当時の俺は、iモードの映画サイトにハマっていた。iモードのせいで携帯の料金が毎月3万円を軽く超えていたのだ。今思うと、本当に恐ろしい事だ。だが、同じ趣味の話ができる場所として、満足だったのかもしれない。俺は1年くらいそのサイトにハマり、ある意味有名人になっていた。

 

基本的に映画の話をする人間は決まっていた。主力な人物は、俺を入れて6人くらいだっただろうか?俺は思ったことをすぐに投稿してしまう性格なので、一部では嫌われていたかもしれない。通りすがりの男の人が当時、レンタルが始まったばかりの新作ビデオ、「戦火の勇気」って感動するよね。と女性観覧者相手に、投稿して直ぐに、「あ~、あの映画か、でも終わり方、後味悪くなかった?」と、横槍を入れたりしていたからだ。

 

「いや、あの映画は良い映画だ!」と男性がムキになって反論してきて、俺ができる限りネタバレを避けて、事細かに戦火の勇気のここがこうで、終わり方がこうで、悲しい映画じゃない?と説明したら、女性の方が「なるほど、そういう見方もできるのか」と仲裁してくれたりしていたのが懐かしい。その男性は、それっきりサイトで見かけなくなってしまったが、今思うと、申し訳ないことをしてしまった気がする。

 

当時、サイトの人の携帯の着メロで、映画のテーマを流すのが流行った時期があった。俺はその時はエクソシストのテーマを流していたのだが、投稿者で「タクシー」の着メロがないんだけど、早く更新されないかなぁ。とぼやいていた事があった。俺は「それなら、パルプフィクションのテーマにするといいよ」と忠告したことがあった。当時は、知る人ぞ知る同じミュージックだったからだ。

 

その投稿者は、「おぉ!タクシーの曲だ!ありがとう」と満足していた。そして、そのちょっと後にiモードの着メロサイトで、「タクシー(パルプフィクション)」と表示されてたので、大笑いしてしまった。俺か?俺の情報のせいなのか?と、映画サイト中で一時期、話題になった事もあった。今だから、ぶっちゃけた話なのだが、俺はあまり映画は見に行かない人間だった。その代り、ビデオの購入やレンタルはよくしていたのだ。なので最新情報には少し疎かった。

 

だが、主力の6人での会話はいつも弾んでいた。「私、ジョニー・デップが好きなんだよね」と言われた際、「あぁ、エルム街の悪夢で殺されたシーン良かったよね」と俺が話すと、「え?エルム街にジョニー・デップでてるの?」と驚き、「あぁ、あれがジョニー・デップの初出演映画だよ。配役の所に名前すら載ってないけど、主役の彼氏役で、フレディにやられてたよ」等と、コアな会話が自然にできるこのサイトはとても気に入っていた。

 

そのサイトの主要6人の中に、チョウ・ユンファが好きな女性がいた。俺は男たちの挽歌シリーズ、ゴットギャンブラーシリーズも欠かさず見ていたこともあり、彼女と親密な関係になっていった。彼女はチョウ・ユンファが出てる映画は全部見たらしい。チョウ・ユンファの知識では絶対に勝てないことだろう。彼は孤児を育てているため、いい父親であるために、絶対悪役をしない。と言うのも彼女に聞いた知識だ。

 

そんな感じの話を聞いているうちに、自然と仲良くなり、大阪在住の彼女が今度、東京に来るという話を聞いたので、「それなら、東京で一緒に映画見に行かない?」と俺が誘ったのだ。