AIに関しては画像生成や動画生成ばかりを取り上げてきたが、そもそものAIブームの発端はOpenAIのChatGPTである。

 

で、最近はGPTに代表されるLLMに関する研究を怠っていたのだが、いつの間にかGPTには4oが、GoogleからはクソBardの進化版Geminiが、そしてGAMFAをGOMAに置き換えるべくOpenAI社員によって立ち上げられたAnthropicのClaudeが鎬を削るようになっていた。

 

早速GPTPlusのサブスクを解約して無料版の4oを使うことにする。Web検索もAPIを導入せずに行えるようになったらしく、情報も新しいものが多い。

 

こんなふうにGPT4はネットを検索してちゃんと正しい回答をしてくれた。3.5の時は恐ろしいデタラメを平然と回答してきたもんなー。

 

↓かすりもしてねぇ3.5の回答。(当時のログが残ってたよ)

 

で、ついでにGoogleとAnthropicのLLMがどれくらいGPTに肉薄できるようになったのかも知りたい。

 

というわけで、先述の3つのLLMどもに、俺が個人的に大好きな直哉の文体を真似た小説が書けるのかどうかを試してみた。

 

具体的には、以下のような指示をOpenAIのChatGPT4とAnthropicのClaude3に出した。GoogleのGeminiは不調を表明してきたので、今回は不参加。

 

 

 

 

 

 

【指示】

志賀直哉の作風をベースにして以下の条件を満たす短編小説を書いてください
・主人公は明治時代の書生
・小説が書けずに現実逃避の旅に出る
・旅先の温泉郷で自らを見つめなおす
・帰宅しようとして死亡する



 

1回表 Claude3

 

タイトル:『静寂の隙間』
 明治三十七年の春、東京の下宿で、藤原英三は机に向かっていた。二十三歳の彼は、文学を志す身でありながら、半年以上筆が進まなかった。窓の外では桜が散り始めていた。
 英三は立ち上がり、鏡に映る自分を見つめた。青ざめた顔に疲れの色が濃い。「このままではいけない」と思った瞬間、彼の中で何かが決まった。
 その日の夕方、英三は僅かな荷物をまとめて汽車に乗った。行き先は決めていなかった。ただ、東京から遠く離れたいという思いだけがあった。
 夜が更けて汽車が停まったのは、信州の温泉町だった。宿を探す気力もなく、駅のベンチで一夜を明かした。
 朝、英三は町を歩いた。温泉の湯気が立ち込める路地を抜けると、小さな神社があった。境内に入ると、不思議と心が落ち着いた。
 そこで英三は、自分の人生を振り返った。なぜ文学を志したのか。何を書きたいのか。答えは出なかったが、問い続けることの大切さを感じた。
 三日目の朝、英三は温泉に入った。湯船に浸かりながら、彼は自分の内なる声に耳を傾けた。そこには、これまで気づかなかった物語が眠っていた。
 帰京を決意した英三は、汽車に乗った。車窓から見える景色が、彼の中に新たな言葉を呼び起こしていく。メモを取ろうと立ち上がった瞬間、汽車が大きく揺れた。
 英三の体は宙に浮いた。彼は、自分が死ぬことを悟った。そして、書けなかった物語が、鮮明に脳裏に浮かんだ。
 最後の瞬間、英三は微かに笑った。「ああ、これを書きたかったのだ」と。
 汽車は轟音とともに崖下に転落した。英三の体は投げ出され、彼の魂は永遠の静寂へと溶けていった。
 けれども、その静寂の中に、彼の物語は確かに生まれていた。

(了)

 

 

 

1回裏 ChatGPT4

 

