地図のデータを呼び出し、画面いっぱいに表示させると二人へディスプレイが見えるように動かした。
山と山の間に横たわる深い谷の断面図。
そして谷を境に、山の色が赤と黄色に塗り分けられている。
「…早速アツいな」
一目で何処の地形か分かったアーリャは左頬を引き吊らせた。
頭に疑問符を並べるタイキは、ジッと画面を覗き込む。
「見ての通り、北側の国境だ」
「なるほど、アツいな」
やっと状況を理解したタイキは画面から顔を遠ざけた。
現在、アーリャ達が居る街の北。
二つの町と村を過ぎた先に国境の谷がある。
現在、独立を目指した紛争状態の国の端が接していた。
しかも、その谷こそは激戦区の一つでもあり、テロリスト排除というプロバガンダの為か、結構な数の軍隊が投入されている。
一見、アーリャ達が拠点にしている国は対岸の火事のように見えるが、実際は国境を渡り谷に隠れるテロリストを、どうしても狩りたい大国により圧力を受けている状況だ。
実際、非公式にPMC(民間軍事企業)を派遣して難を逃れている状況である。
「で…依頼主はキサルの姉貴?」
紛争の最中を行く依頼に、アーリャはトンと机を指で叩く。
青白い顔をオレンジ色の電灯に晒すジャンは、ニヤリと口の右側を引き吊り上げた。
「…ライバーだよ」
ジャンはパソコンを自分側に画面を向けて、何やらゴチャゴチャと操作を始める。
「まだ護衛一人かよ」
「どんだけ人件費節約したいんだ? …俺ら雇うよりは安いはずだぞ」
金額を指折り数えながら、ライバーの金銭感覚に呆れるタイキ。
そこに、ジャンがパソコンの画面を再び、アーリャとタイキに見えるように動かした。
今度は衛星写真で、所々にチェックポイントが書かれていたり、エリアが歪な丸で囲まれている。
「件のライバーの野郎は今、国境の丁度3キロ手前に野営しているそうだ」
ジャンはそう言って、赤のチェックポイントを後ろから指差す。
「まあ、国境手前ってのはいいが、どうも数時間後の早朝に、軍による大規模な掃討が行われるらしい」
「それで、連中はこっちに逃げ込んで来る…?」
「そういう事になる…俺は昼間にしろって言ったんだがな」
「前にも似たような事無かった?」
「…ヴィスカの件だっけ」
。