僕は、洞穴を掘っていた。道具は何も無い手で掘るんだ。
体力の続く限り堀り続け、疲れたら休み起き上がっては、また堀り続ける。
隣で静香も手伝ってくれている。2人とも手はボロボロだ。

やっと、2人で入れる大きさになった。
『これから、もっと住みやすくしていこうね。』
静香はそう言って微笑んだ。
僕も、これからも頑張って堀り続けて広くしていこうと思った。

ふと、周りの世界はどうなっているのか気になった。
隣には、コンクリートと鉄骨で作られた、とても綺麗な豪華な屋敷が建っていた。
どれだけ掘っても隣の屋敷ほど、綺麗にも、丈夫にも、大きくもならない。

隣の住人は言った。
『静香さん、コッチにおいでよ。洞窟なんて掘ってないでさ。』
静香は隣からの誘いを断った。

『私は、こっちの方がいい。』
そう言うと、隣の住人は
『手で掘るなんて頭悪いなぁ。機械使えばいいのに。あははは』と笑った。

僕は、悔しかったが、洞窟を手で掘る事しかできない。
涙が流れた。

『幸一さん、気にしないで、洞窟で何も困らないよ。』
静香は僕に微笑みながら言った。

静香の、綺麗だった手は、爪は割れ、泥だらけで血が滲んでいる。
静香は私は幸せだと言う。

僕はどうなんだ?
静香を守るのが僕の幸せだ。コレで守れてるのか?
僕は、がむしゃらに洞窟を掘り続ける、少しでも大きくする為に。
指先に激しい痛みがはしった。指が折れてしまった。

『幸一さん!もういいよ。この大きさで十分だよ。』
静香は泣きながら言った。

駄目だ・・・堀り続けないと、駄目なんだ・・・・
僕の意識は薄れていった・・・。

『幸一さん!大丈夫?!幸一さん!』
静香が涙を流しながら、僕の肩を揺すっていた。
僕は目を開けた。
『そうだ!堀らないと!』
そう言って起き上がろうとした。

すると、静香が泣きながら言った。
『幸一さん!夢だよ!凄くうなされてたんだよ!』
夢・・・?僕の頬には、涙のあとが残っていた。