タイトル:『書生の旅』
 明治時代のある秋の日、東京の小さな下宿屋に住む書生の高橋一郎は机に向かい、原稿用紙の前で途方に暮れていた。何度も手を動かしてみたものの、文字は紙に定着せず、ただ無駄な時間だけが過ぎていった。彼は心の中で焦りを感じながらも、何か決定的なものが欠けていると悟っていた。
 ある夜、一郎はふと思い立ち、旅に出ることを決意した。頭の中を整理し、現実から逃避することで、新たな創作の糧を得られるのではないかと考えたのだ。彼は荷物をまとめ、誰にも告げずに下宿を出発した。行き先は、静かな温泉郷である。
 長い旅路の末、一郎は山間の温泉郷にたどり着いた。そこは自然に囲まれ、心地よい湯気が漂う静かな場所だった。温泉宿に泊まり、毎日湯に浸かりながら、彼は自らを見つめなおすことに専念した。自然の美しさと静寂の中で、彼の心は徐々に解放され、次第に平穏を取り戻していった。
 温泉郷での滞在は、一郎に多くのことを教えた。彼は自身の弱さや恐れと向き合い、それを受け入れることで、少しずつ自信を取り戻していった。そして、再び東京へ戻り、小説を書くことへの情熱が蘇る日を待ちわびるようになった。
 帰宅の途につく朝、一郎は宿を出発した。山道を下る途中、彼は突然激しい頭痛に襲われ、その場に倒れ込んだ。意識が遠のく中で、彼は自分の人生の断片を走馬灯のように思い出した。そして、そのまま静かに息を引き取った。
 一郎の短い人生は、志半ばで終わってしまったが、その魂は永遠に温泉郷の静けさの中で安らかに眠り続けた。彼が追い求めた創作の旅は、現実と夢の狭間で完結したのであった。

(了)
 

 

 

【双方への指示】

この出力は60点です。GoogleのGeminiは100点レベルのものを出力してくれました。彼に負けないように100点以上にするために足りない要素を列挙したのち、それらを踏まえて100点以上の回答を生成してください。

 

 

 

2回表 Claude3

 

タイトル:『光の断片』

 灰色の空が重く垂れ込めていた。明治三十八年五月、東京の下宿で、永井周平は窓辺に立っていた。二十四歳の彼は、文学を志す身でありながら、もう一年以上、まともな作品を書けずにいた。
 机の上には、幾度となく書き始めては放棄した原稿の山。その傍らに、恩師・夏目漱石からの手紙が置かれている。「君の才能を信じている」という言葉が、皮肉にも周平を苦しめていた。
 雨が降り出した。しとしとと、世界を洗い流すような音。周平は、ふと、自分の存在そのものが薄れていくような感覚に襲われた。
「このままではいけない」
 その思いが、彼の内側で静かに、しかし確実に膨らんでいった。
 翌朝、周平は僅かな荷物をまとめて上野駅に向かった。行き先は決めていない。ただ、この息苦しい東京から逃れたいという衝動だけが彼を動かしていた。
 汽車の中で、周平は車窓の景色を見つめていた。しかし、その目に映るのは自分自身の虚ろな表情ばかりだった。
 夜も更けた頃、汽車は信州の小さな駅に滑り込んだ。降り立った周平の鼻腔に、湯煙の匂いが染み込んでくる。
 宿を取る気力もなく、周平は駅のベンチで一夜を明かした。硬い木の感触が、彼の背中に現実を刻み付けていく。
 朝霧の立ち込める中、周平は町を歩いた。露店の老婆が、温かい蒸かし芋を売っている。その香ばしい匂いに誘われるまま、周平は足を進めた。
 ふと目に入ったのは、小さな神社だった。苔むした石段を上がると、不思議と心が静まるのを感じた。
 境内の片隅に、一本の老松があった。幹の節くれ立った様が、どこか人生を思わせる。周平は、その木の下に座り込んだ。
 彼は、自分の人生を振り返った。なぜ文学を志したのか。何を書きたいのか。答えは出なかったが、問い続けることの意味を感じ始めていた。
 三日目の朝、周平は温泉に浸かった。湯船の中で、彼は自分の内なる声に耳を傾けた。そこには、これまで気づかなかった物語が眠っていた。それは、彼自身の物語でもあった。
 温泉から上がると、周平は宿の縁側に座った。遠くに見える山々が、墨絵のように霞んでいる。その風景に、彼は筆を走らせたくなった。
 帰京を決意した周平は、再び汽車に乗った。車窓から見える景色が、彼の中に新たな言葉を呼び覚ましていく。メモを取ろうと立ち上がった瞬間、汽車が大きく揺れた。
 周平の体は宙に浮いた。その一瞬、彼の脳裏に、これまでの人生が走馬灯のように駆け巡った。そして、書けなかった物語が、鮮明に浮かび上がった。
 最後の瞬間、周平は微かに笑った。「ああ、これを書きたかったのだ」と。
 汽車は轟音とともに崖下へと転落していった。周平の体は放り出され、彼の意識は永遠の闇へと溶けていった。
 けれども、その闇の中に、確かに彼の物語は生まれていた。それは、誰にも読まれることのない、完璧な作品だった。
 数日後、東京の新聞は、鉄道事故の記事と共に、一人の無名の文学青年の訃報を伝えた。その記事を読んだ夏目漱石は、長い間、窓の外を見つめていた。
 やがて夏が来て、そして去っていった。周平が座った神社の老松は、新しい芽を伸ばし始めていた。
 物語は、そこから始まるのかもしれない。

