ここ一週間の出来事。

 

10月26日(木)

 3つ隣の市にあるクリニックを紹介してもらい、シャントPTAをしてもらったところ、静脈が捻じれて動脈に吻合されていることがわかった。3時間かけて30回近くバルーンを膨らませてもらった。

 

10月27日(金)

 会社を休んで同クリニックへ。エコーチェックで血流が悪いままの場合は午後からシャント再建オペをする予定だったが、不思議とシャントの流れがよくなっていたのでオペは中止。あれからも時々耳を当てているが、作りたての時のようにゴーゴーと音を立てて流れているので嬉しい。

 

10月28日(土)

 術後で体調不良だが出勤。取り立てて面白いことはなし。

 

10月29日(日)

 明日嫁ちゃんが知人とちび(8)を連れてコストコへ行くらしいので、「行くんだったら食べちゃえ」ということで、買っておいた例の5桁肉をステーキにして食べた。

 

10月30日(月)

 普通に出勤。嫁ちゃんは知人とちび(8)とコストコで半日楽しんで、おいしいアイスラテやらスムージーやらを飲んできたとか。ええのう。

 

10月31日(火)

 嫁ちゃんからちび(8)の面白い話を聞いた。

 

こんなふうに日日是好日のまま時は流れていく。

 

 

 

 

 

まずは肉の話。

 

例の5桁肉だが、うちは決して大金持ちというわけではないので、あんなものを日常的に買っているわけではない。

 

が、昨今、減税ウソ眼鏡クソ野郎のせいで諸物価がぐんぐん高騰しており、普通のスーパーでちょっとしたステーキ肉を買おうとするとやたら高いのだ。

 

コストコの5桁肉は確かに12,000円もするから購入にはちょっとした勇気が必要だけど、よく考えると100gで600円を切っているんだから激安である。

 

 

ちょっと楽天を調べてみても、100gを1000円未満で買える肉なんかない。

 

 

 

嫁ちゃん「で、みんなはどれくらい食べたいんや?」

 

俺「もったいないから2kgを6回に分けて食べよう」

 

嫁ちゃん「そうすると、1回で330gか……一人当たり80gにしかならんで」

 

俺「いいんだよ。美味いものを大量に食いつけちまうと、それが当たり前になっちまう。こういうのは少なくていいんだ」

 

ちび(8)「ぼくはいっぱいたべたいなー」

 

俺「わかる。わかるぞ。お前は育ち盛りだし、男の子だもんな。肉をいっぱい食べて身長をぐんぐん伸ばさないと、生物として遺伝子を残せる男になれないもんな」

 

嫁ちゃん「何を言うとる」

 

俺「あ、これマジだから。最近『弱男』って言葉が流行ってるじゃん。あれって本当にあるんだぜ。生物学専攻の俺から言わせてもらうと、昆虫も動物も、オスは大きく力強く逞しくなけりゃ、メスに遺伝子を残したいと思わせられない」

 

嫁ちゃん「なんでや」

 

俺「いいか? 生物が生存しているのは何のためか? それは遺伝子を後世に伝えるためだ。そのためには環境の変化やストレスで潰されないような強靭な生存力を持つ必要がある。そのためには強い遺伝子を持つオスと交尾し、次世代には自分より強い個体を生み出さねばならない。そうしなければ遺伝子が滅亡しちゃうだろ?」

 

嫁ちゃん「ふん。それで?」

 

俺「だからクワガタのメスを例に取ると、体が大きくて顎の立派なオスと喜んで交尾をする。顎だけでなく体も小さくてひょろひょろした元気のない病弱のオスと喜んで番(つが)うメスなんか地球上に存在しない」

 

 

 

嫁ちゃん「ほー。つまり、顎の小さい貧弱なクワガタは遺伝子を残す資格がないちゅうわけやな」

 

俺「資格がない、というよりも、淘汰される宿命にある、と言った方がいい。生物や命の仕組みを理解すればごく当然のことなんだよ」

 

嫁ちゃん「ふん。で、あんたは身長が183もあるってことをドヤりたいわけか。うちがあんたと一緒になったのは、あんたの身長のせいやと言いたいわけか」

 

俺「もちろんそれだけじゃない。人間の場合は、経済力とか、体格とか、声のハリとか、動作の力強さとか、いろいろな要素を見て、女はその男の遺伝子を残してもいいかどうか判断する。わざわざ卑屈で貧弱で病弱な男の遺伝子を残すという考え方は、遺伝子そのものにすれば危険的思想なんだ。だって自分が淘汰されて宇宙から消滅しちゃうんだぜ。遺伝子にしてみれば、それだけは何としても避けたい。だから昆虫も動物も、もちろん人間の女も、最初から遺伝子的に強い男を求めるようにできているんだ。だから『弱男』がモテないのは当たり前なんだよ」

 

 

↓こういう考え方をしていたら一生メスに出会えない。筋トレしろ!

