尊敬する人の一言が、自分にとっての名言や格言になることがあります。

話された言葉だけでなく、書かれた一行でも。

つまり、尊敬する人から生まれたフレーズが、とても大切に思えて、そのあとずっと指針となるのです。

 

 

伊丹十三さんがどこかに書かれていた言葉もその一つ。

 

「僕は、文末に?や!は遣わない。そのほうが美しいから」

 

そして、「?」や「!」をつけなくても疑問文や感嘆文であるとわかるように書くのが望ましい、という意味のことも書いておられました。

 

 

なるほど、「?」や「!」は外国語から入ってきた記号です。

もともとの日本語の文章にはないものでした。

英語を学んでいるだけでもわかるけれど、疑問文に「?」をつけるのは型としての決まりだし、「!」は語気を強めていることの印といった感じがします。

 

 

日本語だとたとえば「おはよう」を元気よくいったことを表したかったら「おはようっ」と書くことができます。

英語だと「Good morning」に元気があったかどうかは「!」をつけなければわからないでしょう。

日本語に手段があるのなら、外国語の記号に頼る必要はない、と少々頭は固い感じですが、わたしも思います。

 

 

では「?」や「!」を遣わないとどんな効果が期待できるのでしょうか。

端的にいって、見た目にそこはかとない品が生まれる、とこれまた頭の固い感じですね。

じっさい、好みで選んでいいものです。

わたしは「おはよう!」より「おはようっ」のほうが、ちょっと古風でかつ爽やかな男子高校生の朝の挨拶のようで好きなのです。

(神木隆之介くんにいってもらったみたい、ってどんなだ)

 

 

同じく「?」を遣わないで書くにもそれなりのテクニックがあります。

「誰」「いつ」「どこ」「なに」「どんな」というような問いかけの言葉が入っていれば「?」はつけなくても疑問文であることはわかりますよね。

その文章の前に起こっていることからもわかります。

 

 

たとえば後ろから人が近づいてきていると書いて「誰」といったら問いかけているのは明白。

そこでわざわざ「誰?」と書くのは過剰のように思います。

 

 

やや難しいのは語尾を上げるだけで問いかけている会話文ですね。

後ろから人が近づいてきている、その人の見当はついている。

 

「神木くん」(神木くん推し)

 

だけでは、見当ではなく確信していて問いかけてはいないように読めてしまいます。

だから「?」をつけたほうが...

 

 

ちょっと待ったあ、この手がある。

 

「神木くんなの」

 

 

この会話文も、もしも、クラスメイトに「あなたの好きな人は誰」と聞かれて、

 

「神木くんなの」

 

と答えたのならば、疑問文ではなく告白です。

 

しかし、ここでは後ろから誰かが近づいてきていて、自分としてはそれが神木くんなのではないかと思っている。

そこで発した

 

「神木くんなの」

 

は語尾が上がっているはずです。

だから「?」はなくても、問いかけたということが読者にも理解してもらえるでしょう。

 

 

「?」や「!」を遣わないで疑問や感嘆を表すには、以上のように、ちょっとした工夫や操作や根回しが必要です。

面倒くさいといえば面倒くさいのですが、文章は手を掛ければ掛けるほど、全体の肌理が上がってきます。

肌のお手入れと似ていますね。

肌理が整うと、透明感が出て、艶も生まれる。

文章のお手入れもお肌同様、確実に効果を見せてくれます。

 

 

「?」や「!」を遣わないで一つの文章を書いてみる。

中級編に近いエクササイズになるかとは思いますが、よかったらお試しください。

 

 

 

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