アッシュとサーシャは、バルザックと別れオーウェンに向かっていた。

『しかし、凄いヤツだったな。バルザックか、リックでもあの剣は防げないんじゃないか?防いだ斧を破壊する剣戟、あれは神業だ』

『私は、リックと木刀で対峙したとき、この人には絶対勝てないって思ったけど、バルザックが剣を抜いたときは、殺されるって思ったわ。殺気とでも言えばいいのかな、殺し合いなら恐らく、リックより強いと思う。リックの殺気は見たこと無いから解らないけど』

『あぁ、あの時は俺もあせったな。まさか彼がバルザックとは思わなかった。彼が悪人じゃなくて良かったと思ってるよ。彼を殺す理由なんてなかったからね。彼と話してる最中に、連中が攻めて来なければ、バルザックも俺達の事を信じてくれなかったかもなぁ。』

『彼は可哀想な人だよね。両親がすぐに亡くなって、荒れ果てた町で誰も信用できずに必死に生き延びる為に、あれほどの力を身につけたのに、軍隊まで攻めてきて、自分を殺そうとする。どうしてあの町を滅ぼす必要があったのだろう?カストール様って私は会った事ないけど、アルフォンス様みたいに、住民から非難される人じゃないって印象はあるんだけどなぁ。港町オーウェンの方の治安が常に悪かった頃、海賊達から町を守って、今では海賊は町で暴れる事が無くなったほどだしね』


そんな話をしながら2人は、オーウェンに辿り着いた。町は活気に満ちており、西の町とは比べ物にならない程、栄えていた。周囲を見渡しながら、歩いていると見たことのある2人が居た事に気がついた。向こうもこちらに気がついたらしい。

『お前は、アッシュ!何故この町に居るんだ。バルザックも一緒なのか!』
アリオスは瞬時に剣を抜き、身構えながら話しかけてきた。それにサーシャが答えた。
『彼は居ないわ。私たちは前にも言ったとおり、ただの通りすがりよ。この町に友人を探しに来た通り道に、西の町へ寄ったの。元々、この町が目的地なのよ』

それを聞いても、はいそうですかと通すわけには行かないな。アリオスはサーシャを上から下まで値踏みするように眺めながら言うと、アッシュの怒りが爆発した。

『サーシャをいやらしい目で見やがると許さんぞ!』とアッシュが叫んで槍を構えた。その時、バランが2人の間に入った。すまないなアッシュとやら、アリオスの態度に関しては謝ろう。アリオス、お前が女と話すと、変にこじれて駄目だ』そう言って2人をおさめてから、本題に入った。

『この町を通るからには、仮にもバルザック討伐の妨害をしたお前達を、はいそうですかと通せない理由がある。現在ここを治めているのは、バルザックに殺されたカストール様の娘のリリカ様だ。リリカ様に会って話をするくらい当然だと思わないか?アッシュ』それに関して依存がなかった2人は、素直にバランとアリオスに従い、リリカの元へついて行った。

リリカ様、この町にバルザックの味方をした2人がいましたので、お連れしました。