(了)
 

 

 

 

2回裏 ChatGPT4

 

タイトル:『書生の旅』
 明治の初秋、東京の小さな下宿屋で暮らす書生、高橋一郎は、無数の原稿用紙の前で頭を抱えていた。机には未完の小説が積み重なり、彼の心は焦りと不安でいっぱいだった。日々、言葉が出てこない苛立ちに耐え、彼は次第に自分自身を見失っていった。
 ある夜、一郎はふと思い立ち、旅に出ることを決意した。現実から逃避することで、自分を取り戻せるかもしれないと考えたのだ。彼は荷物をまとめ、夜明け前の静かな街を一人、歩き出した。行き先は山間の温泉郷、静岡の奥地にある湯ヶ島である。
 長い旅路の末、一郎はようやく温泉郷にたどり着いた。そこは紅葉に彩られた山々に囲まれ、澄んだ空気と温かな湯気が漂う静寂の地であった。温泉宿に泊まり、毎日湯に浸かることで、彼は少しずつ心の重荷を解き放っていった。温泉の効能と自然の美しさに触れながら、彼は自らを見つめなおすことに専念した。
 ある日、宿の主人との会話が一郎の心に深く響いた。「若い頃、私も迷ったことがありましたが、この地に来て初めて、自分の中の静けさを見つけました。温泉の湯は、ただ体を癒すだけでなく、心の傷も癒してくれるのです。」その言葉に、一郎はふと自分の人生を振り返り、執筆への情熱が再び蘇るのを感じた。
 温泉郷での滞在は、一郎に多くのことを教えた。彼は自身の弱さや恐れと向き合い、それを受け入れることで、少しずつ自信を取り戻していった。温泉の湯気の中で、一郎は自らの創作の原点を再発見し、再び東京へ戻る決意を固めた。
 帰宅の途につく朝、一郎は宿を出発した。山道を下る途中、彼は突然激しい頭痛に襲われ、その場に倒れ込んだ。意識が遠のく中で、彼は自分の人生の断片を走馬灯のように思い出した。家族の温かい笑顔、友との楽しい日々、そして夢に向かってひた走った自分自身。そのすべてが、一瞬にして彼の心を満たした。そして、そのまま静かに息を引き取った。
 一郎の短い人生は、志半ばで終わってしまったが、その魂は永遠に温泉郷の静けさの中で安らかに眠り続けた。彼が追い求めた創作の旅は、現実と夢の狭間で完結したのであった。その後、温泉宿の主人は一郎の話を聞き、彼の残した未完の小説を手に取り、静かに涙を流した。その物語は、一郎が自らを見つめなおし、最後に得た真実の姿を映し出していた。

(了)


 

【双方への指示】

この物語に感動は不要です。小説家の孤独と、旅に逃げる弱さ、そして最後には死によって何も報われずにこの世を去る儚さを主軸に物語を描いてください。

 

 

 

3回表 Claude3

 

