中間利息の控除 | 福岡若手弁護士のblog

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福岡県弁護士会HP委員会所属の弁護士4名によるBLOG
(ただしうち1名が圧倒的に多いですが、だんだん若手じゃなくなってるし)

遅ればせながら、コメントで話題が出たので、ちょっとだけ触れておく。


先日最高裁判決で、中間利息の控除のやり方について、法定利率、つまり年5パーセントで処理することとする判決があった。詳しい説明は、トラックバック先の記事を参照されたい(手抜き?)。


ここでは、中間利息の控除というものがどういうことかを説明することにする。


えー、分かりやすくするために、教室事例での説明となることをお許し願いたい。


55才の交通事故被害者が交通事故で死亡したとする。年収から生活費を控除した金額が10万円とする。


この場合、死亡した場合の逸失利益、つまり、交通事故被害者が事故によって死亡せずに一生健康で働き続けたら当然得られたであろう利益というものも、交通事故の損害賠償の損害算定の対象となる。


まあ、一般に就労可能年数というものが観念され、現在通常では67才までは働けたはずだ(これもいろいろ考え方があるが)、と考えるようである。とすれば、事例の場合、13年間は働けたはずということになる。


普通に考えれば、年間10万円の13年間であるので、100,000×13=1,300,000円ということになると思われると思う。


しかし、損害賠償の発想は、あくまで事故がなければ得られたであろう利益を賠償する、ということであり、事故にあわなかった場合よりも多く利益を得るということはあってはならない、ということが大前提として存在する。


そうすると、単純に年間10万円の13年間の1,300,000円を被害者(遺族)が受け取った場合、現在一時に受け取ることになるので、死亡しなかった場合よりも運用益を考えれば、利益を多く得ることになってしまう。


具体的に説明すれば、これも教室事例であるが、銀行金利が1パーセントで単利(複利にするとめんどくさい。やる気ない?)13年間不変であるとした場合、死亡しなければ、13年後に受け取る利益は、


(100,000×0.01×13)+(100,000×0.01×12)+(100,000×0.01×11)+・・・・


ということになるはずである。


これに対して、被害者が死亡し、1,300,000円を損害賠償として一時に受け取った場合、銀行に預けた場合の運用益は、


1,300,000×0.01×13ということになってしまう。


それで、一時払いをするということになるので、期間中の運用益を考慮し、その運用益を中間利息として控除して算定する、ということになるのである。


算定方法については、


http://www.city.kawasaki.jp/25/25tiiki/home/tebiki/10-12.pdf


http://www.mlit.go.jp/jidosha/anzen/kyusaitaisaku/1icon/syuro.pdf


を参照してもらいたい(これもやる気ない?)。いわゆるライプニッツ係数である。ホフマン係数(あるいは新ホフマン)というものも存在するが、昔は大阪地裁はホフマンと言われていたが、今ではライプニッツが主流と言っていいのではないか。ちなみに、ホフマン係数を使うのか、ライプニッツ係数を使うのか、という部分でも要は、「どっちでもいいよ」という趣旨の判例もある。


話はそれたが、じゃあ、何が問題なのか、というと、今現在使われている係数というのは、年5パーセントの法定利率を前提としている。つまり、損害賠償の交付を受けた者は、ほっといても年5パーセントの運用益を得ることができる、という発想なのである。


そうすると、分かるであろう。今の銀行金利(これは説明の便宜のためである。法律は銀行金利だけを念頭においている訳ではない)は、とんでもない低金利。これを年5パーセントを前提として、控除されたら、死亡しなかった場合に比べて著しく不利ではないか!、というのが被害者側の主張である。実際、そのような被害者側の主張を容れた下級審判決も多く存在していた。


これに対して、最高裁は要約すれば、「ごめんね。気持は分かるけど、法律ってのは安定性が大事なんだ。だから、法律で決めちゃっている以上、法定利率5パーセントで計算するのはしょうがないんだよ。てへっ。」、ということを言っている訳である。いや、これは不正確であるから、正確に勉強したい人は、トラックバック先の判決文を参照して欲しい(やっぱやる気ない?)。要は、「裁判官にそんな判断もとめられてもねぇ。法律作る人が考えてよ。すまぬ。」ってことであろうか。


現時点での将来予測であり、擬制を前提とした手法であるため、ある程度画一的な基準が必要なのは当然であろうとは思う。確かにそりゃ、年利10パーセントの時代が来たら、返さなくちゃいけないのか?っていうとそれも違うと思うし、困るよね判断する方も。


でもねぇ、釈然としない気持ちは残る。死亡しなかった場合より明らかに(これ重要)不利なんだもん。そんなに法的安定性が大事?下級審判例のおかげで、法的安定性が大きく崩れた?否。否である。


しかし、まがりなりにも最高裁判決。お上が決めたことであり、粛々と実務は年5パーセント画一で動きだす。こういうとき、弁護士としては、本当に無力感を感じる。権力にあこがれを持つ人間を私はあまり尊敬しないのであるが、権力がなくてはできないことというのは厳然と存在する。要は、「ちょっとくらい考えてやれよ~。知恵しぼれば現行法でもできるんじゃないの?」というのが本音である。


今となっては、一時給付が大前提となっている損害賠償の給付方法を考えるしかないのであろうか。民法改正で。


M弁護士