①新人研修。部屋に集まったのは合計で18人だった。開始までまだ時間がある為、皆、緊張した表情で何をする訳でもなく椅子に座っている。正直、工場の研修に慣れ過ぎている自分は緊張など微塵も無かった。俺は周囲の人間観察をしていた。20~30代の男性だけのようだ。30代くらいの人は多少余裕があるように見える。きっと同じような仕事をこなしてきた人たちだろう。
②正直、自動車工場の期間社員などを、何度も繰り返すような人はどうなんだろうと考えてしまう。自分も似たようなものなのだが、その人と仲良くなっても得るものは無さそうだと感じてしまう人が大半だ。工場にいる間に資格を取る勉強をしようとか考えるような人はまず居ない。向上心を感じないのだ。
③まぁ、誰とも仲良くしないというのも寂しいので、俺は一緒のバスに乗ってきた隣の同年代くらいの人に話しかけた。彼は大山と名乗った。埼玉出身らしい。「埼玉だとホンダの方が近くて良かったんじゃない?」と俺が言うと「ホンダでも働いた事あるよ」と大山は言った。「狭山工場?あそこは寮が綺麗だよね」と俺が言うと思いのほか話しが盛り上がった。
④気がつくと同年代くらいの周りの数人も話しに入ってきていた。「俺は日産で働いた事あるけど、あそこは働きやすいよ。給料が若干安くて食事がまずい」「食事と給料はいいけどトヨタは仕事がきついよね」「いすずは寮が酷くて、通勤も大変だよ」などなど、他の自動車工場の話題で盛り上がった。同年代も経験者が意外と多くて驚いた。
⑤やはり、自動車工場には抜け出せない何かがあるのかもしれないな。人並みな給料と住居が確保できると言うのが大きいんだ。そしてココを知ってしまうと無茶をするようになる。いざとなったら自動車工場に戻ればいいやと考えてしまうのだ。まぁ30歳を超えるくらいになると体力面がきつくなりそうだが。
⑥しょっちゅう募集してる癖して、社員昇格にはシビアで、期間満了した人間はその時期に募集してる会社に再入社を繰り返す。実際期間社員として入る人間は大半が経験者なのだ。自動車会社同士がグルになって安い人件費で人間をたらい回しにしてるようだ。と俺は思ったが、深く考えるとやる気を無くしそうなのでその思いは頭の中で振り払った。
⑦そして、研修が始まった。想像どうりの研修だ。渡された書類の記入と安全に対する心構え、社内規約などなど、始めの3日はそれで終わり。4日目から実践研修だ。インパクトドライバーなどを使って速度を計ったりするんだ。コレでいいタイムを出すと厳しい場所に配属になることを俺は知っている。
⑧だが、俺は嘘が嫌いだ。あえて全力でタイム測定をしたら、歴代記録を塗り替えていた。大山と、もう一人の同年代の石垣が、俺に触発されて全力でやっていた。自分を入れたこの3人は恐らく、仕事がもっともキツイ組み立てに配属される事だろう。地雷原と解っていて突き進む性格は簡単には直らないらしい。なんだか巻き込んで申し訳ない事をしてしまった気がする。
⑨他のメンバーも結構いいタイムを出していた。教官が言うには、今回は全員優秀で嬉しいそうだ。それはそうだろう。普通は全員ココで手を抜くんだ。俺が会社側の人間だったら、スパイとしてベテランを一人混ぜて触発させるのもアリだな。などと、思ってしまった。全力の人間が近くに居たら、差を開かれないように大抵の人間は慌てる物だ。
⑩そして、一週間の研修は終わって配属が決まった。予想どうり、俺と大山と石垣は3人とも組み立てで同じ部署だった。3人も欠員が出るほど過酷な部署と言う訳だ。他のメンバーも、かなり組み立てに配属されていた。塗装や検査に配属される人間は少数だ。給料は一緒だが、過酷さは次元が違う。それが自動車工場の組み立てと言う部署だ。
第5部完 いつ終わるんだ。(;゜∀゜)・∵∴ガハッ!
②正直、自動車工場の期間社員などを、何度も繰り返すような人はどうなんだろうと考えてしまう。自分も似たようなものなのだが、その人と仲良くなっても得るものは無さそうだと感じてしまう人が大半だ。工場にいる間に資格を取る勉強をしようとか考えるような人はまず居ない。向上心を感じないのだ。
③まぁ、誰とも仲良くしないというのも寂しいので、俺は一緒のバスに乗ってきた隣の同年代くらいの人に話しかけた。彼は大山と名乗った。埼玉出身らしい。「埼玉だとホンダの方が近くて良かったんじゃない?」と俺が言うと「ホンダでも働いた事あるよ」と大山は言った。「狭山工場?あそこは寮が綺麗だよね」と俺が言うと思いのほか話しが盛り上がった。
④気がつくと同年代くらいの周りの数人も話しに入ってきていた。「俺は日産で働いた事あるけど、あそこは働きやすいよ。給料が若干安くて食事がまずい」「食事と給料はいいけどトヨタは仕事がきついよね」「いすずは寮が酷くて、通勤も大変だよ」などなど、他の自動車工場の話題で盛り上がった。同年代も経験者が意外と多くて驚いた。
⑤やはり、自動車工場には抜け出せない何かがあるのかもしれないな。人並みな給料と住居が確保できると言うのが大きいんだ。そしてココを知ってしまうと無茶をするようになる。いざとなったら自動車工場に戻ればいいやと考えてしまうのだ。まぁ30歳を超えるくらいになると体力面がきつくなりそうだが。
⑥しょっちゅう募集してる癖して、社員昇格にはシビアで、期間満了した人間はその時期に募集してる会社に再入社を繰り返す。実際期間社員として入る人間は大半が経験者なのだ。自動車会社同士がグルになって安い人件費で人間をたらい回しにしてるようだ。と俺は思ったが、深く考えるとやる気を無くしそうなのでその思いは頭の中で振り払った。
⑦そして、研修が始まった。想像どうりの研修だ。渡された書類の記入と安全に対する心構え、社内規約などなど、始めの3日はそれで終わり。4日目から実践研修だ。インパクトドライバーなどを使って速度を計ったりするんだ。コレでいいタイムを出すと厳しい場所に配属になることを俺は知っている。
⑧だが、俺は嘘が嫌いだ。あえて全力でタイム測定をしたら、歴代記録を塗り替えていた。大山と、もう一人の同年代の石垣が、俺に触発されて全力でやっていた。自分を入れたこの3人は恐らく、仕事がもっともキツイ組み立てに配属される事だろう。地雷原と解っていて突き進む性格は簡単には直らないらしい。なんだか巻き込んで申し訳ない事をしてしまった気がする。
⑨他のメンバーも結構いいタイムを出していた。教官が言うには、今回は全員優秀で嬉しいそうだ。それはそうだろう。普通は全員ココで手を抜くんだ。俺が会社側の人間だったら、スパイとしてベテランを一人混ぜて触発させるのもアリだな。などと、思ってしまった。全力の人間が近くに居たら、差を開かれないように大抵の人間は慌てる物だ。
⑩そして、一週間の研修は終わって配属が決まった。予想どうり、俺と大山と石垣は3人とも組み立てで同じ部署だった。3人も欠員が出るほど過酷な部署と言う訳だ。他のメンバーも、かなり組み立てに配属されていた。塗装や検査に配属される人間は少数だ。給料は一緒だが、過酷さは次元が違う。それが自動車工場の組み立てと言う部署だ。
第5部完 いつ終わるんだ。(;゜∀゜)・∵∴ガハッ!