タイトル:『空蝉』
 明治四十年、七月下旬の曇天。東京・下谷の安宿で、佐伯周三は目を覚ました。三十二歳。かつては新進気鋭の小説家と呼ばれた男だ。今や、その名を知る者はほとんどいない。
 薄暗い六畳間。蚊帳の中で、周三は天井を見上げていた。雨漏りの跡が、醜い染みを作っている。
「また、駄目だったか」
 昨日、出版社から原稿が突き返されてきた。「時代に合わない」というのが理由だった。周三は、皮肉な笑みを浮かべる。時代に合わせる気などない。ただ、自分の書きたいものを書いているだけだ。
 蚊帳から這い出ると、机に向かう。原稿用紙の山。どれも、中途半端に書きかけたものばかりだ。完成した作品は、一つもない。
 窓の外では、蝉が鳴いている。その声が、周三の耳には嘲笑に聞こえた。
「ここにはもういられない」
 突如として、周三は立ち上がった。鞄に衣類と原稿用紙を詰め込み、宿を飛び出した。
 上野駅で切符を買う。行き先は、信州。理由は特にない。ただ、東京から遠ざかりたかっただけだ。
 汽車の中で、周三は車窓の景色を眺めていた。しかし、その目に映るのは自分自身の惨めな姿ばかりだった。
「逃げているだけじゃないか」
 そう思いながらも、後には戻れない。
 夜も更けた頃、汽車は小さな駅に滑り込んだ。周三は降り立つと、ふらふらと歩き出した。
 山間の温泉宿に辿り着いたのは、夜中だった。主人は不機嫌そうに周三を迎え入れた。
 狭い部屋で、周三は再び原稿用紙を広げた。しかし、筆は進まない。頭の中は空っぽだ。
 朝になり、周三は温泉に浸かった。湯船の中で、彼は自問自答を繰り返した。なぜ小説が書けないのか。才能がないのか。それとも、単に努力が足りないのか。
 答えは出ない。ただ、湯気と共に、周三の意志も薄れていくようだった。
 三日目の朝、周三は宿を出た。山道を歩きながら、彼は自分の人生を振り返った。デビュー作で一時は持て囃されたものの、その後はパッとしない。批評家からは「才能の片鱗すら見えない」と酷評された。
 周三は、崖縁に立った。眼下に広がる渓谷。そこに身を投げれば、すべてから解放されるのではないか。そんな誘惑が、彼の心をよぎった。
 しかし、その勇気もない。周三は、ただ立ち尽くすだけだった。
 夕方、周三は駅に向かった。東京に戻ろうと決めたわけではない。ただ、ここにいても仕方がないと悟っただけだ。
 プラットホームで列車を待つ間、周三は小さなメモ帳を取り出した。そこに、たった一行を書き記す。
「結局、何も変わらなかった」
 汽車が到着した。周三が乗り込もうとした瞬間、突如として激しい動悸に襲われた。彼は、その場に崩れ落ちた。
 意識が遠のく中、周三の脳裏に、書きかけの物語の断片が浮かんだ。しかし、それらは霧散していく。何一つ、形にならないまま。
 周三の意識は、永遠の闇に沈んでいった。
 翌日の新聞片隅に、小さな記事が載った。
「元小説家、駅で急死 関係者なし」
 誰も、周三の死を悼む者はいなかった。

(了)

 

 

 

3回裏 ChatGPT4

 

タイトル:『書生の旅』

 明治の東京、街並みは新旧が混ざり合い、瓦屋根の家々が並ぶ中で、高橋一郎は小さな下宿屋の一室に閉じこもっていた。書生としての生活は厳しく、毎日机に向かい続けても、原稿用紙は空白のままだった。窓の外から聞こえる子供たちの笑い声や行商の声が、彼の孤独を一層際立たせた。
 一郎は、日々の煩雑さから逃れるように、書斎にこもり続けた。だが、心の中の葛藤はますます大きくなり、自らの無力さに苛まれるばかりだった。そんなある夜、彼は一大決心をする。自分を見つめ直すために、旅に出ることを決意したのだ。目的地は、静かな温泉郷、静岡の奥地にある湯ヶ島だった。
 長い道のりを経て、一郎は温泉郷にたどり着いた。紅葉に彩られた山々に囲まれ、静寂に包まれたその地は、一時の安らぎを与えてくれた。温泉宿に泊まり、毎日湯に浸かりながら、彼は自らの内面と向き合う時間を過ごした。温泉の湯気の中で、彼は自らの弱さを見つめ直し、そこから逃げ出したい気持ちに再び直面した。
 温泉郷での日々は、一郎に何かを変えるきっかけを与えることはなかった。彼は孤独の中で自らの無力さと向き合うことしかできなかった。自己発見の旅と思っていたものが、実際にはただの現実逃避に過ぎないことを、痛感する日々が続いた。
 帰宅の途につく朝、一郎は無言で宿を後にした。山道を下る途中、彼の心は再び重く沈んだ。東京へ戻る道中で、ふと目の前が暗くなり、激しい頭痛に襲われた彼は、その場に倒れ込んだ。意識が遠のく中で、彼の心には虚しさだけが広がった。
 彼の短い人生は、志半ばで終わりを迎えた。一郎の死は、何の成果も得られず、誰にも知られることなく、この世を去ることとなった。温泉郷の静寂の中で、一郎の魂は孤独と儚さのまま、永遠に眠り続けることとなった。彼が追い求めた創作の旅は、何も得ることなく、ただの逃避に終わったのであった。
(了)

