月曜日。

 

今日も透析に行くまでの間、AIに挑戦。

 

どうしても今日中に遊園地での撮影を終わらせたい。

 

というか、終わらせて、AIから少し離れたい。

 

俺「今日は観覧車とコーヒーカップに挑戦する。で、一応これで遊園地シリーズは終了。次は未定」

 

嫁ちゃん「遊園地には、他にもアトラクションはまだまだあるで」

 

俺「いや……ちょっと休みたい……」

 

嫁ちゃん「せやな。ここ2週間ばかり、毎日やったからなあ。次はもう少し根詰めずにやれや」

 

俺「せっかく高いグラボを買ってもらったから、使わないともったいないと思っちゃったみたいだ。AIをいじるのは決して嫌いじゃないんだけど」

 

嫁ちゃん「あんたが好きでやっとる分には応援するが」

 

俺「うん……だけど、ちょっとペースを落としたい」

 

嫁ちゃん「それがええで」

 

ちび(8)とゲームもやりたいし、シナリオも書きたい。嫁ちゃんのマッサージもしてあげたい。

 

最近のちび(8)の日記にも「パパはAIばっかりやってる」と書かれちゃったし。

 

 

 

 

 

嫁ちゃん「観覧車は『Ferris wheel』ちゅうらしい。開発したフェリスさんの名前からそう呼ばれるようになったとか」

 

俺「へえ。それは知らなかった。では早速……『フェリスホイールに乗ったおねいちゃん』で」

 

 

嫁ちゃん「まーた、乗っとらんなー」

 

俺「変な円盤の上に立っているけど、これ、ひょっとしてホイールのつもり?」

 

嫁ちゃん「観覧車はずーっと向こうの方にあるで」

 

俺「んじゃ、いつも通り横長にしてみるか。まずは縦横比1:2で」

 

 

 

 

嫁ちゃん「乗る気さらさら無さそうやで、このおねいちゃん」

 

俺「ぐぐぐ……プロンプトには『フェリスホイールに乗ったおねいちゃん』と書いたんだが、これじゃだめか」

 

嫁ちゃん「『フェリスホイールのゴンドラに乗ったおねいちゃん』にしてみたらどうやろか?」

 

俺「お! それいただき!」

 

 

嫁ちゃん「うむ。確かに何かには乗っとるようや。やが、観覧車には近づこうともせん。むしろ遠ざかっとる」

 

俺「ゴンドラじゃだめなのかな?」

 

嫁ちゃん「キャビンという表現もあるらしいで」

 

俺「キャビンか。なるほどな」

 

 

俺「ぐはあ! 増えるのは勘弁だ! トライアゲイン!」

 

 

俺「キャビン……というか、観覧車のゴンドラはくっきり見えるようになったけど、それだけだ」

 

嫁ちゃん「乗らんなあ」

 

俺「それじゃ、伝家の宝刀、縦構図で出してみる」

 

嫁ちゃん「期待できんと思うで」

 

 

嫁ちゃん「ほれみ」

 

俺「キャビンに乗っているようにすら見えない……」

 

嫁ちゃん「もっと縦長にしたらどうなる?」

 

 

俺「だめだ。何か妙なものには乗っているけど、観覧車は遥か後方だ」

 

嫁ちゃん「もっと縦長にしてみい」

 

 

嫁ちゃん「顔は変わってもーたが、確かに乗っとるで。足場の悪い何かに」

 

俺「すげえプロポーションだな。モデルみたいだ。足も長いし」

 

嫁ちゃん「モデルやろ、AIの」

 

俺「あ、そうか」

 

嫁ちゃん「ホイールはかなり近くに出るようになったが、結局は乗らんのやなー」

 

俺「それじゃ、無駄なあがきで、これをそのまま横倒しにしたらどうなるか」

 

 

嫁ちゃん「まあ、そうなるわな」

 

俺「観覧車はかなりいい感じに表現されているんだけどなあ」

 

嫁ちゃん「乗ってくれんのなら、仕方ないやろ」

 

