続きです。
手紙と言っても、メモ用紙みたいなものに自分の思いを文章にして、それをM先生にそのまま出しただけなのですが(笑)
とりあえず手紙のことは2つ目の転機の時に話すので、とりあえず俺が犯した失態について話します。
この時、腑に落ちないことがありました。
一つ目は、練習内容。
繰り返し繰り返し同じ曲ばかりして、所作についてあまり触れていないことでした。
とにかく、叩き込む。
そんな練習に、少し疑問を抱いていました。
本当に、このままでいいのだろうか、と。
しかし、遅れている俺にそんなことを考えている余裕はなく、自分の修正で手一杯でした。
木曜日に自主練に出てきている奴らも皆上手くなっているし、問題はないかなと、見送っていました。
二つ目は、練習の参加人数。
20人以上いる部員たちが、酷いときには2,3人しかいないことがよくありました。
こいつら、本当にやる気があるのか?
ついついそんなことを頭によぎってしまいますが、これは自分の事を差し置いた発言です。
今まで練習に出られなかった人間が言う資格がありません。
それどころか、これから起こる2つ目の転機の時に、この二つは自分の失態だということに、振り返って初めて気付きました。
これも後々お話します。
そしてそんな状況の最中、とうとう一週間前になってしまいました。
準備どころではありません。
なにしろ、全員で合わせて練習するのが二ヶ月ぶりくらいの完成度ですから、たかが知れています。
しかしさすがに最後の一週間は皆練習に出て、なんとか無理矢理完成形まで持って行きました。
しかしその完成度は、少なからず高いものではありませんでした。
すべての面において。
しかしその当時の俺は、この程度でも行けるだろうと思っていました。
井の中の蛙というのでしょうか、妙に自信があったんです。
しかし、それは会場でのリハーサルで一気に崩されました。
リハーサルの前に、M先生が急に、
「課題曲のアクセントを少し変える」
と、言い出しました。
ところが周りの部員やK先輩は、今のままで行ったほうが絶対いいと言われたので、変えずに行きました。
俺も今までどおりが良かったので、今までどおりいきましたが、少し困惑があり、抵抗もありました。
M先生の言葉を無視していいのだろうか、と。
しかし、そのことはリハーサルが終わった後に謝ればいいと思い、さして気にしてはいませんでした。
ところが...
不安が、なかったわけではありません。
ただ、それが予想外の形で出てしまっただけです。
音が、響かない。
これは相当ショックでした。
今までどんな広い場所でも、ホールの中では音を響かせてきました。
自分に返ってくるように。
しかし、どんなに必死に叩き込んでも、音は返ってきませんでした。
その場で泣きそうになったのをこらえて、建物のそばの影で泣きました。
三ヶ月の努力は一体何だったのか、と。
部員に涙を流した後を見られないようにトイレで顔を洗いました。
それでも、フラッシュバックが来る度に、涙が出そうになりました。
本当に悔しかった。
そして同時に、
今回は絶対賞は取れない、と、確信した。
五年も待った、全国大会なのに。
そんなことを考えてたら、
バスの中で抑えてた涙が、やっぱり零れてしまいました。
部員たちを不安にさせたくなかったのに、結局涙を見せてしまいました。
その後、いろんな人達の話を聞きました。
俺はどうすればいいのか、一人でいる時間ずっと考えていました。
そして一回、ホテルの中で集合がかかりました。
そこでみんなの顔をもう一度見て、M先生の顔を見て、
俺だけ諦めるわけにはいかないな、と思いました。
いつものように円陣を組んで、声を出しました。
先生に声を抑えろと言われたけど、ホテルの中なのに、とても大きな声で(笑)
その日の夜、俺がしなければいけないと思ったのは、一人ひとりに対する声掛けでした。
しかし、一人ひとりと対話する時間も後1日という間には厳しいものがあったのでその日、ラインでタイムラインを発信しました。
一人ひとりに対するコメントを書いて。
彼らと、彼女らだけに届くように。
結果はやはり、賞は取れませんでした。
せっかく巡り巡ってやってきたチャンスを棒に振ってしまいました。
しかし、ここで立ち止まっている訳には行きませんでした。
これからどうすればいいのかを、考えなければいけませんでした。
俺は大学生になったら抜けなければならないから、自分が彼ら、彼女らにしてやれることはなんだろうか、と。
今年はきっと全国大会のカードはやってこない。
だから、来年、俺がいなくても、賞を取れるような力を付けられるように。
次回続きます。