「瞳ちゃん、俺一回あいつらの所に戻って、用事済ませてすぐ戻ってくるから、ちょっとここで待っててくれないかな?」俺がそう言うと、「分かった。ずっと待ってるよ」と、瞳ちゃんが言ったので、「15分はかからないと思う」と、俺は言って、ラブホテルの駐車場へ一人で向かった。駐車場には、まだ岩本の車があった。車には佐々木も戻っていた。「あ、ダダだけなんだ。あのムカつく女、帰ったんだ」佐々木はかなり機嫌が悪そうに一言目にそう言った。

 

「ん、俺ちょっと皆に話があって戻ってきたんだけど、とりあえず俺のカセットテープ貰うね。で、俺やっぱりダメだわ。これからは、友人はよく選ぶ事にしようと思って」俺がそう言うと、全員いぶかし気な表情をした。「本題から言うけど、俺今回の仕事の件、キャンセルするから。ぶっちゃけ佐々木とは相性悪すぎるわ。ここで離脱させてもらうよ。電車で帰るんで、昔なじみの岩本以外とは短い付き合いだったけど、ここでサヨナラだね。まぁ岩本とも、もう会うこともないかな?まぁ、もうちょいファッションセンス磨いたら、また遊んでもいいけど。とりあえず、仕事前に俺にナンパさせたのが失敗だったね」

 

俺がそう言うと全員動揺していた。「ダダ、何があったんだよ?」岩本が聞いてきた。「いや、俺、軽い気持ちでナンパって出来ない人間みたいで、正直、瞳ちゃんをムカつく女扱いされてる時点で、キレそうなんだわ。まぁ、この後、俺が声かけた責任って言うのをとろうかと思ってるんだけど、それはもうお前らには関係ない話だね。じゃあ、そう言う事で」俺はそれだけ言って、右手の人差し指と中指を立てて額に当て、軽く敬礼するようなそぶりをして、3人に別れを告げ公園へと向かった。

 

公園のベンチには瞳ちゃんが一人で座っていた。「できるだけ急いできたんだけど、こんな所にこんな時間に一人で待たせちゃってホントごめんね。待ってる間、何か問題無かった?」俺は心配して瞳ちゃんに聞いた。「来てくれるって信じてたから平気だったよ」瞳ちゃんは、そう言って俺を見て微笑んだ。「俺、考えたんだけど、あの3人より瞳ちゃんの方が大事だって気が付いたんだ。正直、佐々木と横山なんて一日程度の付き合いだったし、岩本とも小学校が一緒で最近、偶然会っただけだったんだよね。まぁ、そんな訳で、仕事はキャンセルして3人とは決別してきちゃった」

 

そう言うと、瞳ちゃんは驚いていた。「え?瞳ちゃん、もしかして岩本達より俺の事、大事に思ってくれてる自信ない?」俺が微笑みながらそう聞くと、瞳ちゃんは、俺の目を見つめながら、「ダダさんの事を思う気持ちなら絶対負けてないよ」と、言ってくれた。「あ、それとコレ、2人の出会いの記念にプレゼント」俺はそう言って、カセットテープを渡した。「俺の自信作だから瞳ちゃんに渡したくて持ってきた。まぁ、あの3人には似合わないからね。このカセットを持つのに一番ふさわしいのはやっぱり瞳ちゃんだと思って」

 

カセットテープを受け取った瞳ちゃんは、「ダダさんありがとう。一生の宝物にする」と言ってくれた。「今だからぶっちゃけて言うけど、カラオケ採点で、このカセットの曲ならどの曲でも最低でも90点は出せるよ」俺がコッソリと耳元で囁いたら、瞳ちゃんは笑っていた。「よ~し、次は私もダダさんに負けないように練習するぞ~!」瞳ちゃんは笑いながらこちらを睨んでいた。