俺「よし、それじゃ最後の挑戦だ。『フェリスホイールにぶら下がっている小さなゴンドラまたはキャビンの中のシートに座ったおねいちゃん』でどうだ」

 

嫁ちゃん「無茶や。そんなプロンプトが通るとは思えん」

 

 

俺「ぎゃあああ!」

 

嫁ちゃん「これ、おねいちゃんの無言の抵抗ちゃうか?」

 

俺「3体に分身したのは初めてだ……ああそうか! そういうことか! そんなに観覧車に乗るのが嫌なのか!」

 

嫁ちゃん「何を怒っとる」

 

俺「貴様それでもプロか!? プロのモデルなのか!?」

 

嫁ちゃん「プロちゃうで。ただのデータや」

 

俺「次はまともなやつ、来い!」

 

 

俺「違う……」

 

嫁ちゃん「でも、高いところには移動してくれよったで」

 

俺「観覧車のゴンドラじゃない……」

 

 

俺「違う……」

 

嫁ちゃん「急に中国風の背景になりおったな」

 

俺「もうやだ……」

 

 

俺「おお!これは!」

 

嫁ちゃん「観覧車のゴンドラには見えんが、今までで一番それっぽいな」

 

俺「50枚出してこの程度……しかも手の指が逆……やってられん……」

 

嫁ちゃん「ジェットコースターに続いて2連敗やもんな。しかし、言うておくが、次はもっと難関やで」

 

俺「え? 何で?」

 

嫁ちゃん「まあ、とりあえず観覧車の方をまとめろや。で、これでも飲んで気持ちを切り替えろ」

 

嫁ちゃんがレモンスカッシュをくれるので、それを飲みながら気を静める。

 

 

 

 

 

 

嫁ちゃん「休憩できたか?」

 

俺「できました」

 

嫁ちゃん「で、今日の2つ目のお題は何やった?」

 

俺「コーヒーカップ。くるくる回るアレ」

 

嫁ちゃん「あれは正式には『ティーカップライド』言うらしいで」

 

俺「へえ。そうなんだ。それじゃプロンプトは『ティーカップライドに乗ったおねいちゃん』でやってみよう」

 

 

俺「えっ!?」

 

嫁ちゃん「ほらな。絶対こうなる思うた」

 

俺「ティーカップライドはどこ?」

 

嫁ちゃん「多分やが、AIは『ティーカップ』という一般名詞の方を再現しとる。これが恐ろしかったんや。『メリーゴーラウンド』や『ジェットコースター』のように、ある物をはっきりと指し示す名詞なら問題はない。やが、こんなふうに『ティーカップを模したぐるぐる回るアトラクション』を『ティーカップライド』と呼んでも、AIには通じんやろ」

 

俺「そうすると……『フリーフォール』とか『バイキング』とか『マジックカーペット』とか、あの手の名称のアトラクションは軒並み全滅ってことか?」

 

嫁ちゃん「それぞれ、自由落下、北欧の海賊、不思議な絨毯、という感じで絵を作るやろうな」

 

俺「なるほど……でも、もう1回だけ出してみる」

 

嫁ちゃん「気が済むまでやれ」

 

 

嫁ちゃん「雑学やが、あれはコーヒーカップやのうて、ちゃんとしたティーカップや。AIはその点はちゃんと表現しとる」

 

俺「え? ティーカップとコーヒーカップって違うの? 両方ともただの瀬戸物のカップじゃないの?」

 

嫁ちゃん「ええか、よく聞け。コーヒーカップは上から下まで同じサイズ、つまりは寸胴じゃ。ティーカップは下部がすぼんでて、口の部分が大きく開いとる」

 

俺「へえ! そうなんだ! でも、なんで?」

 

嫁ちゃん「コーヒーは沸騰した湯は使わん。好みにもよるが85から95℃前後のお湯で淹れる。しかし紅茶は沸騰したお湯で淹れるから、そのままでは熱くて飲めん。早く冷ます必要があるんや。だから上側が広くなっとる」

