去年の秋、国立市の「一藝塾」という市民講座からオファーをいただき、
「羽生さくるの文章教室」を5回シリーズで開催しました。
生徒さんは、88歳男性、88歳女性、77歳女性と40代女性の四方。
みなさん意欲的に学んでくださり、わたしも大変勉強になりました。
初回の質問の時間、88歳の男性が
「行間を読ませる文章というのは、どう書いたらいいんですか」
といきなりの難問を。
「行間、行間ですか...」
と時間を稼ぎつつ、頭をフル回転させます。
「Aという文章とBという文章の間になにかを感じてもらうためには...」
以下ここにも書いていきましょう。
一言でいうならば、AとBと同じ気持ちで続けて書く、ということなんですね。
二つの文章を心のなかでつなげる。
言葉を選ぶ集中力を切らさないことです。
生徒さんたちは、真摯に聞いてくださいました。
親世代の方に「なるほど」とうなづいていただくと、なんだか誇らしい気持ちになります。
その夜、こんなふうに答えたのよ、とあるともだちに話しました。
彼女はピアノの先生です。
「ピアノでもそうなのよ。まったく同じ言葉で教えているわ」
これもまたうれしい反応でした。
AのフレーズとBのフレーズを気持ちでつなげると行間が表せるのは、
ピアノ演奏も文章も同じなんですね。
わたし自身、いつも仕事で質問をしています。
インタビューは質問と答えから始まりますからね。
質問がないと答えは出てこない。
答えは、自分一人では考えたことのない、新しい言葉を含んでいます。
わたしも自分が「二つの文章を同じ気持ちで書いている」と意識したことはありませんでした。
でも生徒さんから質問されて考えてみると、たしかにそのようにしているのです。
質問してくださったことで、他の生徒さんにも伝えられたことを感謝しています。
「羽生さくるの文章教室」ではこれからも質問をたくさんいただき、
そのつど頭を絞ってお答えしていきたいと思います。