アッシュとサーシャが西のスラムを散策しているとバルザックが話しかけてきた。

『なんだ、またお前達かアッシュ。仲間を捜しに行ったんじゃなかったのか?それとも気が変わって、俺の首を取りに来たのか?』今までの経緯で俺達には多少心を許してくれてるようでバルザックは気軽に話しかけてきてくれた。もっとも、バルザックがその気になれば、この状態でも危険なのだが。

『いや、気が変わったのは確かなんだが、首がほしい訳じゃないんだバルザック、あんた俺達と一緒に来ないか?あんたがここに居ても命を狙われ続けるだけだろう。俺達の友人でリックって名前の凄腕の剣士が居るんだが、このままあんたがここに居ると、リックにあんたの討伐命令が出されちまうかもしれないんだ。俺としてはあんたとリックのどちらにも死んでほしくないんだ。あんたの剣はこんな所でくすぶってるのは勿体無さ過ぎる。』

『ハハハハハ』バルザックは大きく笑った。
おい、アッシュ、サーシャ、お前等、言ってることの意味がわかってるのか?俺はお尋ね者の狂剣のバルザックだ。今まで殺した人間は数え切れん。お前たちの性格は知ってる。真っ正直で困ってる人をほうっておけないお人よしのお前等が、俺を罠に嵌めるつもりじゃない事も解る。だがお前達は、俺を仲間にする事の意味が解ってるのか?

それを聴いたアッシュは真剣な表情で答えた。
『あぁ、俺達はお尋ね者になるのも覚悟の上だ。俺達はこの国を出ようと思っている。俺達も元々お尋ね者の友人を捜してたんだ。国を抜け出して駆け落ちしたクレア王女と仲間のサキを追ってたんだ。隣の国へ向かったらしいんだが、海賊のせいで船が出せなくて困ってたんだ。戦力としてあんたが居れば、海賊なんて気にしないで航海出来るし、このスラムから海賊になる人間も多いらしいから船も何とかなるんじゃないかと思ってね。』

『なるほどな。お前等にしてみれば、俺が仲間になるのは色んな意味で都合が良い訳だな。俺も別に好き好んでこのスラムに居るわけじゃない。他に行く必要がなかっただけでな。船も小型のヤツなら用意できる』


『それじゃあOKなのね。』そう言って、サーシャが話に割り込んでバルザックに微笑んだ。

『あぁ、お前等とつるむのも面白そうだ』
そう言ってバルザックはアッシュとサーシャの手を取った。
クレア王女か・・・まぁ俺の事など覚えてないだろうが・・・