 

 

ちび(8)「なんでもいいよー。はやくおにくやこうよー」

 

俺「というわけで、ちびには本当はたくさん食わせてやりたいが、それはまた今度、安い肉でな。今回は一人80g」

 

嫁ちゃん「わかったわかった」

 

ちび(8)「えー」


俺「しかし……80gだと500円か。いきなりステーキより安いな」

 

娘(19)「パパ、行ったことあるの?」

 

俺「ない」

 

 

嫁ちゃん「これで約320gや」

 

俺「おほー! うまそうだなー!」

 

嫁ちゃん「こんなのを毎日食えると思うなよ」

 

俺「わかってるって」

 

 

俺「80gだと、一人あたり4切れか」

 

娘(19)「4切れもあればご飯2杯はいけるよ」

 

俺「お前は友達としゃぶ葉にでも行ってりゃいい」

 

娘(19)「またそれ言う!? もう行かないから! あそこの肉は無理!」

 

俺「二十歳にもならん小娘のくせに舌が肥えやがって……」

 

娘(19)「私は一生この肉だけでいいや」

 

俺「いや、世界は広いから、もっとうまい肉があるかもしれんぞ」

 

娘(19)「それは知ってるけど、今はこれで十分」

 

確かにそれは言える。

 

うまい肉は塩と胡椒だけで充分なのだ。

 

焼き肉のタレってのは、どうしても喉を通らない靴底みたいな不味い肉を無理やり食べるために開発されたと信じて疑わない。

 

だからうちには焼き肉のタレはない。

 

嫁ちゃん「大学イモも作ったで!」

 

 

嫁ちゃん「いいサツマイモがあったもんで、買ってきた」

 

俺「おお! 懐かしい! 昭和の味だ!」

 

ちび(8)「パパは、なんで『だいがくいも』っていうか、知ってる?」

 

俺「知らん。お前は知ってるのか?」

 

ちび(8)「知ってるよ。ぐーぐるで、しらべたから」

 

俺「ほう。で、何で大学イモっていうんだ?」

 

ちび(8)「こたえは、3つあったよ。ひとつは、がくひにこまっただいがくせいが、イモをあまくして、うって、がくひをかせいだから」

 

俺「昭和の大学生だなー。勉三さんを思い出した」

 

Ⓒ藤子不二雄FⒸキテレツ大百科Ⓒ小学館

 

 

嫁ちゃん「勉三さんは浪人生やろ」

 

俺「あ、そうだった。それで? あとの二つは?」

 

ちび(8)「ふたつめは、だいがくせいが、すきで、よくたべてたから」

 

俺「ふーん」

 

ちび(8)「みっつめは、とうじ『だいがく』ということばをつけるのが、はやっていたから。『だいがくノート』とか」

 

俺「それはちょっと嘘くさいな。俺は一番目の理由を推そう」

 

嫁ちゃん「うちも一番目の理由がええな」

 

俺「これ、あと5回食べられるんだよね」

 

嫁ちゃん「1回、1人あたり80gでよけりゃな」

 

俺「それでいい」

 

嫁ちゃん「なら、明日は肉は買ってこんで」

 

俺「いいよ」

 

 

 

 

 

で、翌日の月曜日。

 

コストコに行ってきた嫁ちゃんが、有名な例のファミリー寿司を買ってきてくれたので、それで夕ご飯を済ませた。

 

 

嫁ちゃん「きれいに食いよったな」

 

俺「でもさ、これも考えてみると安いんじゃない?」

 

嫁ちゃん「安いで。48貫で3,600円くらいじゃ」

 

俺「1貫75円! 2貫で150円だから回転寿司と同じくらいか! それじゃ回転寿司なんか行かなくていいじゃんか!」

 

嫁ちゃん「だから行ってへんやろ。醤油差しを鼻に突っ込むようなヤカラ御用達の店なんざ、誰が行くか」

 

 

 

 

 

俺「そうだな。バカやクズと交わらない人生を送るのは大切だからな。外食産業には悪いけど、使わずに済ませられれば、それに越したことはない」

 

娘(19)「コメダは許してあげなよ」

 

俺「そうだな。あそこは逆写真詐欺するから許す」

 

嫁ちゃん「それにな。この寿司は美味い。サーモンも、タコも、イカも、ブリも、ホタテも、エビも、最高に美味い。マグロだけはそうでもないが」

 

俺「タコ~?」

 

娘(19)「パパ、タコ嫌いだもんね。でも私が食べるからいいよ」

 

嫁ちゃん「試しに食ってみ。目から鱗やで」

 

俺「タコ~?」

 

