君のための物語 | 鉢野在流はライトノベルがお好き!?

鉢野在流はライトノベルがお好き!?

ライトノベルを中心に創作、批評、文章研究などを書いていこうと思ってます。物書きからの目線で物事を見定めるようシンプルに分析できれば、と。

君のための物語 (電撃文庫)/水鏡 希人
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 ――華やかさとも成功とも無縁で、幸福や繁栄は手に入らない対岸のもののように感じられる、そんなひとりぼっちの冬の寒い夜。ひょんなことから死にそうな目に 遭った私を救ったのは、奇妙で不思議で美しい「彼」…レーイだった。出会いと喪失をいちどきに運んだ不思議な力、老婦人の昔日の想いが込められた手鏡と 櫛、天使をも魅了する声を持つ女帝とも称された歌姫、そして「彼」を追う魔術師―私は彼にまつわる不思議な事件に巻き込まれ、そして……

 この作品の見所は、彼ことレーイですね。連作短編方式で物語は進んでいくのですが、レーイのキャラクターが謎めいた魅力でぐいぐい読ませてくれます。
シャーロックホームズと喪黒福造を合わせたかのような飄々としつつ味わい深いキャラがお好きな方には、まさにうってつけの作品ではないでしょうか。

 お気に入りのシーンは、第三章。天使の歌声を持ち大女優として名を馳せる女の物語。使い古されたテーマですが、レーイのキャラによって儚げで印象的な作風になっており『純粋』だった頃の彼女の表紙がとてもいい。驕れる者は久しからず、ただ春の夜の夢のごとし。

 学べたところは、作風ですかね。穏やかでミステリアスな雰囲気のレーイを作り出し、文章自体も整いつつも柔らかで馴染みやすい。作者の味が染み渡っています。独自の文章スタイルを確立するのは難しいことで、そして文章スタイルに合った作品に仕上げるのはなお難しい。作者はそれを分かっているようで、自身の力量を計れる強みを私に教えてくれたような気がします。私は、こういったタイプの物語を書く技量は持ってないです。

 レーイイケメン度 ☆☆☆☆☆

 ――数奇な、そして、感謝すべき運命に