今日は前から楽しみだった、オンラインHDF移行の日。
予定時刻ぴったりに入り、4分で準備してベッドに横になっていたら、誰かの声。
看「誰か~!(俺)さんの穿刺お願い~!」
おっと。あまりに早く準備ができてしまい、結果としてスタッフに穿刺を急かしてしまったらしい。
すぐに対応してくれたらしく、結局この日はチームの人ではない(?)初めての女性技師さんが急いでやってくると、穿刺してもらった。
この人も、先日のプロ魂の人と雰囲気が良く似ていており、無駄なことを言わない上に、A側もV側も針の頭を具合のよい位置に入れてくれたので、穿刺痛はほぼ皆無。
その後、なぜか看護師さんがやってきて。
看「(俺)さんはいつも何時頃に入ってますか?」
俺「2分前に入館して、体重を測って、ほぼオンタイムでベッドに就きます。そこからPCなんかの用意をしてます」
看「ああ、なるほどねー」
俺「ひょっとして、早く入っちゃまずかったですか? 〇時には入れるって伺っていたので、それを守って来たんですけど」
看「いえ。まずいことは全然ないんです」
と言って去っていった。
じゃあ何なんだ?
今日の様子を見ている限りでは、こっちの準備が早すぎるのかもしれない。
と思ったが、早く着いてこっちが待っているのは問題ないはずなので、不問にする。
技師さんが来るまでの間、こっちはベッドに横になりながら音楽聞いてるだけだし、ナースコールを押して「準備できたから穿刺しに来て! 待たせないで!」なんて言ったことは一度もない。
まあ、次に何か言われたら、センターに入る時間を遅らせるなど、できる対応はすることにしよう。
さて、今日はお待ちかねのオンラインHDF。(さっきも言った)
シャントを造った時くらいに透析に関してはいろいろと勉強したつもりだが、やはり実際にやってみるとわかることがたくさんある。
だから改めてHDとHDF、オンラインとオフラインの違いについても勉強し直してみた。
【HD 血液透析】
拡散という現象を利用した除去方法。電解質や尿素などの小分子を除去しやすいが、大分子は拡散しづらいため除去しにくい。
【HDF 血液濾過透析】
ダイアライザーを通す血液に補液を加えることで、拡散現象で浸透膜を通過しにくかった大分子も除去する方法。
【オフラインHDF】
補液をパックで供給する方法。
【オンラインHDF】
ダイアライザーの血液とは反対側の部分を流れる透析液を補液として使う方法。オフラインと比べて大量の濾過ができるが、補液の水質管理は必須。
で、以前オンラインHDFへの移行を勧めてくれた技師さんの話を思い返してみると、このクリニックは前希釈方式らしい。
はっきりと確認しておかなったので、今度会えたら聞いてみようと思うが、ついでに前希釈と後希釈の違いも調べておいた。
【前希釈】
透析中の血圧安定度が高く、アルブミン流出が少ない。また痒みを生じさせにくい。日本で主流。
【後希釈】
除去効率が良いが、その分アルブミンの流出も多くなる。透析アミロイドーシスになりにくくなる。海外で主流。
うーん。これはよくわからん。
前希釈は、ダイアライザーに通す前の血液に補液を加えて圧を高めた状態でダイアライザーに通し、濾過と拡散を行う様子がイメージしやすい。
でも後希釈の方は、ダイアライザーを通過した血液に補液を加えることで何がどうなるのか、想像しにくい。
ま、俺自身がMEになるわけじゃないから、いいや。
改めて思うが、こんなことを学んで仕事に活かせる医療従事者の皆さんって、みんな頭がいいんだなーと思った。
俺には絶対に無理だ。
さて。
無事にオンラインHDFを5時間完走した結論は、以下。
「うーん、あんまり違いがわかんない」
「いや待て。なんだこの疲労感は。HDより疲れたかもしれん」
「抜針が終わった後、起き上がったら体がふらふらする。これって栄養分を抜かれたからなのか?」
「そういえばやたらと腹が減ってるなー。HDの時より明らかに空腹感が強いぞ。バカ食いしたい!」