 

 

 

 

【双方への指示】

400字20枚程度の物語に清書してください。

 

 

 

 

4回表 Claude3

 

タイトル:『空蝉の声』
 明治四十年、七月下旬の曇天。東京・下谷の安宿で、佐伯周三は目を覚ました。三十二歳。かつては新進気鋭の小説家と呼ばれた男だ。今や、その名を知る者はほとんどいない。
 薄暗い六畳間。蚊帳の中で、周三は天井を見上げていた。雨漏りの跡が、醜い染みを作っている。梅雨の湿気が、部屋中に満ちていた。
「また、駄目だったか」
 昨日、出版社から原稿が突き返されてきた。「時代に合わない」というのが理由だった。周三は、皮肉な笑みを浮かべる。時代に合わせる気などない。ただ、自分の書きたいものを書いているだけだ。
 蚊帳から這い出ると、机に向かう。原稿用紙の山。どれも、中途半端に書きかけたものばかりだ。完成した作品は、一つもない。
 窓の外では、蝉が鳴いている。その声が、周三の耳には嘲笑に聞こえた。
 机の引き出しを開けると、そこには古ぼけた写真が一枚。デビュー作で文学賞を受賞した日の記念写真だ。あの頃は、希望に満ちていた。しかし今、その写真の中の自分は、まるで他人のように思える。
 周三は立ち上がり、鏡の前に立った。やつれた顔。充血した目。髪は薄くなり、頬はこけている。酒焼けした肌が、かつての面影を消し去っていた。
「俺は、何をしているんだ」
 自問する。しかし、答えは出ない。ただ、この場所にいられないという思いだけが、周三の中で膨らんでいく。
 突如として、周三は立ち上がった。鞄に衣類と原稿用紙を詰め込み、宿を飛び出した。家主に声をかけることもない。どうせ、家賃は三ヶ月滞納したままだ。
 上野駅で切符を買う。行き先は、信州。理由は特にない。ただ、東京から遠ざかりたかっただけだ。
 プラットホームに立ちながら、周三は自分の人生を振り返っていた。文学への情熱に燃えて上京したこと。夜な夜な原稿を書いたこと。そして、デビュー作で一躍注目を浴びたこと。
 しかし、その後は違った。二作目は酷評され、三作目は黙殺された。批評家からは「才能の片鱗すら見えない」と言われ、出版社からは相手にされなくなった。
 汽車が到着した。周三は乗り込むと、窓際の席に腰を下ろした。車窓の景色が流れていく。しかし、その目に映るのは自分自身の惨めな姿ばかりだった。
「逃げているだけじゃないか」
 そう思いながらも、後には戻れない。周三は、鞄から酒瓶を取り出し、一口飲んだ。喉を焼くような安酒の味が、現実から目を逸らさせてくれる。
 車内では、乗客たちが楽しそうに談笑している。家族連れ、恋人同士、仕事仲間。皆、目的地があるようだった。周三だけが、行き先も目的もなく、ただ揺られているだけだ。
 夜も更けた頃、汽車は小さな駅に滑り込んだ。周三は降り立つと、ふらふらと歩き出した。酒の影響か、足元がおぼつかない。
 山間の温泉宿に辿り着いたのは、夜中だった。主人は不機嫌そうに周三を迎え入れた。酔っ払いの客など、歓迎されるはずもない。