 

俺「初めて知った……」

 

嫁ちゃん「うちはな、ダテにボンマックのコーヒーミルを持っとらんで。ダテに豆を専門店から買っとらんで。ダテにドリップ式メーカーを使っとらんで」

 

俺「そうだね。お前はコーヒーが好きだもんな。『僕はコーヒーが飲めない』っていう漫画読んでうなずいてたもんな」

 

 

嫁ちゃん「せや。ついでだから言うが、〇〇〇〇〇〇〇のコーヒーをうまいうまいと言って飲んどるやつは救いがたい舌馬鹿や。あんな泥水のどこが美味いんや。医者行って舌苔毟ってもらってこんかい」

 

俺「上の漫画の主人公じゃないんだから、ここでわざわざ有名なコーヒーショップをdisらなくていいよ」

 

嫁ちゃん「ヤツらはコーヒーを飲んどるんやない。情報を飲んどるんや」

 

俺「ああ、今度はあれか。あのラーメンハゲの名言ね。芹沢達也」

 

Ⓒラーメン発見伝Ⓒ河合単Ⓒ久部緑郎ⒸビッグコミックスペリオールⒸ小学館

 

 

 

 

 

俺「ま、それはもういいよ。で、AIがティーカップをちゃんと認識して表現しているのは理解した。問題はこのワードが遊園地のアトラクションじゃなくて、ただのティーカップとして認識されちゃうことだ」

 

嫁ちゃん「アトラクションの方には『ティーカップス』という呼び名もあるらしい。一度にいくつものカップが回るんで、複数形にするんやと」

 

俺「へえ。それじゃそれでやってみる。『ティーカップス・ライドに乗ったおねいちゃん』でどうだ?」

 

 

俺「どういうこと!?」

 

嫁ちゃん「2つ持っとるな。両手で」

 

俺「それじゃ、縦にしたらどうなる?」

 

 

 

なんかフツーにお茶してるし

 

 

ブリリアントな午後ですかそうですか

 

紅茶淹れてくれてるんですねありがとうございます

 

嫁ちゃん「最後はティーサーバーまで出てきおったか。やるなAI」

 

俺「全然だめか……よし、ここは発想を変えて……ちょっと強引だけど『大きなティーカップに入ってくるくる回るおねいちゃん』『遊園地のアトラクション』でどうだろう?」

 

嫁ちゃん「いやー、それは無茶やで。想像つくで」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺「ぎゃああ!」

 

嫁ちゃん「ほれ、うちの予想通りや。おねいちゃんをでかい紅茶カップに漬け込んでどないするねん」

 

俺「た、縦……縦にすれば……」

 

 

俺「のおおぉ!」

 

嫁ちゃん「紅茶カップにドボンと入って紅茶カップを持ったおねいちゃんか。シュールやな」

 

俺「もうだめなのか? これは何をどうやってもだめなのか?」

 

嫁ちゃん「気が済むまでやってみい」

 

 

やっぱりティーカップ持ってる

 

ティーカップ2つ?

 

ティーポット出してきた……

 

あーあーお茶会セットを並べてる

 

今度はアイスティー?

 

それ、ビールでしょ!?

 

やだーすごいくつろいでる(怒)

 

俺「撃沈」

 

嫁ちゃん「な? 無理やったろ?」

 

俺「もう……今日は、やめる……」

 

嫁ちゃん「おねいちゃんが最後に紅茶くれるそうやで」

 

俺「どもありがと」

 

 

 

 

 

 

今日の作業ではっきりわかったのだが、AIには限界がある。

 

ジェットコースターや観覧車、ティーカップライドにすら乗せられないのなら、ゲームや映画などのコンテンツに利用する画像の生成なんか、とてもできない。

 

せいぜい、適当にボタンを押して出てきたそれっぽい写真をまとめて「おねいちゃんの写真集」なんて銘打ってKindleに公開して、データの価値を勘違いしているアホ相手に売って小遣い稼ぐ程度にしか使えない。

 

偶然の産物を、ただまとめただけ。

 

そんなものはコンテンツとは呼べない。

 

コンテンツクリエイターがモノを作りながら常に考えている「何を表現したいのか」という意思が皆無の、ただAIが無造作に吐き出しただけの、データの集合体。

 

そんな画集や写真集に何の意味がある?

