私は今、何を言おうとしたのだ?ルブロを見た際にこみ上げてきた感情は何だ?それにヘレネのあの瞳は何だったのだ?私に対しての圧倒的な敵意・・・妹のヘレネが恐ろしいと感じるなど、どうかしている。フレッド殿に会って気が緩んだとはいえ、何かがおかしい。

ふぅ、確かに無理をしすぎていたのかも知れんな。私はそう思い込んでこの混乱した感情を納得させる事にした。

『ルブロ、ヘレネ、此方のフレッド殿とガザン殿は、西の救援に駆けつけてくれたそうだ。私は少し無理をしすぎていた。海賊にスラム、お父様でさえ両方同時になど相手に出来ようもない事を、どうして私ができると言うのだ。バルザックに関しては、『攻めて来なければ殺さない』とアッシュも言っていた』そのアッシュと言う言葉にガザンが反応した。

『アッシュ君がバルザックと戦ったのか!?いや、すまん、続けてくだされ』
それを聞いてリリカは驚きつつも、話を続けた。

『そこで我々は、スラムより先に海賊黒い風を討伐しようと思う。黒い風もバルザックもどちらも戦力を分担して勝てる相手ではない。実害があるのは黒い風だ。私は、バルザックは父の敵と、冷静さを欠いて感情的になりすぎていた』

一先ず伝えたい事を言い切ったリリカだが、ガザンの言葉が気になり質問した。
『ガザン殿は豪槍のアッシュを知っておられるのか?』
それを聞いて、ガザンが答えた。
『知っているも何も、その豪槍こそ、先ほどフレッドが言っていた私が魅入られた槍だよ。娘のサーシャを救っていただいた事もあって、槍を譲ってサーシャもついて行きおった。私の娘の婿候補だな彼は』

『あの槍の青年の事か!』フレッドも話しの展開に驚いている。

『なんと、そのような間柄とは・・・彼はバランとアリオスがバルザック討伐に向かった際、バルザックの味方をしていたのです。その娘さんサーシャもご一緒で。しかし冷静になって考えると、解った気がする。彼らはバランとアリオスの命を救ったのだな。バルザックの強さを知るルブロの話しと合わせても、そう考えるのが自然だ。バランとアリオスじゃバルザックには勝ちようが無い。それよりも、彼らは少し前までこの場所に居たのだが、引き止めておくべきだったなアッシュとサーシャは、サキとクレア王女を追って隣の国へ向かうといって行ってしまった』