『夏の終わり』 『夏の終わり』 瀬戸内寂聴 「慎吾が無意識に、距離感に左右されて、つい知子の新しい家を訪れることが億劫になるのも、知子が家の雑用や仕事に追われることで、あれほどの涙を忘れてしまっていったのもつまりは、生活という雑事と習慣の繰返しが、意外な強さで人間の感情や感傷を、のみこみ押し流していくせいなのかもしれなかった。そしてそれは知子に、慎吾とのかつての生活が、やはり、愛や情緒より、生活の習慣と惰性で保たれていたことを、今更のように思いかえさせていた。」 奈穂