色気って不思議なものだ。

色気のある赤ちゃんもいるし、色気のあるオーバー90の方々もいらっしゃる。

青年期と壮年期だけの「気」ではない。

どちらかというと、個人の属性で、出たり引っ込んだり、あるとき出たら生涯出っ放しの人もいる。

感じる側の色気による面もある。

 

 

セクシーとは違うようにわたしは思う。

日本特有のまさに「色」の「気」なのだ。

オーラに色がある、の「色」でもあるのかも知れない。

 

 

わたしがもれなく色気を感じるのは、関西の男性の襟元。

京阪神と奈良の人も入れよう。

シャツでも着物でも、襟元にこなれた感じと洗いさらしたような清潔感がある。

それは一種、人の悪いような感じで、惹かれたら最後。

冷たくされても文句がいえなくなってしまうような色気だ。

例:土井善晴、笑福亭鶴瓶。

 

 

外国の俳優を日本の色気目線で見ると、最近いちばん感じるのはジーン・ハックマン。

悪人を演じるときの、正面から相対したら凍ってしまうような真顔のなかに、なぜか美しい顔がふっと見える瞬間がある。

演技者としての彼の磨きぬかれた透明な魂なのか。

悪役なら悪役なほど美しい顔が現れる。

クリント・イーストウッド監督の『目撃』などで好きな俳優の一人だったが、まさかここへきて色気部門で急上昇とは、わたしも大人になったものだなあ。

 

 

 

女性の色気となると、ちょっと難しくなる。

最近話題の男性性/女性性でいうと、わたしは男性性は少ないようなのだ。

自分のなかに自分が100人いるとして、女性を見て「お、いい女」と反応する「男」の自分は9人くらい。

91人の「女」の自分は、同性に対してフレンドリーで、色気あるな、なんて思うのは失礼なんじゃないか、なんて思っている。

じつは感じていて、どきどきしている、の、かも、知れないけれど(どきどき)。

 

 

女優を見る場合ははっきりしていて、イギリスの女優の生命感に色気を感じる。

ケイト・ウィンスレットとレイチェル・ワイズがとくに好きだ。

なりふり構わないときにも美しい、構わないときにより美しい彼女たち。

 

 

 

 

 

わたし自身の色気についても、最後にいっておかないと許してもらえないか。

ある作家の対談アシスタントをしていたことがある。

彼曰く「君には変な色気があるね」。

 

変「な」色気。

変「に」色気があるね、といって欲しかった。

 

彼の助手だった編集者にこぼしたら「銀座でもそんなセリフは一度も聞いたことがないから、すごく褒めていたんだよ」と熱い太鼓判をもらったのだった。

 

 

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羽生さくる/パーソナルエディター

 

東京都品川区生まれ。

東京女子大学日本文学科在学中からエディターとして仕事を始める。

1988年「部長さんがサンタクロース」(はまの出版)でエッセイストとしてデビュー、「お局さま」の言葉を世に送り出す。

以来、単行本を8冊出版。

現在はエッセイストとして執筆のかたわら、文章教室を主宰。

これまでに指導した生徒の年齢は14歳から88歳までと幅広い。

「自分らしく、自由に」をモットーに、のびのびと自分の文章が書けるように見守りながらプログラムを進めていく。

 

 

 

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