュートは、ゴール前の密集地帯を抜けた。
会場の視線はボールの行く末に向けられた。
そして、逆サイド上のネットを牙が喰いちぎった。
「わぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」
怒号が会場を呑み込む!!
ユージはすぐさまベンチに駆け寄り、倒れこんだ。
そこに折り重なるように集まるメンバー達!歓喜の渦は最高潮に達した!
どうだ!
見たか!!
これが俺らの底力じゃい!!
前までのワンピとは違うんじゃい!!
「おれたちは強い!!!」
おさまらない盛り上がり。
そんな中、「早く起き上がれって!」というマツ代表の声を耳にした。
「いいじゃんかよ!逆転だぜ!もうちょい喜ばせろよー!」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・ん?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・逆転?」
「・・・・・・・・・・・・・・あっ!」
「スタッフウガの2点目はたしか女性・・・・・・・2点ゴールじゃん!!!!」
そう、得点数で見ると3対2だが、スコアで見るとこの時、3対3。
「しまったーーーー」と立ち上がり、すぐさま試合を再開したが
時すでに遅し、、、試合終了となった
何度も味わう準優勝という立ち位置。
だが、これまでとは違った感触、去年とは違う何かをワンピは感じていた。
他のチームから「すごい感動した試合でした」との言葉をもらった。
「悔しさ」とともに、新たに芽生えた気持ちを次回の大会では心に想い、
さらに高みを求めなければいけない。
新しい気持ち、それは・・・「おれたちは強い」
「成長の証」終