わたくし「追っかけ」という人種の「業」とか「生き様」にものすごく興味あります。

いや、バンギャル稼業続けすぎて「こういう世の中のタブーな世界に私が切り込まないでどうする」と使命感すら感じるようになりました。

そのため以前より勧められてた松澤くれは氏の「りさ子のガチ恋❤️俳優沼」を読破しました。

主人公は地味なOLりさ子26歳。舞台俳優追いかけることに本気で人生賭けてる女子です。彼女が大好きな俳優を追いかける中で、俳優に恋人発覚したり、ファンたちの争いとか、様々な心の葛藤が描かれてます。

まずこの小説、作者男性なのにびっくりしました。追っかけ同士のマウンティング(観劇回数やあげたプレゼントの金額)とか、舞台俳優の彼女のSNSでの匂わせ(わざとお揃いのファッション披露とか)、ファン同士の闇掲示板、ネット炎上など、男性がスラスラ踏み込んで書けるなぁと驚きました。

よく見たら筆者は舞台脚本家・劇作家だから、実体験混じってるはず。「手作りのクッキーなんて何が入ってるかわからないから、危険で食べられない」って実にリアリティあるエピソードですよね。

この話の何に私が共感したかというと、主人公は舞台に行くあまり仕事も適当で、有給取りまくりで職場では肩身狭いのですが、そんな彼女の独白↓


社会人は仕事が第一。
だから趣味に生きるなんて論外。
私はいつも否定される。仕事だけが全てじゃないという言葉は、仕事を完璧にこなせる人間の金言だ。
私にとって会社は、時間を換金するための場所。
好きなことを仕事にできる人はすごい。
私には叶えるべき夢がなかった。
私には追うべき目標もなかった。
だからこそ夢に向かって頑張る人が眩しい。


これ十数年前の私の心境じゃん、と思いました。
本当に自分に何もないから、才能あって夢を追う人を追いかける、夢を実現して行く過程を応援する・・こうすることで地味な現実を忘れられる時期ってあるんですよ。


あと一番辛いなと思ったシーンは、通ううちに「目があった?」とか「私のこと覚えてくれたのかな?」と実感するような出来事があってから張り切って行った握手会で推し君に「初めまして」と言われた時の絶望感。

これ、本当に重ーーーい。推しの熱愛発覚より辛い出来事なんじゃないかな?

こちらにとっては「この世の誰より大切な唯一の存在」であっても、向こうからしたら「沢山いるファンの中の一人」でしかないことを思い知らされる象徴的なくだりです。

ライブや舞台にいくのは作品や空間を楽しむためなのに、覚えてもらうことが目的になるのは本末転倒です。それでも「貴方の活動をいつの日も心から応援するファンである私」を承認してもらいたい要求は止められませんよね。

嗚呼、人間のサガよ・・

ファン心理ってファンの数だけいろんな気持ち・考え方があるから、共感できたりできなかったり、過去を思い出したり・・沢山のことを考えさせられる一冊です。おススメ。