クレア王女とサキは国を捨てて旅に出る決意をする。
『私はサキと一緒じゃないと幸せにはなれない。お父様は認めてくださらない。サキお願い・・・
私は王女じゃなくていい。貴方と一緒にいたい。』
サキはそのクレア王女の誘いに了解した。
クレアは世間知らずと言うほど世間を知らないわけではない。その彼女がそこまでの決意で自分に好意を持ってくれている。
まさか、王女誘拐事件を解決した自分が、王女と駆け落ちする事になるとは。とりあえず、サキは本気で国を出るなら仲間が必要だと思っていた。クレアは護身用の剣術をたしなみ程度と魔法を少し使えるらしいが、サキは基本狩人スタイルだ。短剣と弓なら誰にも負けない自信もあるが、偵察や後方支援が得意なタイプだ。王女を守りながら冒険するなら、接近戦のエキスパートがどうしても必要だと思っていた。リックかアッシュがいればよかったんだけど、自分の暴走ともいえる犯罪行為に協力させるつもりにはなれなかった。
その事をクレアに話すと、うってつけの人物を知っているとの事だ。
その人物は、元々、使用人兼、王女の護衛をしていたのだが、突然前触れもなしに辞めてしまったらしい。その女性は、国よりも王女のことを考えてくれるクレアの唯一の心を許せる人物だったそうだ。
『港町オーウェンに住んでいる筈です。彼女なら私に会えば協力してくれます。』
そのクレアの言葉を聞いて、2人はオーウェンを目指す事になった。
港町オーウェンは南の町と西の町の中間にあり、西側の海と隣接していて国を出るにはうってつけとも思えた。そしてサキの庭とも言えるほど知り尽くしているサッズ平原とは正反対の方角なので、追っ手を混乱させる効果もありそうだった。そんな訳で、冒険者スタイルのサキとクレアは馬に乗って港町オーウェンまでやってきた。クレアの冒険者スタイルは中々さまになっていて、町の住人は誰も王女だと気づかないが、美しさのせいか、すれ違いざまに振り返る男性はかなりいる・・・。
そんな中、一人の女性が此方をじっと見ていた。サキは確信してクレアに聞いた。『クレア、彼女かな?』幸いその女性は、人ごみから離れた場所で、一人でこちらを見ていたので、話しかけやすかった。クレアはサキに頷くと、その女性のほうへ駆けていって話しかけた。
『クレア様!どうしてこんなところに!』その女性は驚きながらクレアの服装を見ていた。
『リスティア久しぶりね。貴女を探しにきたの。こちらは私の・・・えと、サキです。』どう説明しようか迷ったクレアは、そう言ってサキを紹介した。
『どこか人に聞かれずに話が出来る場所はないかな?』サキがそう言うと、リスティアは自分の家に案内してくれた。
クレアが事情を説明すると、リスティアは驚きながらもサキとクレアを交互に見て微笑むように頷いた。『私はクレア様のためならいつでも力になりますよ。』
それを聞いたクレアが嬉しそうにサキに目配せをしつつ、リスティアに質問した。
『一つだけ聞きたかったのだけど、リスティアはどうして突然辞めてしまったの?』
その質問を聞いたリスティアの反応は普通じゃなかった。突然顔色が真っ青になり口を押さえて慌てて台所に駆けていき、吐いていた。『リスティア!大丈夫?』クレアは慌てて追いかけて背中をさすってあげた。『ごめんなさい。言えないの。もう許して・・・うぅ・・。』リスティアはその場で崩れるように泣いていた。
その反応で、サキはある予感がして、リスティアが辞めた原因が想像できたので、話すべきだと判断してリスティアに言った。
『アルフォンス家の3人は全員死にましたよ。私と仲間が処刑しましたのでもう大丈夫ですよ』と・・・。それを聞いたクレアは驚いて『まさか!』と口にして、サキを見つめていた。
リスティアは落ち着くと口を開いた。
『私が城の周辺で覆面の3人組に今にも連れて行かれそうな女の子を見つけたんです。私は剣に自信がありましたので近くで馬を拾って追いかけたのですが、追いついたら、馬車から降りてきたんです。私の剣が相手の覆面をやぶりました。ラルフ・・・うっ!』そう言ってまた口を押さえた。
『リスティア!無理しないで・・・もういいから』クレアがリスティアの肩を押さえながら言うと、リスティアは、荒く息をして落ち着きを取り戻しながら話を続けた。
