俺は5351プールオムと言うブランドにはまっていた。その前は全身アニエス・ベーだった。そこのブティックは商店街の中にポツンとたたずむ、小さなお店だった。ずいぶん場違いな場所に、こんな店があるもんだなぁ。と俺は初めて入店したんだ。そこには中年の店員さんが一人居た。「いらっしゃ~い。ゆっくり見てってね」と声をかけられた。第一印象は、気さくなおじさんって感じだった。
そして俺は店内の商品を色々とみて衝撃を受けた。普通の服が売ってないのだ。どの商品を見ても派手で、Tシャツもすごく伸縮性があり、Vネックがエグイ感じだった。シャツなんかはシースルーとか当たり前のように並んでいて、シルバーのシャツなんかは、本当に全部銀色だった。そして極め付けが、金色の蛇柄のラメの入った白のブーツカットボトムだ。他にも超ワイドなボトムなどもあったが、
俺が見た5351プールオムの印象は「スゲー!」の一言だった。値札も見ると、アニエス・ベーより若干高い程度で、買えないほどじゃないな。と俺は思っていた。俺は紫のⅤネックTシャツと、黒のシースルーのダブルカフスのシャツに惹かれていた。ん、待てよ。「ここって靴って置いてるんですか?」と店員さんに話しかけると、「ありますよ~」と靴のコーナーに案内された。靴のブランドは全てアルフレッド・バニスターらしかった。
正直な話、全身アニエス・ベーでこの靴は無理だな。と思えるほどすべての靴が、エグイデザインをしていた。俺は、つま先が幅広になった、ちょっとかかとの高い革靴に惹かれていた。よし、ここで試しに一式買うか。俺の意思は決まっていた。その靴に合わせて、黒のブーツカットボトム(ここでは地味な部類のデザイン)それに、紫のⅤネックTシャツ、黒のシースルーの長袖シャツの4点をまとめて購入した。
黒のブーツカットだが、シルエットが凄くカッコ良かったのだ。自分の割と高めな身長と、細身な体形にバッチリあっていて、自分の為に作られたようだった。「お兄さんの体形だと、5351似合うね~」と店員さんは言っていた。まぁ、セールストークなのは分かるのだが、自分も同じことを思っていたので「このブランドって高身長で、やせ形じゃないときつそうですね~。これ丈合わせて貰えますか?」と言うと、
「そうなんだよね~。着る人を選ぶ服なんだよね~。あ、丈はさっきの靴に合わせますね」と言って、寸法をあわせてもらった。家には黒のオニキスのカフスボタンがあったので、このシャツに使えるな。と思っていた。そして、「ありがとうございました。また宜しくね~」と言われ、家についてすぐに着替えて全身鏡の前に立った。やばい。カッコよすぎる・・・。ある意味コスプレした気分だった。俺はこの一着で完全に5351プールオムにはまってしまった。
そして、2か月に1度程度の割合で、このブティックに足を運んだのだ。初めはものすごく抵抗のあった金の蛇柄ラメ入りの白のブーツカットがカッコよく見えてしまうレベルになっていた。流石に白蛇は穿く勇気がなかったのだが、黒に銀の蛇柄ラメ入りブーツカットはアリだな。などと考えて購入してしまった。この後、自分で一番のお気に入りとなるボトムとの出会いだった。
その後は、しばらく5351プールオム以外の服は買う機会が減っていった。他に合わせられないからだ。エグイデザインの靴に合うボトムは5351しか思い浮かばない。蛇柄ブーツカットも5351の服にしか合わない。シースルーのシャツもインナーは5351以外だときつい。こうして、5351から抜け出せなくなっていったのだった。その内、ブレスレットや、ネックレスなども、ここで買うようになっていた。
この当時は、ファッションに疎い友人は居なかったので、割とファッションにこだわってる友人に見せると、「すごいカッコだね~」とよく言われた。「この銀色の蛇柄のブーツカットのシルエット、マジでカッコよくない?」と聞くと、「うん、バランスいいね~。サイズがいいのかな?俺は、いいと思うよ」と言ってくれた。この、「俺は」の意味を俺は良く解っていた。ここのブランドの服は好みがわかれるのだ。
まぁ、目立つものは、影も大きいと言う事だろう。俺は5351プールオム以外の服も、一応毎期、着れる分は用意していた。派手すぎると着る機会を選ぶからだ。だが、一番のお気に入りだったのでほとんど毎日のように着ていた。もう店員さんとも仲良しになっていた。店の前をたまたま通っただけで、ジュースを貰ったり、買いもしないのに世間話をしたりする間柄になっていた。
今は都市開発が進み、そのお店も無くなってしまったのだが、(丸井の中とかに今もあるらしい?)このブランドが残してくれた思い出はあまりにも大きい。バーゲンセールで売れ残ってたので購入した。紫メタリックのブーツカットにシルバーの襟のとがったシースルーの半袖シャツにダークグリーンの伸縮しまくりのタンクトップなど、俺以外に着てる人間を見たことがない。
今は、中年太りが進み穿けなくなってしまったが、シルバーの蛇柄ラメ入り黒のブーツカットは、昔の大切な思い出の品として、今も大事に箪笥の下に眠っている。