○の城がある・・・。この城を取り囲むように東西南北に町があり、
それぞれに地形に合った生活を営んでいた。
その中に、世界を救った英雄が幼い頃暮らしていた町がある。

これは、東の町に住む4人の少年少女達の物語・・・

『よーし、橋まで競争だ!』
いつものようにアッシュがみんなに号令をかける。

『えっ?みんな待ってよ~!』と、反応が遅れてしまうのはリリーだ。
男の中で一人女の子が混ざってるのだから仕方が無い。

号令に即座に反応したのがサキだ。あの反応の速さは凄すぎる。
すでに、掛け声と同時に走り出したアッシュを抜く勢いだ。

城から東の町へ向かう道の途中には一本の大きな橋がある。
東の町から北へ向かうとサッズの町、南へ向かうと南の町と繋がるコルドの村、
そして、南の町、コルドの村、東の町の東側は山になっている。
その周辺が4人の主な遊び場になっていた。

う~ん、これは3着確定かな?
そう思い、後ろを振り返るとリリーが派手に転んでいた。凄く痛そうだ。

『うぅ、痛いよ、ぐすん』
俺は、心配になり慌ててリリーに駆け寄った。

『おい、大丈夫か?リリー』
幸い、外傷はないようだが、左足を引きずっている。
左足をくじいてしまったのかもしれない。

『歩けるか?』と聞いてみると涙を流して首を横に振った。
無理をさせないほうがいい。そう思って、俺はリリーをおぶってやる事にした。

『ぐすん、ありがとう。リック』
リリーは安心して俺の背中に寄りかかった。

競争は遅くなってしまうけど、この事情だ。2人とも解ってくれるだろう。

『リック…ごめんね。重いでしょ。』
泣きやんだリリーが申し訳なさそうに言う。

『リリーぐらい背負って歩けないようじゃ、一人前の剣士になれないからな。』
と、言いながらも少し膝が震えてしまう。

『リリーは女の子なんだから、自分でペースを決めて無理に走る事ないよ。』
と、リリーに膝の震えを気づかれないように話しかけた。

するとリリーは、『私も仲間だから出来る限り急がないと…』と慌てる理由を言った。

リリーは周りを思って、自分の限界以上の力を出そうとして、いつも失敗する。
リリーの優しさは凄く好きだけど、俺としては、リリーには、
もっと自分を大事にして欲しかった。なので、

『それで怪我したら余計遅くなっちゃうだろ!』と少し強めに言ってみたら、
リリーは今にも泣きだしそうだ。

【俺が守ってやればいいんだ・・・。】自分の質問に心がそう答えていた。

リリーを泣き止ませる方法を思いついたので試してみる事にした。

『そうだ、リリー。俺のポケットに手を入れてみて。』
リリーは不意をつかれたのか、少し驚きながらもポケットに手を入れた。
中には赤いキャンディが1個入っている。

キャンディというのは、レムの実という赤い木の実をすりつぶして
丸く固めた物の事で、栄養価も高く、甘くて美味しい食べ物で、
木の実の種類によってはいろんな色の物もあるが赤いのが一般的だ。

『それ、リリーにあげるよ。食べてみて。』
俺が言うと、リリーは『ありがとう。』と言って口に入れた。
リリーの頬が丸くふくらんだ。
『あま~い。コレ、凄く甘くて美味しいね。ありがとうリック』

良かった笑ってくれた。リリーの涙は俺が止めてやれるんだ。
赤いキャンディが、俺の心にまで、甘く優しい風を運んでくれた気がした。


よし、もうすぐだな。そう思い前を見ると、なにやら争ってる声が聞こえてきた。
アッシュ達の他にも3人いるみたいだ。喧嘩をしているようだ。

アッシュとサキは、意味の無い喧嘩をするようなやつじゃない。
とりあえず様子を見て、必要なら加勢に行かなければ・・・。

『リリー、ちょっとこの岩陰に隠れてて。後で迎えに来るから出てきちゃ駄目だよ。』
リリーだけは絶対に巻き込むわけにはいかない。
リリーは、事情を察知したのか、少し震えながら黙ってうなずいた。

