私はゲームショップで社員として働いていた。そこの店では中古の買取もしていてゲーム以外の小物玩具の買取などもしていたんだ。トレーディングカードはもちろん、チョコエッグのフィギュアやらベイブレードやら売れそうなものには何でも着手するのが店の方針だ。社員としては小物の買取など面倒以外の何者でもない。売り上げはゲームなどに比べるまでもなく、在庫管理、価格設定、商品知識など、とても手間がかかるんだ。一般人から見れば100円程度に見えるものが1万円を超えたりもするんだ。
当然、覚える気のない社員も居る。正直なところ、6店舗で25人ほど社員が居るが担当と言われた私以外で価値が多少なりとも解る人間は2人程度しか居ない。そして覚える気のある社員が2人。他20名は覚える気すらないのが実情だ。他の社員は何をしているのか?そんな事でいいのか?と思われる事だろう。だが、売り上げの大半はゲームで成り立っている。パレートの法則と言うヤツだ。80%の売り上げに力を注げば20%など、どうでもいいのだ。手間もかかるとなればなおさらだ。
そんな中、貧乏くじを引かされた私は、この環境を楽しむ事にしていた。既にチョコエッグフィギュアやベイブレードは廃れたが、トレーディングカードに関しては、定番アイテムにまで成り上がった。おかげでどの店に行ってもスペシャリストとして歓迎されていた。それもそうだろう。他の社員じゃまともに買い取りも出来ないのだから…。買取の際には高額商品は私が働いてる店舗に誘導するんだ。そんな状態な訳だから買取は大混雑だ。楽しまなきゃやってられないだろう。私はカードゲームのルールや価値を調べたおかげで、珍しいカードが買取で来る度に喜ぶようになっていた。
そんな中で、上司がまた無茶な事を突然始めた。チョロQの買取だ。チラシを入れる説明で呼び出されたと思ったら、チラシ週から買い取り開始だそうだ。呼び出されたと言う事は、当然私が担当だ。ちなみに私の給料は他の社員と比べても安い。成果主義とのことで、売り上げの多い店舗の社員の給料が高いのだ。小物を扱っていれば手間が増えてメインが疎かになるのだ。
実は誰も知らない話だが、私はチョロQには詳しい。1個350円のチョロQだが、相当昔から、自宅には30個程飾ってあったりする。私は上司との価格設定の話で、基本1個100円買取で250円販売にするべきだと説明した。基本と言ったのは、定価が350円ではなく高額な物もあるのだ。自宅に飾ってあるスカイラインなどは、マジョーラカラーと言われる見る角度によって色が変わる物でエンジンフードも開閉式で定価が2500円もする高価なものだ。
そんな物を他と同じ100円買取と言われたら私ならば、ぼったくりだと、怒り狂う事だろう。他にも絶版の物など知識がなければ買い取れないレア物が幾つもあるのがチョロQだ。さて我が上司様は何を期待して私を担当に選んだのか?よもや、我が家にチョロQ図鑑全4冊(一冊1900円)が揃っているとは思ってもいないはずだが…。