嫁ちゃん「ほれ、ほれ」

 

俺「じゃあ……うおお! なんだこれ! 柔らけえ!」

 

娘(19)「あーあ、タコに目覚めちゃったよ」

 

俺「こんなに美味かったのか! 今まで食わなくて損した!」

 

嫁ちゃん「よそのビニールみたいなタコとはちゃうやろ?」

 

俺「本当だ! これは美味い! 下手したらイカより好きかも!」

 

娘(19)「えー、困るよ。タコ食べないで」

 

こうして月曜日の夜は更けていくのだった。

 

あ、透析行かなくちゃ。

 

 

 

 

 

火曜日。

 

俺「何だこりゃ!」

 

ちび(8)「せんしゃ」

 

 

俺「何で戦車!?」

 

嫁ちゃん「ティッシュが切れてきたもんで、楽天でダース買いしたんや。したらこのでかい箱で来た。それを見たちび(8)が工作に使うちゅうもんで、くれたった」

 

俺「それがこれ……?」

 

ちび(8)「しゅほうもあるし、まどもつけたよ!」

 

俺「いや……ちょっと、これは……シンプルすぎないか? 主砲も貧弱だし」

 

ちび(8)「いいの! これからどんどんかいぞーしていくから!」

 

俺「メタルマックスかよ」

 

 

俺「おもしれえ! いったいいくらくれるってんだ!」

 

ちび(8)「100000G」

 

俺「そんなたいきん うけとれるか! バカヤロ!」

 

ちび(8)「1G」

 

俺「そんな はしたがね うけとるきにも ならんわい!」

 

ちび(8)「かおを みにきた」

 

俺「ばっ バカヤロ! このヤロ! おまえはな かんどうされてんだぞ わかってんのか!?」

 

嫁ちゃん「メタルマックスごっこはもうええ。それより、ちび、あれ見せんのか?」

 

ちび(8)「そーだそーだ、これみて!」

 

 

ちび(8)「なんにみえる?」

 

俺「キャベツ」

 

ちび(8)「あたりー!」

 

嫁ちゃん「図工で作ったんやと。なかなか上手いやろ?」

 

ちび(8)「ざいりょうは、しんぶんしだよ」

 

俺「へえー。よくできてんな。確かにキャベツに見えるわ」

 

手を洗い、服を脱ぎ、部屋着に着替えて居間に座る。

 

嫁ちゃん「あと、これ、来とったで」

 

俺「おお!」

 

 

嫁ちゃん「2万円するやつは評価はええが、ちょっと高くて手が出なんだ。で、初めてだし、とりあえず9,800円のにした」

 

これはハンドマッサージ機なのだが、これで指先を揉みほぐすと血行が良くなってシャントにもいい影響があると、どこかで聞いたので、買ってみたのだ。

 

俺「早速やってみるね」

 

嫁ちゃん「おお。やってみ」

 

俺「お、おお……おおお! 気持ちいい!」

 

娘(19)「なになに? 私にもやらせて!」

 

俺「いいよ」

 

娘(19)「こりゃいい! 今日は事務仕事で手が疲れたと思ってたけど、これやったら手が軽くなる!」

 

俺「あ、お前はそういう使い道があるわけね。俺はシャントの血流を良くするために使うけど」

 

娘(19)「これ、ちょうだい」

 

俺「ダメだ。上に持っていくのは許さんぞ。ここに置いておくから、使いたい時にはここで使え」

 

娘(19)「えー」

 

嫁ちゃん「みんなで使えばええやろ」

 

ちび(8)「ぼくもやりたい!」

 

俺「お前は骨が歪むと困るからやめておけ」

 

ちび(8)「ちょっとだけ!」

 

俺「じゃ、ちょっとだけな」

 

ちび(8)「うーん、あんまりきもちよくないなー」

 

俺「お前は若いから使う必要はない!」

 

などと言いつつ、夕食は麻婆豆腐をいただいた。


 

 

 

 

嫁ちゃん「そういえばな」

 

夕食を終えて、子供達が二階へ行ってしまった後、茶を啜りながら夫婦の会話。

 

嫁ちゃん「あのちび(8)、かなりの戦略家やで」

 

俺「何で?」

 

嫁ちゃん「給食のおかわりで、まんまとカボチャプリンをせしめおった」

 

俺「給食のおかわりかー。懐かしいなー」

 

あれは昭和50年頃のこと。

 

当時は牛乳を飲まない子がクラスの半分以上いた。

 

教室の隅に置かれた黄色いボトルクレートに残っている新品未使用の牛乳を、俺は教師の許可を得て飲みまくっていた。

 

twitter.com/rikachan0709jks/status/1465970515542036482より転載

 

同じクラスの強敵(と書いて友と読む)が挑戦してきたので、受けて立った。

 

