民法口語化 | 福岡若手弁護士のblog

福岡若手弁護士のblog

福岡県弁護士会HP委員会所属の弁護士4名によるBLOG
(ただしうち1名が圧倒的に多いですが、だんだん若手じゃなくなってるし)

ご存じのとおり、民法が口語化され、今年の4月1日から施行されている。


基本的には、民法の漢字カタカナ混じりの文章を、口語化しただけのものであるが、解釈上要件が「善意・無過失」とされていたものが、明文で無過失と規定されたり、「取消」を「撤回」と変更したりと、なかなか微妙な改正である。


法律の世界以外では、古い小説の中以外では全くおめにかからない言葉も多数あり、法律の勉強をしていると、面食らったものであるが、これからはそういった苦労も昔話になるようだ。いや、ホント自分は前世紀の人間って感じがする。


ただ、一方では、訳の分からない法律用語を覚えて悦に入るという楽しみ方もなくなるのである。これから法律を勉強する人が、なんとなくかわいそうな気もしないではない。ちょうど、昔のインテリ学生が、ドイツ語を勉強して、「アルバイト(ちなみにドイツ語としては働くという意味であり、アルバイトのことはドイツ語でもパートタイムジョブというようである)」等と言って、堂に入っていたのと同じ感覚と言えば分かるであろうか。


友達に、「この僕婢が~」とか、「金がなくて薪炭油にも苦労するよ」とか、そういう他愛もない会話がなくなってしまうと風情がなくなる気もするが、これも時代であろう。


ただ、基本的には、あんまりやろうこりゃという用語が変更されるにとどまっており、瑕疵とかそういった法律用語はまだまだ健在である。


あんまりやろう、ということで変更された言葉をいくつかあげると、


「疆界(きょうかい)」→「境界」

「囲繞地(いにょうち)」→「その土地を囲んでいる他の土地」

「溝渠(こうきょ)」→「溝、堀」

「僕婢(ぼくひ)」→「家事使用人」

「薪炭油(しんたんゆ)」→「燃料及び電気」


というものである。法律の勉強をしたことがないのに、左の言葉だけを見て読み方、意味が分かるあなたは、スッゲー読書家であろう。


まあ、あまり影響がないといえばないのであるが、困ったことに全くないとは言い切れない。


司法試験受験生時代は、少なくとも民法に関しては、第1条から、○条には何が規定されており、ということを諳んじていたのであるが、最近は、どこら辺にどういう条文があった、とかそういうイメージで捉えるようになっている。だから、若干の変更であっても、案外とそれまでのイメージと変わっているために、条文を探すときにとまどったりする。但し書きが2項になっていたりすると、もう大変。ありゃー、あの規定の要件なんやったけ~、とパニックになってしまい、ついつい昔の条文を持ち出したりする。無駄な労力・・・。


今のところは、まだ一般の六法でも追補という形でしか口語化民法は記載されていないのでまだイイが、そのうち、「あー囲繞地通行権があるけん、そこ通れるよ。」とかいう話をすると、依頼者から「囲繞地ってなんですか?条文には、その土地を囲んでいる他の土地って書いてありますよ。あんた本当に法律知ってんの?」と言われそうで怖い。


逆に、以前、法律の勉強をしていた被告人が、取調中、若い検事に対して「そりゃ誣告(ぶこく)罪でしょうもん」と言ったところ、ポカンとされた、といって、悦に入っていたことがあった。あの検事法律を知らんですよ、みたいに。そりゃ、平成7年改正刑法しか勉強していない人に誣告罪は分からんやろう。虚偽告訴罪というからね。今は。


これからの若い弁護士は、昔の言葉が分からなくてポカンとすると、からかわれることもあるかもしれない。


これから法律事務所に相談に行こうとするあなた。民法の口語化条文を手に入れて、変更箇所を覚えておき、弁護士をからかってやると鬱憤が晴れるかもしれないよ。


それに、そういう手強い相手は弁護士の方も、気が抜けないから、仕事のクオリティもあがるだろうし。


M弁護士