①友人関係が広いと、色んな会話が飛び出してくる。今回は聡史と、テルの男2人と、洋子と、スズの女2人。それに俺を入れた20歳前後の5人の話を書いてみよう。今回のメンバーは傍から見るとヤンキーやらケバいやら言われそうな面々だ。そんな男女の織り成す恋愛物語。

②俺はジーンズショップでのアルバイトが終わり、帰宅しようと原付スクーターにまたがった。ちょうどその時、PHSが鳴っている事に気がついた。俺はスクーターの上で電話に出ると聡史からだった。まぁこいつが持てと五月蝿いからPHSを買ったわけだが、基本電話で話をするのは嫌いだった。用件だけ手早く聞いて直ぐに電話を切った。

③もはや聞く必要さえなかった。用件は「今からモトローに来い」だ。モトローとは、元はローソンだったが今はセブンイレブンに変わったコンビニの略称だ。誰が言ったのか忘れたが、他人には解らなくて自分達だけ解る所が気に入って、俺達5人には、この呼び方が定着していた。とりあえず、半帽のヘルメットを被り、そのモトローへそのまま向かう事にした。

④モトローの前に着くと、洋子とスズがこちらに気がつき、スズが右手の人差し指と中指を立てて敬礼するようなそぶりでこちらに手を振り、「よっ、調子はどうよ?」と声をかけてきた。「ん、少し疲れてる」俺はあえて定番の台詞を言わなかった。「相変わらずノリ悪いね~そこはボチボチでんなでしょ。まぁダダらしいけど」と洋子が横から笑いながら口を挟んだ。

⑤「俺はぼちぼちでんなの、でんなが凄く嫌いだから絶対言わない事にしてるんだよ。聡史とテルはまだ来てないの?」俺はモトローの中を眺め、客が居ない事を確認しながら2人に聞いた。すると洋子が「聡史は少し遅くなるって、それで聡史が来たら居酒屋で飲んでるテルと合流するんだって」と説明した。

⑥俺は、呼んどいて遅れるのかよ、と内心思いながらスクーターの上で彫刻の考える人のようなポーズをとっていた。「で、その間、俺達はココで待機?」と2人に聞くと、「ん~、ダダがすぐ来ると思うから3人であんな事やらこんな事やら、しててだって」とスズが、からかう様に俺に言った。それを聞いて俺は不覚にも顔を赤くしてしまった。

⑦「あはは、ダダってホント、純情少年だよね~。どんな事想像したのかな~?3人で色々してみたいのかな?私も興味あるんだけど~ダダは興味ないのかな~?」と、スズが言ったところで、「そのくらいにしなよスズ。ダダ困ってんじゃん」と洋子がフォローしてくれた。とりあえず助かった。俺は女性の押しにトコトン弱いことは自覚している。

⑧そして洋子は「ダダは私と2人きりのほうが良いんだよね」と下から俺を覗き込むように言ったので、また真っ赤になってしまった。それを見て2人は大笑いしていた。「なんて恐ろしい奴らだ」と、そんな感じにからかわれて居たのだが、自分はその状態が嫌ではなかった。一定の距離感が維持されてるこの関係はむしろ楽しかった。

⑨そして結局、聡史が到着するまで、その場で3人で話し続けていた。時間が経つのは早かった。「おう、遅れて悪かったな。で、3人で楽しそうに何の話してたの?」と聡史は洋子に聞いた。「ダダは私とスズの2人を相手にしても体力が持つのかって話~」と洋子は薄笑いを浮かべながら言った。

⑩「お前らな~、そういう話は俺が来てからにしろよ。俺なら一人でもお前等2人とも立てなくなるぞ。今から試すか?」聡史がそう言うと「遅れてきたのに、がっつきすぎな聡史君とは遠慮させていただきます~」と洋子は笑いながら言った。こいつ等は会う度にこの調子だ。聡史は洋子に惚れてる事は丸解りなのだが、洋子はサラリとかわすのだ。

恋愛に発展しない友人関係。果たしていつまでこの楽しい関係は続くのだろうか?


第一部完 あぁ、また続き物になってしまった(-"-;A