『ごめんなさい、全て聞いて欲しいのです。その、予想外の人物に驚いた私は背後から、ふぅ、その、別の2人につかまって眠ってしまいました。女の子と私は小屋で縛られました。私は名前を出すだけでこんな状態ですから、何をされたかは想像できますよね・・・。私は使用人を辞め、城に近づく事もできなくされ、助けようとした少女は自殺したと聞きました。城での信用、剣の自信、生きる気力全てを失いました。』
クレアは涙を流しながら聞いている。その後の話はサキが驚く番だった。吐き気を抑えながら途切れ途切れで、全てを話してくれたリスティアの話は余りにもサキに関わりがありすぎた。
その自殺した女の子の兄がレクトだったというのだ。
リスティアの話はこうだ・・・。
レクトの妹のピンチに駆けつけるも逆につかまって捕らわれてしまう。リスティアは城で働けなくなり、レクトの妹は自殺。リスティアが呆然と暮らしていたら、レクトがたずねてくる。
その当時、何の力もなかったレクトの想いに押され技術が比較的いらない連射式クロスボウをすすめ使い方の基本を教えてあげる。小屋の場所も教えた。いつしか、リスティアはレクトに恋心を抱く。暗殺をあきらめて欲しいと思い、幻の鳥の毒の事をレクトに教える。諦めて冷静になって欲しかったから、手に入らない毒のことを教えたそうだ。
サキは話を聞き終わると、悲しげな表情で荷物から連射式クロスボウを取り出した。
『リスティア、このクロスボウは私の親友レクトから受け取った形見の品です。アルフォンス暗殺に失敗して処刑されました。私は幻の鳥を仕留めて彼に毒をあげてしまいました。そして、クレアがザクトとガイに攫われた際に、レクトに小屋の場所を聞いていたおかげで救出に間に合いました。2人はレクトが・・・このクロスボウで私が処刑しました。』
私の弓のせいで、友人リリーがラルフに襲われて、友人のリックがその場で殺してしまいアルフォンス家の奴隷になった。救出するため名声を得る為に幻の鳥を仕留めた。そして城の弓大会でクレアの結婚の件でクレアが攫われてしまう。その際、アルフォンスがザクトとガイに殺される。そのザクトとガイを私が処刑した。私が動くたび周りの運命が大きく変わっていく。私にクレアと幸せに暮らす資格があるのだろうか?リスティアさんを誘う資格があるのだろうか?サキは、はじめて自信が揺らいでいた。自分が信じた道が進むべき道・・・。悲しい道・・・。
『私はサキと一緒じゃないと幸せにはなれない。お父様は認めてくださらない。サキお願い・・・
私は王女じゃなくていい。貴方と一緒にいたい。』
サキはそのクレア王女の誘いに了解した。
クレアは世間知らずと言うほど世間を知らないわけではない。その彼女がそこまでの決意で自分に好意を持ってくれている。
まさか、王女誘拐事件を解決した自分が、王女と駆け落ちする事になるとは。とりあえず、サキは本気で国を出るなら仲間が必要だと思っていた。クレアは護身用の剣術をたしなみ程度と魔法を少し使えるらしいが、サキは基本狩人スタイルだ。短剣と弓なら誰にも負けない自信もあるが、偵察や後方支援が得意なタイプだ。王女を守りながら冒険するなら、接近戦のエキスパートがどうしても必要だと思っていた。リックかアッシュがいればよかったんだけど、自分の暴走ともいえる犯罪行為に協力させるつもりにはなれなかった。
その事をクレアに話すと、うってつけの人物を知っているとの事だ。
その人物は、元々、使用人兼、王女の護衛をしていたのだが、突然前触れもなしに辞めてしまったらしい。その女性は、国よりも王女のことを考えてくれるクレアの唯一の心を許せる人物だったそうだ。
『港町オーウェンに住んでいる筈です。彼女なら私に会えば協力してくれます。』
そのクレアの言葉を聞いて、2人はオーウェンを目指す事になった。
港町オーウェンは南の町と西の町の中間にあり、西側の海と隣接していて国を出るにはうってつけとも思えた。そしてサキの庭とも言えるほど知り尽くしているサッズ平原とは正反対の方角なので、追っ手を混乱させる効果もありそうだった。そんな訳で、冒険者スタイルのサキとクレアは馬に乗って港町オーウェンまでやってきた。クレアの冒険者スタイルは中々さまになっていて、町の住人は誰も王女だと気づかないが、美しさのせいか、すれ違いざまに振り返る男性はかなりいる・・・。
そんな中、一人の女性が此方をじっと見ていた。サキは確信してクレアに聞いた。『クレア、彼女かな?』幸いその女性は、人ごみから離れた場所で、一人でこちらを見ていたので、話しかけやすかった。クレアはサキに頷くと、その女性のほうへ駆けていって話しかけた。
