今回からタイトルを「ｎ日目」ではなく「ｎ回目」に変更。
さて。
前回途中で棄権した5時間透析だけど、原因が判明した。
ここのクリニックは全体的に職務に対する意識の高いスタッフが多いのだが、そんな彼らがチームで問題に取り組んでくれるためなのか、原因はすぐに究明された。
結論から言うと、血管が細いため脱血不良を起こしていた。
以下、技師さんとの会話。
技「あなたが気分が悪いと感じたのは気のせいでもなんでもなくて、実際にTMPの値がマイナスに振り切れている時でした」
俺「TMPってなんです？」
技「膜間圧力差。ダイアライザの血液側圧力と透析側圧力の差を表す数値です。ぼくは膜の目詰まりが原因かと思ったんですけど、違いました」
俺「？？？」
技「簡単に言えば、脱血が追い付かない状態だったんです。こうなる理由は、シャントを造ってからまだ日が浅く、血管が発達していないことが考えられます」
俺「おお」
技「で、今、調整を掛けたので、楽になったと思いますが」
俺「気のせいかもしれませんが、胸のつかえが取れた感じがします。重苦しさが消えた気がする」
技「それは気のせいではありません。ここの数字（TMP）がプラスになりましたから」
俺「深いっすねー、透析って」
技「まだまだ、こんなものではありません」
というわけで、3時間を過ぎたあたり（TMPがｰ20前後まで下がった）に胸部不快感が出た時、上記の技師さんに対処してもらったおかげで、急に胸が楽になり、その後は何もなく5時間を完走することができた。
終了間際に少しだけ値が落ちたけど、何とかゴールへ転がり込めた感じ。
透析終了後。
技「完走おめでとうございます。さて、ゴールに入られたここでひとつ、あなたに提案があります」
俺「と申しますと？」
技「別の透析方法に移行してみませんか？」
俺「それは？」
技「今あなたがやっているのがHDという透析ですが、これをHDF、オンラインHDFにしたいのです」
俺「何となく勉強したんですが、補液を追加して濾過を行う透析でしたっけ？」
技「よく勉強していますね。補液の種類によってオフラインとオンラインのHDFがありますが、あなたにはオンラインHDFをやってみたらどうかと」
俺「それは願ったり叶ったりです。いいことづくめだって勉強しましたから」
いいことづくめ
・毒素除去の効率が大きくアップする
・予後が改善されて長生きができるかも
・無尿になりにくい
・心臓などの循環器への負担が少ない
技「ですが、デメリットもあります」
俺「して、デメリットとは？」
技「透析効率が上がる分、栄養もごっそり抜いちゃいます。現代版吸血鬼」
俺「……（サキュバスか）……」
技「というわけで、オンラインHDFに移行したら、しっかりと食事をして、必要な栄養を摂ってください。特にタンパク質は良質のものをたくさんね」
俺「うっす」
技「移行準備の都合があるので来週からは無理ですが、再来週の火曜日から移行でよろしいですか？」
俺「断る理由がありません。お願いします」
維持透析に入って1週間で4時間から5時間へアップ。
2週間でHDからオンラインHDFへシフト。
何だかジェットコースターに乗っているみたいですごいぞ。
ちなみに、除水量は1300予定だったけど、血圧が全体的に高めな話をしたら、「500乗せて引きましょう」ということになり、1800を5時間で引いてもらった。
おかげで体が軽くなり、血圧も驚きの120台に落ち着いた。
ドライウエイトを厳しめに設定することで、結局は体が楽になるってことか。
看護師からも技師からも、「体重をあまり増やしてこられないので助かる」「ストイックで真面目ですね」と言われるが、決して無理をしているわけじゃない。
食事については、腎不全保存治療時からずっと作ってくれていた嫁ちゃんの手料理で大満足だし、食べ足りないと思うことも、外食で味の濃いものを食べたいと思うこともない。
水分についても、別にガブ飲みしなくても生きていけることに気づいたし、定期的に少量の水をチビチビ摂取して、一日に800ccほど飲んで満足できる。
酒やたばこ、外食の生活習慣がある人は大変だろうと思う。
透析ブログとして始めたのに、いつの間にかインスタによくある外食やスイーツの紹介ブログになっちゃうのも、仕方がないんだろうな。
ついでだから書いちゃうと、どこかのブログでは3から4kg、また別のブログでは5kg近く引いている話を聞いてびっくり。
それで体が持つのか本当に不思議。
俺の今までの最大除水記録は、DWをｰ500に再設定した今回の1800だし、その倍から、それ以上も除水するなんて、どんな感じなんだろうと思う。
帰りの車の中で、嫁ちゃんとの会話。
嫁「あんた、たまには一人になりたい言うとったやろ」
俺「え？ そうだっけ」
嫁「シナリオ書きたいのに、いつも家族と一緒で、書く気にならないと」
俺「でも、子供らやお前と一緒にいる方が楽しいから、いいよ」
嫁「それはそれとして、この透析という時間は、神様があんたにくれたプレゼントやと、うちは思う。否応なく一人ぼっちで、誰にも邪魔されず、好きなことができる。うちらは寂しいが仕方ない。一人になれる貴重な時間じゃ、有効に使え」
俺「うん。そうさせてもらうよ。今日もずっと文章を書いていたけど、あっという間の5時間だった」
嫁「そりゃええ。後ろ向きに受けても5時間、前向きに受けても5時間じゃ。せいぜい楽しんでくれ。ちなみに、今日の夕飯はグラタンじゃ」
俺「うれしいね。昼から何も食べてないから、さすがに腹減った」
嫁「ガソリン入れてから帰るで」
俺「お、おう」
めでたく完走の巻。