という感じ。
除水プログラムは例の三段変速で行ってもらったため、終盤の胸苦しさはそもそも生じなかったし、穿刺痛はHDやHDFとは関係がない。
何がどう変わったのか、肉体的には「栄養素を抜かれまくったので腹が減った?」という変化以外は感じられなかった。
ちなみに今日の技師さんと看護師さんは、誰もが無駄話をしてくれる人ではなかったので、細かい話が聞けなかったのが残念だった。
まあ、患者があんまり賢くなるのもどうかと思うが。
賢くなるのはいいが、うるさくなるのはダメだ。
なのに、勉強して賢くなったつもりのやつは、だいたいその後にうるさくなるから、始末に負えない。
素人の分際でプロの領域に首を突っ込み、ネットで仕入れた知識を振り回してプロに噛みつくやつもいるらしい。
本人は向上心をもって行っているのだろうが、プロからしてみればいい迷惑だ。
というわけで、この知識についてはほどほどに学び、話してくれる技師さんがいたら聞いてみることにしよう。
こちらはお願いして命をつないでもらっているのだし、『医療従事者だけでなく周囲に余計な面倒を掛けない良い患者』でいなければならないのだ。
生かされているという感謝を忘れ、己が権利ばかり主張し、優しくない対応をされると途端に世間に恨みつらみの呪詛を放つ、人間として見苦しい連中。
他人への感謝を忘れては、「このクソ社会! もっと私に優しくしろよ!」と大声を出して我がままに生きるような、あんなみっともない存在になりたくはない。
(HDとはまた違った画面になった↓)
帰宅して。
チビ(7)が起きていたので、話す。
俺「よーチビ。今日はすごい日だって知ってるか?」
チビ「なに?」
俺「今日はな、皆既月食って言って、月が変なふうに欠ける夜なんだぞ。お化けが月を食っちまう夜なんだぞ」
チビ「ちがうよ。ちきゅうのかげが、つきにうつってくろくなるんだよ」
俺「何で知ってんの?」
チビ「がっけんの『うちゅうのひみつ』でよんだ」
俺「ちっ。知ってたか。それじゃ、もっとすごい話をしてやる。今夜はその皆既月食と惑星食が同時に起きるんだ。400年ぶりらしいぞ」
チビ「よんひゃくねん!?」
俺「おお。次に見られるのは4000年後らしいぞ」(←うそ)
チビ「みたいみたいみたい!」
俺「それじゃ、シャッター開けて縁側に出てみるか」
で、出てみたが、夜間透析終了後にこんな話をしても、もう終了時間。
俺「ほれ、ちょっとだけ欠けてるだろ?」
チビ「かけてない!」
俺「欠けてるじゃんか。左下の方、少しだけ」
チビ「かけてない! かけてない!」
俺「お、おい……」
チビ「おわっちゃった! おわっちゃった! う、うう……う……」
俺「……」
チビ「うわーん! うわーん! うわーん!」
チビ、大泣き。
そこに嫁ちゃんがすっ飛んでくる。
嫁「なんや! どないした!?」
俺「お、俺、何にもしてないよ」
チビ「うわーん! うわーん! うわーん!」
嫁「どした? な、言うてみ。何があった? パパに何された?」
チビ「げっしょく……」
嫁「なんや!?」
チビ「げっしょく……もっとまえから、みたかった……」
俺「そんなことで泣くか?」
嫁「かわいそうになー。見たかったなー。でもな、月蝕はまた来るで。惑星食は望遠鏡でもないと、どうせ見えんから気にすんな。で、あんた、次の月蝕はいつや?」
俺「知らん」
嫁「さっさと調べんかい!?」
俺「えー、3年後の2025年9月8日です」
嫁「ほーら、ぼん、よかったなぁ。あと3年すれば見られるで。あんたもその頃は10歳や。科学や宇宙にもっと興味が出とる頃やなー」
俺「いや……興味を失っている頃かと……」
嫁「おどれ! いらんこと言うな!」
俺(おくちチャック)
嫁「なー、ぼん。月蝕はその時までお預けにしとこーなー。よしよし、泣くな泣くな。月蝕ごとき見られへんでも死にゃせんでなー」
俺(子供って月食見られなくて泣くのか?)
俺(あ、俺も泣いたっけ? ガキの頃)