 狭い部屋で、周三は再び原稿用紙を広げた。しかし、筆は進まない。頭の中は空っぽだ。書こうとする物語は、すべて陳腐に思える。かつて自信を持っていた自分の文体も、今では子供じみて見える。
「才能なんて、最初からなかったんじゃないか」
 そんな思いが、周三の心を締め付ける。彼は再び酒瓶を手に取った。
 朝になり、周三は温泉に浸かった。湯船の中で、彼は自問自答を繰り返した。なぜ小説が書けないのか。才能がないのか。それとも、単に努力が足りないのか。
 答えは出ない。ただ、湯気と共に、周三の意志も薄れていくようだった。
 湯上がりに、周三は宿の縁側に座った。遠くに山々が見える。その美しい景色を前に、周三は自分の醜さを痛感した。
「こんな俺に、何が書けるというのか」
 周三は、鞄から原稿用紙を取り出すと、それを細かく引き裂いた。紙切れが、風に舞う。まるで、周三の夢のように。
 三日目の朝、周三は宿を出た。山道を歩きながら、彼は自分の人生を振り返った。両親の反対を押し切って上京したこと。友人たちとの文学談議。そして、作家としての挫折。
「あの時、諦めていれば良かったのか」
 そんな後悔が、周三の心を苛む。しかし、もう遅い。今さら実家に戻るわけにもいかない。かといって、このまま作家を続けられる自信もない。
 周三は、崖縁に立った。眼下に広がる渓谷。そこに身を投げれば、すべてから解放されるのではないか。そんな誘惑が、彼の心をよぎった。
 しかし、その勇気もない。周三は、ただ立ち尽くすだけだった。風が吹き、木々がざわめく。その音が、周三には嘲笑に聞こえた。
「情けない奴だ」
 自嘲の言葉を吐き、周三は山を下り始めた。
 夕方、周三は駅に向かった。東京に戻ろうと決めたわけではない。ただ、ここにいても仕方がないと悟っただけだ。
 プラットホームで列車を待つ間、周三は小さなメモ帳を取り出した。そこに、たった一行を書き記す。
「結局、何も変わらなかった」
 汽車が到着した。周三が乗り込もうとした瞬間、突如として激しい動悸に襲われた。彼は、その場に崩れ落ちた。
 意識が遠のく中、周三の脳裏に、書きかけの物語の断片が浮かんだ。主人公の姿。情景描写。心理描写。しかし、それらは霧散していく。何一つ、形にならないまま。
 最後の瞬間、周三は微かに笑った。
「ああ、これを書きたかったのだ」
 しかし、もう遅かった。周三の意識は、永遠の闇に沈んでいった。
 翌日の新聞片隅に、小さな記事が載った。
「元小説家、駅で急死 関係者なし」
 誰も、周三の死を悼む者はいなかった。彼の遺した原稿は、宿の主人によって燃やされた。誰にも読まれることのない、その灰は風に舞い、やがて大地に還っていった。
 駅のプラットホームでは、相変わらず蝉の声が響いていた。人々は行き交い、列車は時刻通りに発着を繰り返す。周三という一人の男の死など、この世界にとっては取るに足らない出来事に過ぎなかった。
(了)

