『絶対いやよ!』
王女はきつい目で王に言った。
『私を見るあのいやらしい目つき、鳥肌が立つわ!』

それを聞いた王は、呆れ顔で、
『いやらしいのではなく、お前に魅力を感じてるのだろう?男は好きな女にはそういうものだ。』

私はメルヴィルおじさまみたいな素敵な方がいいわ。
強くて優しくてカッコイイ。アルフォンスの3人とは正反対だわ!

そんなわがままばかり言うんじゃない!ラルフは戦場で武勲を急いで亡くなったのだ。お前にそのように思われては、浮かばれないだろう。
次回の弓の大会にはザクトが出る。恐らくは優勝するであろう。
優勝したらお前と結婚式だ!結婚すれば男も優しくなる物だ。

そんな!私を賞品扱いするなんて・・・

これは決定事項だ。反対は許さんぞ。アルフォンス家とは先代からの約束があるのだ。
ラルフも、ザクトも、ガイもいやだ。などと・・
お前が決めれないならワシが決めてやる!


誰か・・・私の運命を変えて。王女は一人、部屋で窓から月を眺め涙を流すのだった…。



※王とサキと・・・(そして王女)

大会予選を見た王は、このままではマズイと、ひそかにサキを呼び密談する事になる。
気になった王女は先回りして部屋の隅に隠れていた。

王様から私などにお話とは、どのようなご用件で!?

お主には望みのものを与える。おぬしとザクトの一騎打ちになるのは余にはわかる。
恐らくおぬしの方が実力は上だろう。わざとぎりぎりで負けてくれぬか?

(そんな!こんなイカサマで私の運命が決まってしまうの?ひどい…)

理由をお聞かせくださいませんか?

王女とアルフォンス家の結婚は先代からの約束で決まっているのだが、
ラルフが名誉の戦死をしてしまい、ザクトには武勲がない。
この大会は、チャンスなのだよ。

くっ!まさかここで、その話を王様から聞くとは…。
王様はアルフォンス家の実情を知らなすぎる。

私が・・・本格的に弓をはじめたのは大体2年前です・・・。
自分の望みをかなえる為に始めました・・・。

おぉ、でわ余がその望みをかなえてやろう。言ってみるがよい。

(そんな・・・お願いこんな話に乗らないで・・・。)

では、望みの話をしましょう。色々とアルフォンス様にも関係しますので
私の過去の話からさせていただきます。
今は、メルヴィル様たちも遠征に行かれて、この国は実質アルフォンス様が
強い力を持ってるわけですが・・・。嘘と虚偽にまみれています。

2年前、私は偶然、東の橋の前でザクト様達3人と喧嘩をしました。

4人で遊んで橋まで競争し、2人が遅かったので先についた2人で弓で
遊んでいたところに、ザクト、ガイが現れ、俺達に貸せ!と私の弓を
強引に取ろうと掴んで、壊してしまいました。

怒った友人が殴ったのですが
ザクト、ガイの2人は逃げていきました。

そして、ラルフをつれてきたんです。
ラルフは問答無用で友人に殴りかかってきました。
年の離れた喧嘩です。倒れた友人を殴り続けてました。
止めに入った私も殴られました。

一緒に遊んでいた遅れてきた2人。一人は女の子です。
リックとリリーと言うのですが、私達がやられてるので
リックは勝てないとわかってて助けに来ました。
リリーは岩陰に隠れさせて・・・。

3人仲良くやられたわけですが、その後です。
あろうことか、ラルフはリリーを見つけて、
ザクト、ガイの3人がかりで押さえつけ服を引き裂いたのです。

私は助けたかったけど動けなかった。
そこへ恋人のリックが石を持ってラルフの頭を殴ったんです。
これがラルフ死亡の事実です。

私の望みは唯一つ。ザクト、ガイの奴隷にされてるリックを
アルフォンス家から救い出す事です。

(ひどすぎる・・・。これで名誉の戦死なの?)

今の、メルヴィルさまが遠征に出てる状況でアルフォンス様の
不祥事が広がる事は問題だとは思います。
ですが、王女様のご結婚に関しては、余りにも可哀想です。
この話の事実を広げようとは思いません。名誉の戦死で結構です。
リックだけ返してくだされば私は・・・。
私の身分では、誰も話しを聞いてくれません。名声がなければ。
その名声を得る為に、2年間弓の技を身につけたのです…。

(すごい・・・この人、カッコイイな・・・)

・・・。お主の話はよく解った。現在の国の状態ではアルフォンスに居なくなられては
どうにもならない。メルヴィル達が戻るまではな。
メルヴィルには、この大会の優勝者に会うように伝えておこう。
お主の実力ならザクトでは敵うまい。実力で友人を救って見せるがいい。

私がすくってやりたいが、今は時期が悪い。そして時期が来てからでは
おぬしが動いたほうが早いだろう。
だが、お主の進言には感謝する。大事な娘を不幸にするところであった。

もったいないお言葉ありがとうございます。
では、後日の弓大会では、私の全力をお見せいたします。

おぉ、私も楽しみにしておるぞ。

そしてサキは一礼し、部屋の隅に目配せをして含み笑いをし部屋を後にした。

そのサキの目配せに驚いた王女はつい、物音を立ててしまった。

『誰だ!そこにいるのは!出て来い!』

『お父様・・・。』

お前・・・今の話を全部聞いていたのか…。