火曜日。

午前中は出勤し、午後から透析。

久しくタイムテーブルを書いていないので、復習の意味で、以下に透析のある火木土の動きを記す。

12:30 退社
13:45 家に着く・昼食
14:45 エムラを塗る
15:15 家を出る
15:30 クリニックに入る
15:40 透析開始
20:50 返血完了
21:00 止血完了
21:05 クリニックを出る
21:20 家に着く・夕食



今日の穿刺はニッキー。

二「今日は新しい場所を開拓してみましょうか」

またニッキーが挑発してきたぞ。

俺「新しい場所って?」

二「穿刺ポイントです。同じところばっかり刺していると皮膚がボロボロになっちゃいますし、たまには新規ゾーンを開拓してもいいかな、と」

俺「そういう人体実験は大好きです。どんどんやっちゃってください」

と安請け合いしたのが運の尽き。

返血側はそのままで脱血側を新規開拓したのだが、これがまた、痛くて。

俺「あああ! 痛い! 痛い!」

二「穿刺時にそれほど痛がるとは、ここには神経がありそうですね」

俺「痛い! 痛い!」

二「うーん、ここは失敗だったかな?」

俺「おいこら!」

二「どうしても我慢できなかったら言ってください。針先を調整しますので」

俺「ううう……」

チクチクではなく、ズキズキ。

いやー、これはきついぞ。

こんな痛みに透析の間中ずっと襲われていたら、そりゃー透析なんか嫌いになっても仕方がない。

しかし、今更「人体実験やーめた」とも言えない。

言い出したのはニッキーでも、安請け合いしたのは俺。

つまり俺の責任。

俺「こうなったらもう仕方がない。どうやって5時間を乗り切るかを考えよう」

まずは寝てみる。

時々ズキズキが「ぴきーん!」と痛くなって目を覚ましたが、それでも何とか2時間は過ごせた。

しかし、2時間を過ぎると目が冴えて眠れない。

俺「よし、次だ。ここは音楽を聴いてごまかそう」

痛みを紛らわせるために、JudasPriestのPainKillerをフルで聴く。

アルバムタイトルもシチュエーションにぴったりだし。

これが意外とイケて、約45分、痛みをそれほど気にせずに過ごせた。

しかしまだあと2時間まるまる残っている。

眠れない。

音楽ももう聴き飽きた。

しかし、この状況下で映画を鑑賞するのは無理がある。

痛くてそれどころではない。

仕方がないので昨日のブログの原稿を書くことにした。

これで1時間はつぶれた。

残り、あと1時間。

うー。

何をして過ごせばいいのだ。

痛くて気が散るので他人のブログなんか読む気も起きないし、かといって寝るのも、音楽も映画も無理。

仕方がないので妄想を開始する。



砂漠の中央に立っている。

砂嵐が吹きすさび、足跡もすぐに消えてしまう。

どっちに向かえば町があるのか。

いや、そもそも町なんか存在するのか。

腰に下げた水筒の水はあと少し。

オアシスを探さねば。

砂丘を上り、下る。

眼下に広がるのは、ただ、砂。

赤茶けた砂の丘陵がひたすら波打ちながら、はるか地平線まで続いている。

このままあそこまで歩けるだろうか。

それとも途中で水がなくなり、倒れてしまうのだろうか。

暑い。

 

そして砂も熱い。

 

ギラギラと照りつける灼熱の太陽に、体中の水分が揮発していく気がする。

 

ああ……こうして脱水で死ぬんだな……

……などという自虐的な妄想を続けていたら、終了15分前のメロディ。

よし、ここまでくれば俺の勝ち。



終了前の薬を入れに来てくれたのは、技師のもっちー。

一応容姿を書いておくと、小柄で可愛くて、くりくり目に眼鏡、短いポニテ。

俺「あ、もっちーさん。今日はつらくて長い透析でしたよ」

も「どうして?」

俺「かくかくしかじか」

も「あらー。それは大変でしたね。でも、痛いなら言わなくちゃだめですよ」

俺「自分で蒔いた種なので、どこまで耐えられるか試してみました」

も「刺す場所によって痛みが出るか出ないかは、はっきり言って運ですからねー」

俺「そうなんですよ。こんなにつらい血管痛があるということを知れて、またレベルアップできました」

も「だけど、わざわざ痛いのに耐える必要はないですから、次からはちゃんと言ってくださいよ」

俺「うい」

というわけで、地獄の5時間耐久、無事に完了。

でも次にもし同じようなことがあったら、今度こそ耐えられる自信はない。

やはり穿刺場所は何度も刺されて慣れているポイントがいい。

新規開拓はもうやだ。

(遊んでねえで透析ちゃんと受けろや>自分)