東京地裁2011/3/30自保ジ1851号118頁です。
被告Yは自己の所有する車シーマにZ社を
保険者とする任意保険をかけていましたが、
その任意保険には他車運転危険担保特約が
付されていました
被告Yが金融流れのベンツ(Aから取得、
クレジットB社に所有権留保あり)を運転中、
原告Xに追突し死亡させたためXの遺族が
被告Yのほか、Z社に他車運転危険担保
特約によるYに代わっての保険金の支払を
求めた案件です
http://zidousyahoken.info/2/5/000020.html
他車運転危険担保特約は↑のような
ケースで利用でき、法律専門家でなくても
知っておいて損はない自動車保険の1つです。
しかし、Z社はXの遺族にYが負うべき賠償金を
支払う義務はないはず(これを免責主張と
いいます)と争いました。
他車運転危険担保特約には次の免責条項が
付されていることをその根拠としています
『被保険者(=Y)が、他の自動車(=ベンツ)の
使用について、正当な権利を有する者の
承諾を得ないで、他の自動車を運転して
いるとき』
Yのベンツ使用は、B社の承諾を得ていない
金融流れであり、AにはB社の承諾なしで
ベンツを金融流れに回す権利はないから、
結局、正当な権利者の承諾がないまま
Yはベンツを使用していたというのです。
東京地裁は他車運転危険担保特約の
趣旨に遡り、Z社の免責主張を是認し、
いわばYが無保険で事故を起こしたのと
同じという認定をして、Yにのみ賠償
責任をかしました
<自動車保険は1台1契約を原則と
するので、本来はシーマ以外の車両
運転の際にYが起こした事故を担保する
ものではない。この特約は、社会生活上
臨時に被保険車両以外の車両を運転
しなければならない場合に備えての
例外に位置づけられる。『』の免責条項は
盗難車の使用など明らかに不正な
使用の場合には適用を排除するという
目的などで設けられたもの。金融流れの
場合、Yの占有はB社の承諾を得ず
自動車ローンの担保物である車両を
他の金融の担保とするものなので、
B社との関係では正当化されない。
また、自動車ローン残債務がある以上
B社が所有者名義や使用者名義の
変更に応じないことをYも了知している。>
他車運転危険担保特約をめぐっては
常時使用か否かの免責条項をめぐる
裁判例はいくつかありますが、正当な
権利者の承諾をめぐる裁判例は
珍しいことから紹介しました
ろぼっと軽ジK