盲導犬 | DIVE TO GREEN

盲導犬

病院内で盲導犬を連れた方をお見かけしました。

盲導犬は黒いラブラドールレトリバーでした。

犬、偉いなあ、可愛いなあ、働いてるなあ、と感心しました。

撫でたい気持ちでいっぱいでしたが、

ハーネスを装着している(仕事中)盲導犬に触ってはいけないので、

我慢しました。


伝票が見えたので、会計に行くのだとわかりました。

大きな広い病院です、無事行けるだろうか、と気になりました。

会計前で90度違うカウンターに向かってらしたので、

「こちらです」とお知らせしました。


余計なお世話かも、と思ったのですが、

その方(同い年くらいの女性)も犬も気になって気になって。

薬局前で薬を待つのも、

仕上がりは番号のアナウンスと表示がありますが大丈夫かしら、とか。


そっと後を行くと、薬局前の待合所で「チェア」と犬に指示してらっしゃいました。

椅子は何列も大量にありますが、端は全部埋まっています。

中央辺りは空いていますが、

椅子の前後の間隔が狭いので、犬が入って行くのは無理です。

どうしよう、と思った時に、犬に気づいたご婦人がそっと席を中へ移動してくださいました。

犬はちゃんと顎を乗せて、その空席を示しました。

訓練された犬ですから、当然かもしれません、

でも賢いなあ、と感動しました。


椅子に座ったらその方は犬を褒め、

犬はとても嬉しそうに尻尾を振っていました。

見ているこちらまで嬉しくなりました。


褒めてからその方は「ダウン」と指示します。

確か盲導犬は乗り物の中や人中では、

飼い主の足元に伏せるのが決まりだったと思います。

でも足元は狭く、前後の間隔もないので犬は入れないのです。

ほら、こっちに向きを変えて、とその方は犬の向きを変えようとなさっていたので

「あの、狭くてちょっと入れそうにないです」とお教えしました。

その方はじゃあ、と足を横に出して(犬が踏まれないように)

足の下に犬を伏せさせました。


冷たい病院の床です。

じっと伏せている犬のお腹が冷えないだろうか、とまた心配で。

でもこういうことは、この犬には当たり前なんだろうなあ、と思うと、

胸が苦しくなりました。


早くお薬が出来ますように、と自分のことより気になりました。

私の心配は大きなお世話で、

病院は番号ではなく、目の不自由な方はちゃんとお名前で呼んでくれるのですね。

良かった良かった、と思ったのですが、

今度は薬局のカウンターまで行けるかどうか。

余計な事はしない方がいいのだろうか、どうしよう、

カウンターはほんの数メートル先なのです。

でも、ゆるくカーブした感じになっているのです。


「ストレート」と指示された犬は、

言われた通り進みましたが、そこは壁なのです。

ああ、どうしよう、犬も人も困ってる、

犬は困った様子で壁の前で飼い主さんの顔を見上げていますが、

それは飼い主さんにはわからない。

犬のプライドも大事にしたいし、

お手伝いもしたい、

傍に寄ると、その方は「あれ、こっちかな」と呟いてらっしゃいました。


思い余って「良かったらお薬、取ってきましょうか?」と声をおかけしたら、

「ありがとうございます、自分で行きます」とおっしゃるので、

「すぐそこなんですよ、肩につかまってください」とほんの数歩の距離をご案内しました。

たぶん正しい誘導は私の腕をとっていただく、だったと思うのですが、

咄嗟のことで出来ませんでした。


なんだか泣けてきました。

「すみません」と「ありがとうございます」をこの方はどれだけおっしゃっていらしたのでしょう。

犬も、慣れない場所で、困ったり辛い事もあるでしょう。

私がした事は余計な同情でしょうし、

同情というのはどこか上から目線で相手を見ている、失礼なことかもです。


この大病院には一日に何千人もの人が来ます。

病気の比較は意味がない、

病気はその人その人のものだから。

でも私はいくら目が痛くても、見えているし、

日常生活は普通に送れます。

サッカーも映画も見ることが出来ます。


盲導犬の働きを目の当たりにして、いろいろ思うことがありました。

何に泣けてきたのか、

何故胸が苦しいのか、

自分の無力さにでしょうか。

何も出来ない、せいぜい盲導犬育成の募金箱に小銭を入れるくらいです。


でもとりあえずは、恥ずかしがらずに、

「何かお手伝いしましょうか」と声をおかけしよう、と思いました。