卜占解釈深浅問題 | 星詠みの庭

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東洋占術を中心にしたブログです

ちょっと前に

「五行易の要点」(佐藤六龍著 香草社刊)という

本を買いました。

本、と言っても全部で70ページに満たない冊子です。

 

その中で気になる記述がありました。

 

ざっと要約してみます。

 

古典、「卜筮正宗」の「十八問答」の中の

ある占例について

 

「商売の事を占って世爻を用神にしていた」

 

「商売占としては凶である」

 

「しかし、その依頼人は、後日、乗っていた舟が

ひっくり返って亡くなってしまった」

 

「商売を占ったが、易は生命の危険を示していた」

 

「これを軽きを占い(商売)、重きに応ず(舟の転覆)

と言う」

 

 

以上の事に対して、著者は疑問を感じて

こう言っています。

 

「商売の吉凶を占ったのに、

生死の吉凶が出る事は絶対にない。」

 

「おそらく読者を惑わす一つの手段であると

小生は考えます」

 

このように書かれています。

 

・・・確かに、質問した事に対する答え以外の要素が

はたして含まっているものなのか、

判断の難しい部分ではないかと思います。

 

無理矢理、拡大解釈をしてゆけばいくらでも

こじつけができてしまう、という

卜占の怖さがありますよね。

 

「五行易師弟問答」(藤田善三郎著 太玄社刊)

の第229 「再婚の可否の占」(依頼者男性)。

以下の卦です。

 

ある60代男性の再婚に関する占です。

諸口流納甲易を創始した諸口悦久氏の

解釈はこのようなものでした。

 

「世爻に兄弟を持つといえども、空亡なので

再婚する事はできる」

 

「しかし空亡が終わると妻財を剋す兄弟なので

長続きはしない」

 

「用神午火妻財は忌神の下に伏しており、

日の冲剋を受けている。

しかも応爻原神卯木子孫動いて辰土官鬼に化す。

これでは心身共に薄弱な奥さんをもらう事になるだろう」

 

「空亡だが世爻に兄弟を持つのは

あまり女性に縁のない人である」

 

「また、世爻に空亡では、この人の寿命も

さして永くはない事をあらわすのである」

 

そして、結果、

この男性は再婚はしなかったようですが、

三年後に亡くなってしまったのだそうです。

 

月日に旺じていても、空亡の要素をしっかり考えるのが

諸口流の特徴のひとつ、とも言えそうですが、

 

「再婚するとしたら心身ともに弱い女性をもらう」

「世爻に空亡で寿命も永くない」

 

この二つを言い切るのは普通は

難しいと思います。さすがは一派の創始者、と

いった所でしょう。

 

ここで、最初に挙げた「五行易の要点」著者

佐藤氏の言葉を反芻してみます。

 

「質問以外の答えが出る事はない」

 

これに対して真逆の占断を

諸口氏は下した事になりますね。

 

まぁしかし、三年後に亡くなる事が本当に

この卦に出ていたのだろうか、と思うと

ちょっと時間が経ち過ぎではないかな、という

気がしないでもないですが・・・。

 

また、おそらく、この占断は諸口氏自身が

依頼者と面と向かって下した占断ではないと思います。

(恐らく研究会などで挙がった事例)

 

 

さすがに再婚を占いに来た人に

 

「あなたはもう寿命そんなに永くないですね」

 

などとは言えない事でしょう(笑)

 

依頼者の帰りしなに、ひとこと

 

「ちょっと身体の事を注意してみては」

 

くらいな事なら大丈夫かも知れませんが。

 

 

まぁ、しかし、以上のように

ひとつの卦からどこまで読み取るのか、

難しい所ではあると思います。

出ている要素すべての可能性を追ってしまうと

先程も書いた通り、単にこじつけであったり、

根拠不明の占断になりかねません。

 

とはいえ本当は、そのひとつの卦の中に

依頼者にまつわる様々な情報が内包されているのだと

思いますけどね。

(というかそうであってほしい、という願望)

 

それら全てを正しく、間違わずに

読み解く事ができれば、まさに名人なのでしょうね。

 

まったく奥が深い。