状況が見える位置まで近づいてみると、俺達と同い年くらいの2人が
少し離れた場所で戦況を見守っていて、明らかに俺達より年上の大人が
倒れたアッシュの上に馬乗りになってアッシュを殴り続けていた。
それを止めに入ったサキも、殴られて倒されてしまっていた。

『お前ら、アッシュとサキに何しやがる!』
考えるよりも早く、体が動いてしまった。
アッシュに馬乗りになってる大人に全力で殴りかかった。

アッシュからは引き離せたが、俺は簡単に右手をひねりあげられてしまった。
『何だ、まだ仲間が居たのか?』
そう言いながら、相手は殴りかかってきて、俺はたいした抵抗も出来ないまま
やられてしまい、意識を失ってしまった。

『いゃ!やめて!』かすんでる意識の中でリリーの悲鳴が聞こえた。
『リック、助けて!リック!』
俺が慌てて周囲を見渡すと、隣にはサキとアッシュが倒れていた。
リリーは少し離れた場所で、3人に押さえつけられていた。

そして、馬乗りになった男が、リリーの服を引きちぎっていた。
『いやぁぁ!』
リリー!今助けるてやるぞ!
俺は無意識に手近にあった大きめな石を両手で掴んでいた。
そして、怒りに任せて、相手の頭に何度も叩きつけていた。

『うわぁ人殺し!』
『ひぃ、ラルフ兄さん!』と、残りの2人は叫びながら逃げていった。

あぁ・・・俺は倒れてる相手を冷たい目で見下ろしていた。
『うわぁぁ!リック!怖かったよ…うぅ…。』
リリーが抱きついてきた。
『リリー、もう大丈夫だよ。』
そう言いながら、動かなくなった相手から目をそらした時、
サキとアッシュが起き上がっている事に気がついた。

『コイツはまずいな・・・。』
サキがつぶやいた。

『子供の喧嘩に大人が出てくるのが悪いんだ!リリーにひどい事しようと
しやがって、殺されても当然だろ!』とアッシュが興奮した様子で言ったので、
俺は冷静にならないと、と自分に言い聞かせる事ができた。

『喧嘩の・・・理由を教えてくれないか?サキ。』
俺は感情を抑えて、リリーに上着をかけてやりながらサキに聞いた。

理由は些細な事だった…。
サキとアッシュが木の実を弓矢で落として遊んでいた。
すると、相手の2人が俺達もやりたいから弓を貸せと言ってきて
断ったら弓の取り合いになり、弓が壊れてしまった。
怒ったアッシュが、相手を殴ったら、一旦逃げて大人を連れて
仕返しに来たとの事だ。

コレを聞くと、アッシュの怒りたくなる気持ちも良くわかる。
だけど、これはもう、俺達で何とかできる話じゃない・・・。
リターさんに全て話すしかない。

リターさんは俺達4人の仮親のような人だ。どういった結果になるにしても
話さない訳にはいかないだろう。

リターさんの家は4人が住んでいる家のすぐ隣にある。
幼い頃から実の子のように育ててもらっているが本当の親ではない。
4人とも本当の両親の記憶が無い。

リターさんのところへ向かう間、誰も口を開かなかった。

『おぉ、お前達揃ってどうした?』リターさんは陽気に言ったが
俺達の様子を見て、ただ事じゃないと察知したらしく、
『何かあったのか?』と、真面目な顔で聞いてきた。

サキが詳しく説明すると、リターさんと一緒に現場に戻る事になった。

そこには、相手の2人と身分の高そうな大人が一人居た。
リターさんが既に息絶えている男の顔を見て、顔色を変えながら
『よりによってアルフォンス家のラルフか・・・』とつぶやいていた。