『クレア様!どうしてこんなところに!』その女性は驚きながらクレアの服装を見ていた。
『リスティア久しぶりね。貴女を探しにきたの。こちらは私の・・・えと、サキです。』どう説明しようか迷ったクレアは、そう言ってサキを紹介した。
『どこか人に聞かれずに話が出来る場所はないかな?』サキがそう言うと、リスティアは自分の家に案内してくれた。
クレアが事情を説明すると、リスティアは驚きながらもサキとクレアを交互に見て微笑むように頷いた。『私はクレア様のためならいつでも力になりますよ。』
それを聞いたクレアが嬉しそうにサキに目配せをしつつ、リスティアに質問した。
『一つだけ聞きたかったのだけど、リスティアはどうして突然辞めてしまったの?』
その質問を聞いたリスティアの反応は普通じゃなかった。突然顔色が真っ青になり口を押さえて慌てて台所に駆けていき、吐いていた。『リスティア!大丈夫?』クレアは慌てて追いかけて背中をさすってあげた。『ごめんなさい。言えないの。もう許して・・・うぅ・・。』リスティアはその場で崩れるように泣いていた。
その反応で、サキはある予感がして、リスティアが辞めた原因が想像できたので、話すべきだと判断してリスティアに言った。
『アルフォンス家の3人は全員死にましたよ。私と仲間が処刑しましたのでもう大丈夫ですよ』と・・・。それを聞いたクレアは驚いて『まさか!』と口にして、サキを見つめていた。
リスティアは落ち着くと口を開いた。
『私が城の周辺で覆面の3人組に今にも連れて行かれそうな女の子を見つけたんです。私は剣に自信がありましたので近くで馬を拾って追いかけたのですが、追いついたら、馬車から降りてきたんです。私の剣が相手の覆面をやぶりました。ラルフ・・・うっ!』そう言ってまた口を押さえた。
『リスティア!無理しないで・・・もういいから』クレアがリスティアの肩を押さえながら言うと、リスティアは、荒く息をして落ち着きを取り戻しながら話を続けた。
『ごめんなさい、全て聞いて欲しいのです。その、予想外の人物に驚いた私は背後から、ふぅ、その、別の2人につかまって眠ってしまいました。女の子と私は小屋で縛られました。私は名前を出すだけでこんな状態ですから、何をされたかは想像できますよね・・・。私は使用人を辞め、城に近づく事もできなくされ、助けようとした少女は自殺したと聞きました。城での信用、剣の自信、生きる気力全てを失いました。』
クレアは涙を流しながら聞いている。その後の話はサキが驚く番だった。吐き気を抑えながら途切れ途切れで、全てを話してくれたリスティアの話は余りにもサキに関わりがありすぎた。
その自殺した女の子の兄がレクトだったというのだ。
リスティアの話はこうだ・・・。
レクトの妹のピンチに駆けつけるも逆につかまって捕らわれてしまう。リスティアは城で働けなくなり、レクトの妹は自殺。リスティアが呆然と暮らしていたら、レクトがたずねてくる。
その当時、何の力もなかったレクトの想いに押され技術が比較的いらない連射式クロスボウをすすめ使い方の基本を教えてあげる。小屋の場所も教えた。いつしか、リスティアはレクトに恋心を抱く。暗殺をあきらめて欲しいと思い、幻の鳥の毒の事をレクトに教える。諦めて冷静になって欲しかったから、手に入らない毒のことを教えたそうだ。
サキは話を聞き終わると、悲しげな表情で荷物から連射式クロスボウを取り出した。
『リスティア、このクロスボウは私の親友レクトから受け取った形見の品です。アルフォンス暗殺に失敗して処刑されました。私は幻の鳥を仕留めて彼に毒をあげてしまいました。そして、クレアがザクトとガイに攫われた際に、レクトに小屋の場所を聞いていたおかげで救出に間に合いました。2人はレクトが・・・このクロスボウで私が処刑しました。』
私の弓のせいで、友人リリーがラルフに襲われて、友人のリックがその場で殺してしまいアルフォンス家の奴隷になった。救出するため名声を得る為に幻の鳥を仕留めた。そして城の弓大会でクレアの結婚の件でクレアが攫われてしまう。その際、アルフォンスがザクトとガイに殺される。そのザクトとガイを私が処刑した。私が動くたび周りの運命が大きく変わっていく。私にクレアと幸せに暮らす資格があるのだろうか?リスティアさんを誘う資格があるのだろうか?サキは、はじめて自信が揺らいでいた。自分が信じた道が進むべき道・・・。悲しい道・・・。