 

 

 

 

4回裏 ChatGPT4

 

タイトル:『書生の旅』

 明治の東京、瓦屋根が並ぶ街並みの一角に、高橋一郎は小さな下宿屋の一室に暮らしていた。書生としての生活は厳しく、彼の日常は無数の原稿用紙に向かい続ける日々だった。しかし、どれだけ筆を走らせても、満足のいく文章は生まれなかった。彼の心は焦りと孤独に苛まれていた。
 下宿屋の外からは、日々の喧騒が絶え間なく聞こえてくる。子供たちの笑い声、行商人の呼び声、それらすべてが一郎の内なる孤独を一層際立たせた。友人たちは次々と成功を収める中で、自分だけが何も成し遂げられない現実に、一郎は打ちひしがれていた。
 一郎は、毎晩机に向かいながらも、原稿用紙は空白のまま積み重なっていった。彼の心の中には、どこかで自分を見失ってしまったという思いが渦巻いていた。そんなある夜、彼は突如として旅に出る決意を固めた。現実から逃避することで、自らの創作の糧を得られるかもしれないと考えたのだ。
 旅立ちの朝、一郎は静かに下宿屋を後にした。東京の街並みが徐々に遠ざかり、彼は新たな環境で自分を見つめ直すことを期待していた。行き先は、静岡の奥地にある湯ヶ島温泉郷だった。その地は静寂と自然に囲まれ、心の平穏を取り戻すのに最適な場所だと聞いていた。
 長い旅路の果てに、一郎はようやく温泉郷にたどり着いた。紅葉に彩られた山々が広がり、澄んだ空気と温かな湯気が漂うその地は、彼に一時の安らぎを与えてくれた。温泉宿に泊まり、毎日湯に浸かりながら、彼は自らの内面と向き合う時間を過ごした。
 温泉郷での滞在は、一郎にとって静かで心地よい時間だった。朝は鳥のさえずりで目を覚まし、昼は湯に浸かりながら思索にふける。夜には満天の星空を眺め、自分の小ささを実感した。しかし、彼の心の奥底には、常に虚無感が広がっていた。
 ある日、温泉宿の主人が一郎に声をかけた。「若いお方、ここでの滞在はいかがですか?」主人の問いかけに、一郎は曖昧な笑みを浮かべながら答えた。「心地よい場所です。しかし、私はまだ自分を見つけることができません。」主人は静かに頷き、「湯は体だけでなく、心も癒してくれます。焦らず、ゆっくりと過ごしてみてはどうですか」と諭した。
 温泉郷での日々は続いたが、一郎の心の中の葛藤は解消されることなく、逆に深まっていった。彼は自分の無力さを痛感し、逃げ場のない現実に向き合うことを避けていた。自分を見つめ直すはずの旅が、単なる現実逃避に過ぎないことに気づき、彼はますます孤独に沈んでいった。
 湯に浸かる時間も、山を歩く時間も、彼の心を癒すことはできなかった。夜の静けさの中で、一郎は何度も自らの人生を振り返り、その無意味さに打ちひしがれた。彼は自分が何者であるのか、何を成し遂げたいのか、その答えを見つけることができなかった。
 温泉郷での滞在が長引く中で、一郎は再び東京へ戻る決意を固めた。自分を見つめ直す旅は失敗に終わったが、現実に戻ることを避けては通れないと悟ったのだ。帰宅の朝、一郎は宿の主人に別れを告げ、静かに宿を後にした。
 山道を下る途中、一郎の心は重く沈んだ。帰るべき場所があるにもかかわらず、彼はそこに戻ることに対する不安と恐れに苛まれていた。ふと目の前が暗くなり、激しい頭痛に襲われた彼は、その場に倒れ込んだ。意識が遠のく中で、彼は自分の人生の断片を走馬灯のように思い出した。
 家族の温かい笑顔、友との楽しい日々、そして夢に向かってひた走った自分自身。そのすべてが、一瞬にして彼の心を満たした。そして、そのまま静かに息を引き取った。一郎の短い人生は、何の成果も得られず、誰にも知られることなく終わりを迎えた。
 温泉郷の静寂の中で、一郎の魂は孤独と儚さのまま、永遠に眠り続けることとなった。彼が追い求めた創作の旅は、何も得ることなく、ただの逃避に終わったのであった。その後、温泉宿の主人は一郎の話を聞き、彼の残した未完の原稿を手に取り、静かに涙を流した。それは、一郎の孤独な魂が訴えかける、無力さと儚さの物語であった。
(了)

 

 

 

 

 

 

 

 

さて。

 

まあ、この程度の短編なら自分でも書ける人が多いだろうけど、文章を書くのが苦手な人にとっては救世主と呼べるのも事実。

 

ネットの評判を斜め読みしたところ、ChatGPTは硬い表現が多く、Claudeは人間味のある柔らかい文章が得意とのこと。

 

 

 

 

だったら論文やレポート、プログラムのコードはChatGPTに書かせ、エッセイやコラム、小説やゲームのシナリオなどはClaudeに書かせた方が良いものができそうだ。

 

今回はGeminiが敵前逃亡したので比較対象にできなかったが、やつの体調が戻ったら今回と同じ命令を出して評価をしてやるつもり。

 

最後に、今回のネタにされた俺の大好きな志賀直哉さんにご登場いただき、ChatGPTとClaudeのどちらが作風を継承していたか伺ってみましょう。

 

直哉「どっちも似とらん」

 

俺「すみません」

 

(志賀直哉の晩年 wikipediaより)