その言葉を聴いた俺は、仲間に聞こえないようにリターさんに囁いた。
『俺はどうなっても構わないのでアッシュたちには
被害が及ばないようにして欲しい。頼みます。』と・・・

リターさんは僕の目を見て、思いを悟ってくれたらしく、
真剣な表情で一度だけうなずいた。

アルフォンス家は北のサッズ方面を王に任されて治めている貴族だ。
リターさんは東の町を治めているメルヴィルさまに仕える一兵士にすぎない。

リターさんは、兵士としての武勲はあるので、そこそこ名は知られているが
立場の違いは明らかだ。

そして、リターさんはアルフォンスと会話をして戻ってきた。

リターさんは悲しそうに言った・・・。
『リック君が奴隷になる事で3人は助かる・・・。』と・・・。

俺は、『ありがとう。リターさん』と優しく微笑みながらうなずいた。

↓まだ清書前です( ̄▽ ̄;)


※リックの2年間・・・
リックはアルフォンス家の奴隷として生活していた。
喧嘩相手の2人、ザクト、ガイのペットとして・・・
食事は、2人の飼っている犬と同じ物を食べさせられた。

ペットの癖に手を使って食うんじゃねぇ!と木刀で殴られてからは
犬と同じように、口だけで食べるようになった。

『おい、リック剣の相手をしてくれ。』ザクトは言った。
剣の相手と言っても木刀を持っているのはザクトだけだ。
リックには避ける事も許されていない。

オラァ!よくも兄貴をやりやがったな!オラァぁ!
木刀が激しく頭に当たり折れた。
額から血が流れる・・・。

オラッ!何してやがる!早く次の木刀もってこいよ!
リックは木刀を取りにいく。そしてザクトに手渡した。
『ザクト兄さん俺にもやらせてくれよ。』ガイだ。
もうかなり殴ったからな~、これ以上やったら大事なおもちゃが壊れちまうよ。
腹狙えよ、頭はもうだめだ。
ザクト兄さんズリィよなぁ。いつも兄さんばっかり、まぁ仕方ねぇ
おらぁぁ!
ぐぉぉ!ガイの一撃で俺はこらえられずに吐いてしまった・・・。
きたねぇなぁ、オラ!リック掃除しとけよ。今日はコレで勘弁してやる。
そう言うとガイは雑巾を投げつけてきた。

コレが毎日の日常になっている。俺は2年前から言葉を話さなくなった。
耐えていればいつかアッシュたちに会える。
いつかみんなに会ったときに俺が沈んでたら駄目なんだ。
リリーに笑ってやらないと。リリーは心に傷を負う。そう思いながら2年間耐えてきたんだ…。



※再会の約束
リターさん、リックは?アッシュが聞いた。
リックはアルフォンス家で働くことになった。死んだラルフの代わりに・・・。
君達が会いに行くことはできない。

リック・・・うぅ、グスン。ひどい目にあうんじゃないの?

何でリックなんだ!リックは助けに来ただけなのに!

リックが俺達をかばったんじゃないのか?俺達に何も無いってのがおかしいと思うよ。

みんな、リック君の決意を無駄にしないでくれ。殺されるわけじゃない。
また、いつか会えるんだ・・・。

リターさん本当のことを言ってください。俺たちは騒ぎません。
アルフォンス家の人を殺してリック一人が働きに行くだけで済むはずがない。
隠さないでください。

そんなにヤバイ相手なのか?

あぁ、全員殺されててもおかしくないほどにね・・・。

解った。サキ君には隠せない。本当のことを言うよ。
リック君は話の前に私に耳打ちしたんだ。
君達3人が無事で済むように、自分はどうなってもかまわないと・・・。

そんな!あぁ・・リック・・・

リリー堪えて、リターさん騒ぎませんので続きを・・・

始めは全員の命で償えって事だった…。
私が事の成り行きを説明し何とか抑えてもらおうと続けたんだ・・・
すると、リックだけでも死んでもらわないと気が済まないって言い出したんだ。

リリーは目を見開いて口を押さえて声を抑えるが涙は止まらない・・・。

そして、命だけは助けてほしい。私が何でも力になるって約束したら、
最終的に、アルフォンス家の奴隷として命だけは奪わないと約束したんだ。
そこまで話してリターはひざを落として床を叩いた。
私だって許せないんだ!だが、リック君と約束した。
君達に害が及ばないようにと!それ以上荒立てたらリック君の想いが無駄になる!

