『ロイド様、体調はいかがでしょうか?』

『マルスか、今日はいくぶんか調子が良い。国が大変なときにいつまでも休んでられんからな。これ以上、メルヴィルだけに負担をかけれん。お前達にもな』

『そんな、ロイド様がおられなければ、私達はやられていました。あれだけの数の敵をロイド様が引き受けて、私たちを庇っての負傷です。私もフレッドも感謝とロイド様に負傷させてしまった自身の不甲斐なさを感じこそすれ、負担などと感じません。それよりもロイド様はご自身の体を一番に心配なさってください』

『あぁ、すまんな。して、西の様子はどうなのだ?』

『西は、カストール様の後はリリカ様が引き継いだようですが、狂剣のバルザックには手を焼いてるようです。バランとアリオスが、あのあと直ぐに討伐向かって、撤退を余儀なくされたと報告を受けてます』

『バランとアリオスも退けるか・・・。リリカも気苦労が耐えない事だろう。オーウェンでは海賊の被害も増えている。おまけに失踪中の王女を目撃するも、とり逃したとも聞いている。リリカ一人じゃもたんな。アルフォンスなき今、メルヴィルが全体を見なければならん。私がいつまでも休んでいる訳にはいかん』

『ロイド様、西以外は比較的落ち着いております。私はロイド様の元を離れる訳にはまいりませんが、フレッドが居ます。フレッドを西の応援に向かわせてはいかがでしょうか?』

『そうだな。元々は冒険者だった経験豊富なフレッドなら、若すぎるリリカの力になれるだろう。どんな戦場でも役に立てるはずだ。フレッドは今何処にいるのだ?』

『フレッドは鍛冶屋に武器を取りに行っております。戻り次第こちらへ向かうように伝えておきます』


その頃、鍛冶屋では・・・
『おぉ、フレッド様。剣の修復は出来上がっております』鍛冶屋の親父であり、サーシャの父であるガザンはそう言って、剣を渡した。フレッドは剣を受け取り、鞘から抜いて刃を見ながら『うむ、相変わらず見事な腕前だ』と呟きながら刃を見つめていると、フレッドに向かって鍛冶屋のガザンが話しかけた。

『フレッド様、ロイド様の体調はいかがでしょうか?ワシらが平和に暮らせるのも、ロイド様やフレッド様達のおかげです。ワシが出来る事と言えばこうして剣を鍛える事ぐらいです』

それを聞いたフレッドは、鍛冶屋のガザンを見て口元を緩ませながら言った。
『ロイド様は順調に回復に向かっている。まだ少し時間は掛かるがな。それよりも、今は人手が足りない。ガザン、いや、我が戦友、疾風の剣士ガザンよ。いつまで剣を叩いているつもりだ?お主の事だ、剣の稽古は怠っておらんのだろう。私を昔のように、気軽にフレッドと呼んではくれんのか?あの槍もアッシュとやらに譲ったのだろう?私がいくら頼んでも譲ってはくれなかった槍に、大事な娘までつけて譲ったそうじゃないか』

『ははは、サーシャは自分の意思でアッシュ君について行ったのだ。あの槍もな。確かにあの槍とサーシャが居ない今となっては、再び剣を持つ事に躊躇いはない。きっかけさえあればな。ワシを剣士として誘うのか?我が友フレッドよ』

そう言って、サーシャの父、鍛冶屋のガザンは昔の戦友に向かってニヤリと笑った。