私には中古チョロQで利益を上げれるとは端から思っていなかった。自分がコレクターだからこそだ。集めてる人間は買いそびれたもの以外興味は無いんだ。買取で絶版物が運よく少量手に入ったところで、見分ける人間が自分以外居ないんだ。教えようとも覚えない。したがって手間がかからないように一律100円買取だ。だが6店舗で値段を付けれる人間も自分しかいないんだ。マニュアルに出来ようも無い。それほどチョロQは手間がかかる。
誰がありふれて出回ってるチョロQを250円で買うのだろう…。無駄な在庫ばかりが溜まり、売れ筋が無い状態しか思い浮かばなかった。その売れ筋さえも爆発的に売れようも無い。やれやれ、また解りきった無駄な手間が増えるのか。反論したのだがいつものごとくスルーされ、買い取り価格は100円と言う事に決まった。まぁ100円ならどんなチョロQでも子供に売れるか…。そう、100円買取はあきらめた際に、販売で売れそうな限界の価格で私が決めたんだ。
自店に帰るとバイトの女の子2人がちょうど出社してきていた。佐藤さんと松田さんだ。佐藤さんはあわてて更衣室のドアノブを掴むと、「ダダさんお疲れ様です。私達すぐ着替えるんで待っててください」とすぐに部屋に入り、続いて松田さんが入り、「覗いちゃだめですよ」とこちらを軽く睨みながら笑った。「ばっか、の、覗くわけ無いだろ!」と私が言うとドア越しに2人の笑い声が聞こえた。「ふむ、覗く価値はある言い方だな。よろしい入りたまえ」「ちょっと待って」と2人のやり取りが聞こえたが、私はドアに背を向け聞こえないフリをしていた。
「ダダさん、お待たせ~」着替えを終えた松田さんがドアを開けて出迎えてくれた。うちの職場は更衣室と休憩室を兼ねているので、女子が着替える際は部屋の外で待つのがきまりだ。2人とも仕事にはまだ早いので、私は先ほど本部で上司から聞いた件を話す事にした。「二人とも、次回のチラシで買取がさらに増えるぞ」私がそういうと、二人ともうんざりした様子で、「また大山部長の無理難題~?ダダさん大変すぎでしょ。他の社員に振ればいいのに。出社してるだけの内田さんみたいな社員も居るのに」佐藤さんはそう言うが、内田という社員は遠距離出社でルーティンでいっぱいいっぱいなのだ。
「悪口は良くないが、彼は駄目だ。時間とやる気が無い」私がそういうと2人とも大笑いして松田さんが言った。「時間はともかくやる気は問題でしょ~」それを聞いて私は素直に思った事を言う事にした。「内田が担当になった場合、ルーティン以外の負担は全てバイトに来るよ。私が担当すれば殆ど一人でこなすから、迷惑はかけないと思う。誰か担当一人に落とし込めればいいんだけど今回は物も悪い。社員はおかしな成果主義が当たり前になってるから内田も仕方ないんだよ」
「ところで買い取る物って何?」佐藤さんが多少気だるそうに聞いてきた。「チョロQだよ」私がそう言うと、「チョロQ~?売れ無そう…」と2人が声を揃えて言った。「あぁ、俺もそう思う。担当が言うんだから間違いない。いや、断言する売れないよ」それを聞いた松田さんは噴出していた。「コラ、担当!しっかりしろ~!ダダさんもやる気ないじゃん」それを聞いて俺はすぐに反論した。「いや、やる気出しても売れないんだって…。やる前に解るんだよやる気があるから」私は自分でも理解できない台詞を口走っていた。