俺達にできることは無いのか?

リックを救い出すにはどうしたらいいんだ・・・

方法はある。私がメルヴィル様に頼んでリック君を買う。
メルヴィル様はアルフォンスより力がある。
私の後継者として育てていたリック君を奪われたと
事情を説明して頼めばきっと力になってくれる。

だが、メルヴィル様は今、遠征に出ている・・・。
2年くらいは戻られない・・・。

リターさん頼みます。リックを・・・俺達にできることならなんでもする。
サキとリリーもうなずいた。

解った。メルヴィル様は武芸が達者な方だ。
もしかすると、君達の誰かを気に入って欲しがるかも知れない。
メルヴィル様の力になることと引き換えにリック君を助けてくれるかもしれない。
そういう可能性もある。みんなは今以上に力をつけていてくれ。
私の力でどうにもなら無くても、君達の力で何とかできる日が来るかもしれない。
その為にも!力をつけていて欲しい。

解りました。リターさんありがとうございます。俺は弓を極める!

よし、力をつけるんだ!リックのために!

私は、みんなが手を出せないときに力になれるように、何か私にもできることを探してみる!

わかった、みんな私もしばらくはアルフォンスに動かされることになると思うので、
2年後にこの時間、この場所でもう一度会おう!



※本筋 メルヴィル様にお話を

サキ、久しぶりだな

おぉ、アッシュずいぶんたくましくなったな。

今なら、その辺の戦士にも負けないぜ!

俺も話したいことが山ほどあるよ。レクトって奴のこととか、伝説の鳥の事とか・・・

まぁ、お互い充実した2年間だったみたいだな。

あぁ、リックの為だからな。

サキ、アッシュ、久しぶり。

おぉ・・・

えっ?どうしたの?

いや、変わったな~って思って。

あぁ・・・美人過ぎてビビッた。

アッシュとサキも逞しくなって見違えたよ。

まぁ・・・あれだ、リックの為だからな。

アッシュ顔赤いぞ!そう、リックの為だ!

えぇ・・・リック・・・そうだ、リターさんはまだ?

リターさんは来ないかもしれない。
2週間くらい前、南の町で山賊との激しい戦いがあったんだ
丁度、俺も後半で居合わせたんだけど、組織で動いてて凄く手ごわかったんだ。

そこで討伐の指揮をしてたのが、なんとアルフォンスの野郎だった。
町のほうは俺が居なかったら正直やばかった。ひどい指揮だったよ。
アルフォンスの兵は壊滅状態だったね。

が、一人の戦士がアルフォンスの指揮で単身、山賊のかしらに突っ込んでいって、
護衛とかしらを一人で倒したんだけど重傷をおったそうなんだ。
その戦士が、俺の想像だと・・・リターさんじゃないかと・・・。

確かめるすべが無かったんだけど、ここに来ればわかると思って、
今日ここに居ないって事はやっぱりそうだったんだな・・・。

そんな!リターさんが居なくちゃメルヴィル様にあえない!

もし、それがリターさんならプラン2で行くしかないな。
俺も2年間でわりと名前が売れてるんだメルヴィル様には会えるよ。

おぉ、俺も山賊退治でアルフォンスに貸しができたし
会えれば何とかなると思ってたんだけど話が早い。

2人とも凄いな・・・私も頑張って魔法を覚えたんだけど実績ないから・・・
この指輪が何かの役に立つかもしれないけど・・・
リックを思う気持ちは絶対2人にも負けないのに・・・・グスン

おいおい、やっぱり泣き虫リリーは変わってないな。
リリーは居るだけでリックが喜ぶんだからいいんだよ!