まるでテキーラのショット勝負のように1本ずつ一気に空け、1回の給食で10本近くの牛乳を飲み合った。

 

時には飲み過ぎてドリフのコントのようにリバースし、烈火のごとく怒り狂った教師に叱られて掃除をさせられた挙句、午後は廊下に立たされた。

 

おかげでぐんぐんと背が伸び、中学に入る頃は180近くになっていた。

 

俺「おかわりって、今の時代にもあるの? 俺達の時代は塩もみキャベツと牛乳以外は残らなかった記憶があるけど」

 

嫁ちゃん「あるで。休みの子はもちろん、偏食や小食の子もおるから、毎日4、5人分は余るらしい」

 

俺「で、何が戦略家だって?」

 

嫁ちゃん「ちび(8)の学校は、おかわりがライフ制になっとるんやと。たとえば最初に10ライフ持っとって、おかわりするごとにライフが減る。しないと増える」

 

俺「ほうほう」

 

嫁ちゃん「で、それは全部担任の先生が管理しとってな。おかわりをしようと手を挙げると『今日は君よりライフの多い子が手を挙げている。だから彼を優先しよう』と言っておかわりができん」

 

俺「なるほど。それは公平で、いいルールだな。いつも同じ子がおかわりばかりしていたら、不公平だもんな」

 

嫁ちゃん「その、いつもおかわりばかりしてる子が、あんたの子じゃが」

 

俺「おおう……」

 

嫁ちゃん「でな。ここが面白いんやけど、ライフが多い方が優先的におかわり権を持つ。ということはどういうことが起こるか。ライバルのライフを把握して、ここぞというメニューの時に出し抜く必要があるんじゃ」

 

俺「なんだ、その、カイジみたいな発想は」

 

嫁ちゃん「カイジやのうて、一条やな」

 

Ⓒ上京生活録イチジョウⒸ講談社ⒸモーニングKCⒸ萩原天晴/三好智樹/瀬戸義明/福本伸行

 

嫁ちゃん「思考はまんまカイジやで。うちのちび(8)は、おかわりしたいと思っても、それが大して魅力のないおかずの場合、ライフを減らしたくないため我慢する。そしてライバルがどうでもいいおかずのおかわりでライフを消費するのを虎視眈々と待ちつつおどれはライフを稼ぎ、ここぞというおかずで優先的におかわりを果たすんじゃ。今日のカボチャプリンは、やつの数週間の血と汗の結晶や」

 

俺「はへー。あいつは毎日そんなバクチ打ちみたいなこと考えながら学校に行ってんのか?」

 

嫁ちゃん「いやいや、あんたはそないに軽くあしらうが、これは大事なことやで。ライバルがつまらんおかずでライフを浪費したのをその目で確認し、脳内でライバルのライフがいくつになったか計算する。そして自分との差を確認し、数日後の本命デザートのおかわりを優先的に受けられる確率を少しでも高める」

 

俺「疲れる人生だ……」

 

嫁ちゃん「やつにとってはゲームみたいなもんやろな。で、面白いのが、やつに言わせると、何も考えとらん友達が大半やと」

 

俺「そりゃそうだろ」

 

嫁ちゃん「何も考えずに『おかわりおかわりおかわり!』と手を挙げて先生から『君はおかわりはできないよ』と言われる子が、ぎょうさんおるらしいで」

 

俺「そんなことで賢く立ち回ってもなあ」

 

嫁ちゃん「で、うちのちび(8)は、無策無能な彼らを手のひらで転がしつつ、美味しいデザートを漏らさず堂々ゲットしているちゅうわけや。〇〇くんはライフいくつだから敵じゃない、〇〇くんはライフが1つ上だから、彼が1回おかわりしてぼくが何もしなければぼくが有利になる、なんて」

 

俺「いいのか、悪いのか……」

 

嫁ちゃん「今のやつの目標は、2か月近く後のクリスマス給食や。やつはクリスマスの特別メニューに出てくるケーキに照準を合わせとる。あれを落とすにはどうしたらええか、毎日給食のメニュー表を見て考えとる」

 

www.kitashitara.jp/damine-el/2016/12/post-697.htmlより転載

 

 

俺「そこまですることじゃないと思うが……」

 

嫁ちゃん「ええやないか。何も考えんと適当に生きて穴に落ちるより、人生を少しでも楽しもうと頭を使うことは悪いことやないで。あんたもちっとは見倣え」

 

俺「俺は、ちゃんと考えて生きてる」

 

嫁ちゃん「ならええが」

 

 

 

 

 

つらつらと出来事を書いてきたが、相変わらず我が家は平和である。

 

その理由は、多分↓これ。

 

 

くだらん会話が毎日あるだけで、家庭は温かいものになる。