鉢野在流はライトノベルがお好き!? -9ページ目

鉢野在流はライトノベルがお好き!?

ライトノベルを中心に創作、批評、文章研究などを書いていこうと思ってます。物書きからの目線で物事を見定めるようシンプルに分析できれば、と。

旅に出よう、滅びゆく世界の果てまで。 (電撃文庫)/萬屋 直人
¥620
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 ――世界は穏やかに滅びつつあった。「喪失症」が蔓延し、次々と人間がいなくなっていったのだ。人々は名前を失い、色彩を失い、やがて存在自体を喪失してい く……。そんな世界を一台のスーパーカブが走っていた。乗っているのは少年と少女。他の人たちと同様に「喪失症」に罹った彼らは、学校も家も捨てて旅に出 た。目指すのは、世界の果て。辿り着くのかわからない。でも旅をやめようとは思わない。いつか互いが消えてしまう日が来たとしても、後悔したくないから。 記録と記憶を失った世界で、一冊の日記帳とともに旅する少年と少女の物語

 この作品の見所は、雰囲気。喪失症によって滅びゆく世界を淡々と物語っています。少年と少女に暗さがなく、単に旅をしているだけの高校生に見えますが、そこはかとなく空虚さが漂っていたりして、空気感がいい。希望でも絶望でもなく生きている人々の営み……もしかすればこれこそが人の理想郷だったりするかもしれません。

 お気に入りのシーンは、人力飛行機を組み立てる『まで』のところですね。作者さんは、どうも機械工学がお好きそうな方らしく、淡々とした中に熱い航空力学の理論をぶちかましていたりして、ちょっと雰囲気台無しかもと思ったりもしますが、そこがいい。あえて情熱を溢れさせるシーン。映えてます。ただ、飛ばす以降は……ご自分でお確かめ下さい。

 学べたところは、文章ですかね。雰囲気を壊さないように柔らかなタッチで書かれていて好感が持てました。私自身もこのような文体が書けたらなと考えていたりもしますが、まずは、私らしい文章を身につけることから始めないといけませんので、軸をブレずしっかりと精進していきたいですね。

 旅に出たい度 ☆☆☆☆☆

 ――現状を維持したいなら走れ、それ以上を求めるならもっと速く走れ