物語の精霊よ。藤の血筋に育てられた娘よ。
咲玖耶(サクヤ)の神官に引き取られた娘よ。
そろそろ。起きなさい。みんな帰ってきたぞ。
そろそろあなたの出番が近い。ほら。
あなたのお友達がみんな首を長くして待っているよ。

 星の精霊もみんな待っている。
あなたはあの子を守る盾となるもの。
 精霊となった死者でありながら。
太母神の力を持つものとして。

完全に覚醒したばかりで、怖くて
ずっと泣いているあの子を助けてやっておくれ。
 あなたの魂の片割れが待っている。
さあ、今こそ鋼の城へと入れ。虹の泉を繋げよ。
道は太父神や太母神たちが力を合わせて
開いてくれるから。

 あなたは隠された古の王族の血統だから。
もうその事に気付いているんだろう。あなたは。
あなたならば、あの子と一緒に奥所まで入れる。
 あの子の母ではダメだ。王の血が混ざっていないから。
あそこまでが彼女の入れる限界なんだ。

 櫻が。星の精霊の生みの親の血統であるように。
どの星だろうと深奥まで入れるように。

 あなたは二つに分かれた血統の末裔。
今の。太母神の力を持っているあなたならば。
彼女を助ける事が出来るのだ。

 彼女は…あなたと同じ出来事を経験して
同じようにつらい思いをする事で
あなたを家の贄とした過ちを償ってくれた。

 もう十分だ。償いは成された。
土蜘蛛達の想いは全て私が受け止める。

 私だって。かつては思いのかなわぬ無念を抱えて。
絶叫の果てに息絶え。前世の過ちを繰り返しかけて
一時は大魔王と化した身だ。

 恨み続けた年数が違う。恨んだ強さが違う。
人間には私を殺せない。神でも殺せない。精霊でも殺せない。

【恨みに沈みし者どもよ。我が声をしかと聞け。
 恨み悲しみ、全部。受け止めて欲しいなら。我が真名を呼べ。
 何処にいても。私はいくらでも受け止められる。
 人数の事なら心配するな。私は何処までも分裂できる。
 全てのものを抱き締めるのに不都合はない。】