書籍その285 令和6年-1 | ティータイム心和むクラシック音楽を聴きませんか

書籍その285 令和6年-1

「神仏と儀礼の中世」 舩田 淳一著 法蔵館 2011年2月発行

久しぶりの書籍紹介です(笑)。この前の土曜日から読み始めて内容の濃さ、情報量の多さに今までかかりました。なかなか疲れましたが楽しかったです。平安時代末の南都僧侶貞慶の笠置寺の活動を始め、高山寺の明恵、東大寺大仏復興運動の重源、真言律宗への影響、高野山、醍醐寺始め東密や神道書籍の成立との関連、葛城山も巻き込みながら複雑な仏教信仰空間の成立、興福寺南円堂と藤原摂関家の意識の揺れなど幅広く当時の戦乱に明け暮れてやっと訪れた平和?な社会での模索は現在に似た閉塞感からもがく姿も垣間見えると思います。この本が東日本大震災の直前に世の中に出た意味は13年経って生き始めたようにも感じます。歴史は人間の意識の奔流のほんのわずかな一滴とは思いますが、その分、後世のねじ曲げにより全面的に上書きされて違う姿で伝わることがたくさんあると思います。だからこそ、偽書や改竄も含めて多くの史料を踏まえて考えることが重要と思います。歴史は単なる記憶物ではないのは現在生きている私達の意識が100年後にたった数行で語られそれ以外の思いが切り捨てられる姿を想像すれば、その痕跡を積み重ね撚り上げることの大切さを理解頂けるかと思います。