捨て印を利用した補充の拘束力 | 福岡若手弁護士のblog

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福岡県弁護士会HP委員会所属の弁護士4名によるBLOG
(ただしうち1名が圧倒的に多いですが、だんだん若手じゃなくなってるし)

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ろぼがその存在を知らなかった

最高裁判例(ネット情報でも

原典までは紹介されていない)を、

備忘のために紹介します。

実際に捨印は経済取引で

現在もなお利用されています。

今回の記事は判タ390号

110頁に主に依拠しています。

 捨て印の慣行の起源は、

江戸時代の町方で作成

されていた人別帳だそうです。

人別帳とは家族構成を記した

住民票のようなもので、当主が

家族構成を記した人別帳の

【左側余白に下部から上部に

かけて登り判型とよばれる

捺印をして】、この捺印によって

記載事項に異動のないことを

証明し、もし異動があれば

その旨を脇書する取り決めが

あったとのことです。

 従って、もともとは文章の

内容の正確性を保証する

意味合いを持っていた捨印が、

習慣として現在まで継承されたと

いうことになります。捨て印が

あることイコール文書の改変を

自由に許す意味は歴史的

由来からもないわけです。

 Yが金銭の貸主、Aが金銭の

借主、XはAの連帯保証人です。

Yから差し出された金銭消費貸借

契約書の遅延損害金欄は空白

でしたが、契約書の欄外にAXの

両方が捨印を押していました。

Yから根抵当権設定を依頼された

司法書士は、空欄に捨印を

利用して遅延損害金年30%と

補充しました。そこで、捨印が

空白箇所の補充権をYに付与

したしるしとみなしうるかが

争われました。Xは補充権を

付与していないと争いました。

 最高裁昭和53年10月6日

金法878号26頁は次のとおり

判示しました。

「金銭消費貸借契約証書に

債務者のいわゆる捨印が

捺印されていても、捨印が

ある限り、債権者において

いかなる条項をも記入できる

ものではなく、その記入を

債権者に委ねたような特段の

事情がない限り、債権者が

これに加入の形式で補充

したからといって、当然に

その補充にかかる条項に

ついて当事者間に合意が

成立したものとみることは

できない。」

 ちなみに、特段の事情として

例えば、契約書作成日には

融資実行日がいまだ正確に

定まらず、準備行為として

金銭消費貸借契約書を作成

していた場合には、日付

以外の部分を記載したものを

作成し、後日、債権者が

バックデイトで記入することは

許容されるのではないかと

示されています。

 私もまだまだ知識不足です

ろぼっと軽ジK