ゼノンはリスティアと一夜を明かした。

これで良かったのだろうか?ゼノンは思い悩んでいた。俺はリスティアを同情から抱いてしまった。確かにリスティアに魅力も感じている。だが、今回のは、俺がルイーズを失った気持ちと同じ物をリスティアに感じてしまい、助けてやりたいと思っての明らかな同情から来る物だ。リスティアの弱みに付け込んだんじゃないのか?ルイーズは俺に幸せになって欲しいと言っていたが、俺を人間として扱ってくれるリスティアを簡単に抱いてしまった。俺はルイーズに対する思いは忘れていない。

ゼノンは、激しい自己嫌悪に捕らわれていた。その時、隣で眠っていたリスティアが此方を見つめていた。

「ゼノンありがとう。私は貴方が好きよ。貴方は優しすぎるよ。私にはルイーズさんが貴方を好きになった気持ちが、今ならよく解るわ。自分よりも他人を思いやる心。半魔だって阻害されても決して相手を憎まず、困ってると助けようとする。あなたは誰よりも人間らしいわ。その角が好きって言ってたねルイーズさん。私にもその気持ちが凄く解る。その角は私には天使の輪や神様の王冠のように見えるのよ特別な存在に…。」

そう言って一呼吸あけてから微笑みながら続けた。
「今回は同情で抱いてくれたんでしょ。ううん、返事はいいのよ解ってるから。私はもう穢れてる女だから、無理しないでいいのよ。一日だけ仮にでも愛してくれて有難う」そう言いながら無理に微笑んだが、瞳からは涙が流れていた。

ゼノンはリスティア見つめながら言った。「お前は何も穢れてなど居ない。俺もお前が好きだ。全ての事からお前を守ってやりたい。これは人間の言葉で愛してるというのではないか?仮なんかじゃない。俺はお前を愛してる」そう言って、強引にリスティアの唇を奪い、右手でリスティアの涙を拭っていた。ゼノンにはもう迷いは無かった。