①彼女は俺を頼ってくれていた。始めは同情からだったのだが、何時頃からなのだろうか、俺は彼女を妹としてでなく彼女として見るようになっていた。そして、俺は勇気を出して「君の事が妹でなく、女性として好きだ。俺の事をお兄ちゃんとしてしか見れないかな?」とメールをしたんだ。返事を待つ間、俺は凄く不安だった。

②だが返事はすぐに来た。「私は初めからそのつもりで見てたよ。妹って言われた時に、ショックで妹でもいいから貴方との関係を続けたいと思って、ずっと耐えてたんだよ。お兄ちゃん大好きって書くたびに苦しかったんだよ」こう返って来たんだ。その返信で今度は俺の方がショックを受けた。俺は知らない間に彼女を傷つけていたんだ。

③そして、これからはお互い名前で呼び合おうと約束して、彼女との関係はより深いものになっていった。そして自分撮り写真付きメールをお互いに送り合う関係にまでなった。だが、俺は名古屋で彼女は京都だ。リアルで会うにはお互いの仕事もあり、なかなか踏み切れなかった。この頃には、新しく替えた携帯のメールも埋まるくらいメール交換していた。

④そんな時に俺の仕事が変わった。名古屋の自動車工場が期間満了になり、埼玉の自動車工場に転職したんだ。そして、そこで大きな問題が発生した。電波が届かない関係になったんだ。その職場は携帯の持込が禁止なのだ。俺は出勤時と帰りに必ずメールをした。だが、彼女のメールには必ず「寂しいよ」と書かれていた。

⑤俺は本気で転職を考えた。3ヶ月で更新なのだが、そこで延長するのをやめようと思ったんだ。俺は彼女を悲しませたくなかったんだ。リアルでは会ってないのだが、それほど愛してしまっていた。誕生日にはプレゼントが届き、毎日メール交換していただけの女性を寂しがらせたくなかったんだ。「祇園祭で一緒に綿飴を食べたい」とメールが来た際、「いつか絶対一緒に食べよう」と約束したんだ。

⑥だが、今まで来たメールは会話のごとく5分以内に返信していた。その関係が、長時間待たされるのに彼女は耐えられなかったんだ。徐々にメールの数は減っていき、彼女のメールへの返信が遅くなり、俺へのメールは返って来なくなったんだ。寂しいよ。最後のメールに書かれていた文字だ。これを部屋の中で見た時、外は大粒の雨が降っていた。

⑦以来、雨降りには何処からか「寂しいよ」と声が聞こえてくる。俺は祇園祭へは未だに行った事がない。祇園祭で綿飴を食べればこの声も聞こえなくなるのだろうか?