そうそう、リリーの役目は助かった後のリックのフォロー
コレばっかりはリリーにしかできない。
さぁ、リターさんは駄目みたいだから俺達だけで行こう。

メルヴィル様にお話を・・・

前回の弓大会で優勝したサキと申します。
私の技を見たいとのお言葉をいただき参上しました。

おぉ、お前が例の弓使いサキか!会いたかったぞ!
サッズ草原の幻の鳥を射抜いたそうだな。本当なのか?

はい、特殊な矢を使いましたが、宜しければそちらの技も後ほどお見せいたしますよ。

おぉ、ぜひ拝見したい。して、そちらの2人は?

私はアッシュと申します。サキ、そしてこちらのリリーと共に
リターさんに育てられました。

ん・・・アッシュ・・・おぉ!豪槍のアッシュか!南の町の君の槍の噂も聞いているぞ!
アルフォンス軍を救っていただいたとも聞いている。
君の技も是非後で見せて欲しい。

はい、喜んでお見せいたします。その為に・・・鍛えてましたので。

それと、そちらのお嬢さんは・・・

私はリリーと申します。メルヴィル様。
私達3人はどうしてもメルヴィル様とお話がしたくて2年間待っていたのです…。
リリーは抑えきれずに涙を流した。

すみません、メルヴィル様。

いや、今日3人が尋ねてくること。実は知っていたんだ。
リターの見舞いに行った際、ほとんど意識は無かったんだが、私と気づくと
サキ、アッシュ、リリーの話を聞いてあげてくれと、
うわ言のように繰り返してたからな…。

メルヴィル様に詳しく説明・・・

なるほど、アルフォンス家のラルフ死亡の真実か・・・。
3人とも災難だったな。いや、リックとリターも入れて5人か。
しかし・・・みな頑張ったな。この状態なら私が間に入れば断りようもあるまい。

アルフォンス軍のピンチを救った豪槍のアッシュ…。
そして、リターは約束どうりにアルフォンスの力になって重傷。
その2人がリックを救って欲しいといってるのだから・・・。

私は・・・私はリックのために何をしたの・・・?リリーは悲しそうに
口に手を当てた。その手に光る指輪をメルヴィルは見逃さなかった。

おっと、リリーさんその指輪を見せていただけませんか?
リリーが手を差し出して見せると、メルヴィルは大きく笑い出した。
くっ、あははははは・・・

いや、失礼。どうやらリリーさんが一番の功労者だね。

えっ、メルヴィル様?どういうことでしょうか?

いや、少し前にどんな医者も治せない猛毒に苦しんでた貴族が居たんだが・・・
ソレを失われたはずの、伝説の魔法使いでも使えない魔法で
直してくださった女性が居てね・・・。

身分と名前を明かす事のできなった貴族が、お礼に指輪を渡したそうなんだよ。
もしまた会えた際に、その指輪を見せていただけたら、
できる限りのどんな御礼でもすると言ったそうなんだ。

いや~、この話を聞いた際はどんな魔女かと思ったんだけど・・・
こんな可愛らしいお嬢さんだったとは・・・

ははは・・・
そして、これから頼もうとしてる相手がアルフォンスだってんだから
笑わずには居られない・・・くっ・・・あはは

えっ!あの時の貴族様がアルフォンス様!

あぁ、その指輪さえ見せればリック君は助かるよ。

そして、もう呼んである。身なりを整えたリックをつれて
ここに来るように伝えてある。



アルフォンスです。メルヴィル殿。リックを連れてまいりました。
して、どのようなご用件でしょうか?

