2011/4/25東京地裁立川
支部判事2117号28頁です。
なお、弁護士が行動主体と
ならず、複数の事務員による
電話や郵送でのやり取りに
とどまったという業務の手法が
委任契約の要素の錯誤に該当
するかについては、あくまで
債務不履行の問題が生じる
次元であり、錯誤の有無を
判定すべき依頼時点で、非弁
提携弁護士であった場面などに
限定されると、依頼者の主張を
排斥しました。さて、本件の
弁護士の辞任に、預り金の
収受を許容できる正当性は
あるのでしょうか
「債務整理は多重債務者たる
依頼者の経済的更生を目的とし、
依頼者は専門知識を有せず
専門家である弁護士の助言
指導に依存する所が大きい上、
多重債務に起因して精神的
社会的にも少なからざる問題を
抱えている者も多いから、
債務整理にあたる弁護士は、
債務整理の過程において、
形式的事務的な処理だけでなく、
依頼者に対し、後見的な見地
からの配慮(例えば、依頼者の
経済生活に対する指導監督)も
求められる(かかる配慮も、
弁護士の善管注意義務の
一内容に当たりうる)。」
「委任契約の中途終了で債務
整理が中断すれば、多重債務者の
経済的更生に多大な支障が
生じることや、弁護士職務基本
規程43条に鑑みると、依頼者に
一応債務不履行に該当する
行為があって弁護士が辞任
した場合であっても、債務
不履行の原因程度態様、
弁護士の対応など諸般の事情に
照らして、その債務不履行が
弁護士と依頼者との信頼関係を
破壊するものでなく、辞任が
相当でない特段の事情が
認められるときには、弁護士の
帰責事由による委任契約の
終了という評価を免れない。」
「依頼者が経済的苦境のため
分割金の支払に窮することは
初回相談時から予見可能であり
その対処方法につき法テラス
利用も含めた十分な検討が
されていないこと(弁護士職務
基本規程33条)、電話や郵便
では依頼者との間の意思の
疎通に要領を得ない場合は
後見的な配慮として弁護士
から積極的に面談による
打ち合わせや説明を求め
依頼者とともに善後策を
講じることを検討すべきで
あること(弁護士職務基本
規程43条)等に照らすと、
未だ依頼者にも責められる
点があるとはいえ、その程度は
辞任をやむをえないとする
程度には達していず、かえって
弁護士の辞任は後見的な
配慮が不十分でやや性急な
ものとの評価を免れず、
弁護士の帰責事由による
委任契約の終了という特段の
事情が存在する」
→過払回収報酬などを斟酌し
43万3585円のうち22万9133円の
返金を命じました。
なお名誉棄損に対する慰謝料
請求については、正当な言論の
範囲内として違法性なしと判断
されました。
正直、債務整理をビジネスと
して扱っている事務所群は、
裁判所が棒線のとおり期待する
後見的配慮を依頼時さらには
辞任時(書類がなかなか送って
こなかったり折り返し連絡が
入らない事態は、多重債務者に
珍しい出来事ではない)に
どこまで回しているのだろうかと
思ったりもした。債務整理を受任
する際に弁護士に期待される
覚悟や配慮が明示されており、
マニュアル本などには書いて
いないことなので、ぜひ全国の
弁護士に知ってもらう必要の
高い裁判例と思い紹介しました。
ろぼっと軽ジK