『お前が、アッシュか』
そう言ったリリカを見てアッシュは思っていた。若いな。俺達と同い年位か?見るからに気が強そうで、話し合いはなかなか骨が折れそうだな。隣に居た2人の存在も気になった。美しいのだが、どこか儚げとでも言えばいいのか、暗い雰囲気が付きまとっているとでも言えばいいのか、そんな女性と、もう一人の男、落ち着いて実直そうなのだが、リリカの護衛だろうか?

すると、リリカが話を続けた。
『メルヴィル様の知り合いで、アッシュと名前を聞いてすぐにピンと来た。お前が、南の町での山賊退治の際に活躍した豪槍のアッシュだな』

それを聞いた、バランとアリオスは驚いて何か言おうとしたが、リリカに遮られた。
『単刀直入に聞こう。何故バルザックに味方した』

アッシュはリリカの鋭い眼光を睨み返すようにして答えた。『俺の答えは簡単だ。彼と話をして、彼の行動に共感できた。そして、一人の相手に大勢で襲い掛かる兵士が許せなかったからだ。むしろ此方が、何故バルザックを殺さなければならないのか聞きたいね』

『なるほど、では、此方も簡単に答えよう。港町オーウェンには海賊が多いのだが、その殆どが、西のスラム出身なのだよ。お父様は、この港町に私と妹のヘレネを住まわせて、港町の健全化を最優先してきた。しかし、いくら海賊を撃退しても、年々増え続ける。その原因が西のスラムだと解った訳だ。そして、スラム討伐に踏み切った。これでよいかな?お前は、バルザックと話をしたと言ったが、これからも我々の討伐の邪魔をする気があるのか?』

『一人を相手に大勢で攻める気なら、邪魔をせざるをえないな。1対1の決闘なら邪魔はしない』

『ははは、正直な男だな。気に入った』そしてルブロの方を見て口元を緩ませた。
丁度そのとき、一人の兵士が慌てた様子で走ってきた。
『リリカ様!バルザックとアッシュの件で、リリカ様に話があるとの事で、リックと名乗る男が尋ねてきたのですがどうしましょう?』

『リックだって!?』アッシュは驚いて声を上げてしまった。サーシャも驚いている。

『どうやら、そちらの2人のお友達のようだな。リターの後継者のリックか、丁度いいじゃないか。すぐに連れて来い』リリカは兵士に伝えると、事の成り行きを楽しむように全員を見渡しながら、口元を緩ませて声を出さずに笑っていた。