 

小説、映画、アニメ、ドラマ、漫画、写真集、グラビア、ゲームに3Dフィギュア。

 

どの作品にも必ず明確なテーマとコンセプトがあり、クリエイターはオーディエンスやプレイヤー、コレクター達にそれを伝えようと必死になって、モノを作る。

 

それに対して、昨今ネットでよく見かけるようになってきた、どうでもいい日常がダラダラ書かれただけの下手くそな漫画。

 

主婦が暇な時間に片手間で書いたような、ストーリーも起承転結もない、ただのママ友とのやり取りや、旦那の不倫、子供のいじめや発達障害など、誰得な内容を絵心もろくにない人間が自己顕示欲の発願に従って書いたアフィ釣り用の落書き。

 

あれらが、まったく心に響かないのと同じことだ。

 

一度は間違って読んでしまっても、その後を続けて読みたいとは思わないし、わざわざ金を出して買うなんてあり得ない。

 

ああいう片手間漫画家は今でもネット上では物凄い勢いで増殖しているし、このアメブロにもうじゃうじゃいるが、それに加えて庶民に手が届くAIが登場したことによって、まともなテーマもコンセプトも描けない、他人に語るものも伝えるものも持たない半端な似非者が、道具に頼ってダラダラ作品を作る時代になる。

 

富野由悠季や宮崎駿みたいな骨のある嫌われ者のクリエイターは舞台から去り、これからは有象無象に毛の生えた雑魚クリエイターが賞味期限たった数日のゴミコンテンツを大量生産する時代になる。

 

音楽業界がいい例じゃないか?

 

中島みゆきは48年、ユーミンは51年、嫁ちゃんの好きなスターダストレビューは結成から44年、俺の好きなタッカン率いるラウドネスも結成から42年だ。

 

なのに最近の音楽業界を見ていると、彗星のように登場して彗星のように去っていくミュージシャンが目立つような気がする。

 

ま、俺の知ったことじゃないが。

 

それはそうと、むめい氏は天才である。上述の片手間漫画家とは100も200も次元が違う令和のマチスであり、アンソールである。こういうセンスを持つ人を本当のクリエイターと言うのだ。氏にはもっとブレイクしてほしいと切に願う。

 

 

 


 

 

AIは道具。

 

道具を使うのは人間。

 

賢く使うか、愚かに使うか、それを決めるのも人間。

 

メリーゴーラウンドの画像を作るのには使ってもいいが、ティーカップライドの画像を作るのに使わなければいいだけの話。

 

そうするとやはり、AIの限界を目利きする力が、人間には必要になる。

 

AI万能とか、AIは神とか、そういう低次元の認識しかできない連中には到底到達できない次元の話になるだろうが、道具の持つ効果を正しく知り、それを最も効果的に使う方法を模索するのが、人間の成すべきことだと再認識できた。

 

ChatGPTも同じで、一過性の熱が引いて興味の失せたミーハー連中は口の端にも上げなくなってきたが、あれを仕事用の道具としてガンガン活用している人間もいる。


もちろん俺も。

 

GPTを使ったなんてわざわざ公言せず、こっそりと自分の仕事に活かし、時短し、余った時間でサボる。

 

道具ってのは、そうやって使えればいい。それだけのことだ。

 

だが、ジェネレーティブAIについてはコントロールしきれているとは言えないので、これからも時々は精進する。

 

通算成績(5戦1勝3敗1引き分け)

 メリーゴーラウンド・・・〇

 ジェットコースター・・・×

 パイレーツシップ・・・・△

 観覧車・・・・・・・・・×

 ティーカップライド・・・×