おぉ、今日は私とアルフォンス殿に話を聞いてほしいと3人の者が尋ねてきてな・・・
こちらの3人だ。アルフォンス殿も全員知った顔だぞ。

こちらは、弓大会優勝者でサッズ平原の幻の鳥を射抜いたサキ。

そして、先日の南の町の山賊退治の影の功労者の豪槍のアッシュ。

そして、失われたはずの魔法でアルフォンス殿の命を救ったリリーだ。
この3人、そしてリター、そして私の計5人から
アルフォンス殿に頼みがある。

リターの後継者、リックを返して欲しい。
事情は全て知った上で、全てをなかった事とし
リックを返して欲しいのだが如何だろうか?

え~、私はそちらのリリー様にその指輪を見せれば
できる限りのお礼をすると約束しました。
まさか、あの時の恩人がラルフが乱暴しようとした女性だったとは・・・
なかった事にしていただける。私にはそれだけで・・・
リックを返すだけでよいのなら喜んで。

リック、こちらに来なさい。今からお前は自由だ。

リック・・・リックなんだな・・・
リック・・・やっと・・・
リック!信じてた。また絶対会えるって信じてたよ。グスン

リリ・・・リリー・・な・・の・か・・・?久しぶりで声が出ない…。

リック君、コレを飲みなさい。
メルヴィルは、リックに水を差し出した。

リック・・・ひどい、こんな傷だらけで・・・

リリー。久しぶり、元気そうでよかった。久しぶりなんだ笑ってくれよ
俺は元気だぞ、剣の修行で傷が増えたけどな・・・。

ザクトとガイは君達の前に出ないように伝えておくよ。それで許して欲しい。

俺はあなたの元で働いていただけだ。2年間ありがとう2人にも伝えて欲しい。
みんなに会えないことだけがつらかった。リリー泣かないでくれ。
アッシュもサキも久しぶりだな。元気だったか?

リック、一人でかっこつけやがって、残されたりリーの事、考えろよな。
リリーはお前じゃなきゃ駄目なんだよ!

そうそう、泣き虫リリーをなだめるのはお前にしかできない。
俺達だってお前のために命かけれるんだからな!

サキ、アッシュ・・・全部知ってるんだな・・・。
ほら、泣き虫が泣いてるぞ!なだめてやれよ。
リック・・・クスン

アルフォンス殿、話を聞いてくれてありがとう。
いや、メルヴィル殿。礼を言うのはこちらのほうで・・・
では、せっかくの再会に水をさすので私は居ないほうがよさそうだ。
メルヴィル殿、本当にありがとう。では、また。

リック君体のほうは平気なのか?全員全て知ってるんだ無理はしないでいいんだぞ?

みんな知ってるのか・・・俺があの2人の奴隷だった事。
はは・・・働いてるって言えば安心すると思ったんだけどなぁ・・・。

バカ!安心するわけ無いだろう相手の名前を俺が知ったらどうするかぐらい
お前ならわかるだろう。アッシュとリリーはともかく、俺は騙せないぞ!
どんな生活してたか全部話せ!仲間だろ!

そんな傷だらけで、剣の稽古とか俺とリリーでもだまされないぞリック・・・。

全部話して、リック…。

リックは2年間の事を全て話した。
3人とも涙を流して聞いていた…。

お前、その生活でありがとうって、嘘でもよく言えたな。

みんなに会えたとき笑って…リリーに笑ってやらなきゃって思いで
耐えてたから・・・ははは

みんな全部知ってたなんて聞いたら笑うしかないなぁ・・・。ははは

その傷は全部私達のための傷なんだね・・グスン・・ごめんね・・・リック…

あぁ・・・リリー…。そうだ!リリー!

このシャツのポケットに手を入れてみて。

そこには赤いキャンディが入っていた。
アルフォンスの屋敷でみつけて一個くすねてきたんだ。リリーにあげるよ。

リック…。変わってないね。大好きだよ。

おーおー見せつけてくれちゃって

そう言えばアッシュ、リリーに見とれてたからな~

バカ!余計な事言うな!・・・俺には・・サーシャ・・

あははははは・・・

リリーはキャンディを口に入れた。
口の中には2年前とまったく同じ甘い味が広がっていた。