リリーはなかなか目を覚まさなかった。古の魔女ゾーラの話では、幻魔の森という所はそこに居るだけでかなり精神に負担がかかるらしい。リックはリリーが目覚めた時に傍にいてやりたいと思っていたが、メルヴィル様の使いの兵士が訊ねてきたので、お譲ちゃんのことは私に任せてくれとのゾーラの言葉を信じてメルヴィルの元へ向かい、その後リリカに会いに行く事にした。そして、リックが旅立った後にリリーは目覚めた。『あっ、おばあさん・・・リック、リックは?』リリーは傍に居ると思っていたリックが居ないので不安な表情を浮かべてお婆さんに聞いた。おぉ、目が覚めたのかいリックはメルヴィル様に呼び出されて、その後で港町へ向かったよ。お譲ちゃんが心配で傍を離れたがらなかったんだけどね。お譲ちゃんがアッシュとサーシャが旅立つ際に言った言葉をえらく気にしててね。お譲ちゃんの事は私に任せてくれと言ったらやっと行く気になったんだよ。お譲ちゃんはすぐに後を追うのかい?

私は…
リリーは悩んでいた。アッシュとサーシャが旅立つ際に私が見たもの・・・。私は思いだして恐ろしさに震えていた。そんな事があるはずがない!私は頭を振ってその思いを振り払った。そして、ある決意を秘めてお婆さんに言った。『おばあさん、私に未来を変える力を、魔法を教えてください!』今、私がリックの後を追っても足手まといになるだけだ。私はリックの力になりたい。

ゾーラはその言葉を聞くとリリーの目をじっと見つめ考え込んでから真剣な表情で言った。『強い力を持つとその強さの分だけつらい運命と戦わなくてはならなくなるよ。私が教える魔法は並の強さじゃない。覚悟はあるのかい?』

私はおばあさんのその言葉に気おされかけたが、気力を奮い起こして頷いた。『私は運命と戦います!』